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わが愛しのオーディオアクセサリー
切り売り電源ケーブル一斉比較試聴
〜電源ケーブル17種類の音質比較レポート前半〜
2005.06.09公開
2005.11.15ページ2分割
ページが長くて読みずらかったので、2005.11.15にページを前半/後半に2分割しました。
前半9本、後半8本の試聴結果を掲載しています。後半はこちら

 ここでは、切り売り電源ケーブル17本を一斉比較試聴した結果を公開する。切り売り電源ケーブルの音質比較は私の積年の課題だった。ここ半年あまりで新製品の発売が相次いだこともあり、新旧電源ケーブルを比較することにした。このレポートを持って、現時点での切り売り電源ケーブルの音質傾向がおおよそ掴めたので、有意義な実験だったと思う。自作ケーブルに取り組む人たちの参考になれば幸いである。切り売り電源ケーブルの現状や、比較試聴に至る経緯、試聴環境については切り売り電源ケーブルの現状 比較試聴に至る経緯 試聴環境】にまとめてあるのでご参照いただきたい。

 なお、今回試聴した電源ケーブルのラインナップを列挙しておく。今回試聴する17本全てが切り売り電源ケーブルというわけではない。切り売りケーブル13種類15本、メーカー完成品ケーブル1種類、機器付属ケーブル1種類である。切り売りケーブルを分類すると、オーディオメーカーケーブル9種類11本、電工用ケーブル4種類4本となる。実際の試聴においては、手元にケーブルをがっさりと並べ、適当な順番で聴いていった。これはメーカーに対する音質の思い込みを排除するためなのだが、このレポートでは見やすさを考慮してメーカー毎に並び替えて紹介する。

試聴その01アクロリンク6N-P4020||
試聴その02アクロリンク6N-P4030
試聴その03アクロリンク6N-P4020||ダブル使用
試聴その04ディーバス 14-4CT
試聴その05ディーバス14-4CT+オヤイデC-037+P-037
試聴その06AETGAIA-AC
試聴その07AET SCR-AC
試聴その08アコースティックリバイブPOWERMAX5500
試聴その09S/A LABHIGH-END HOSE PROFESSIONAL(HHS)
試聴その10SAECAC-4000
試聴その11オヤイデ電気Straight Line 2by2
試聴その12富士電線 VCT3.5
試聴その13富士電線VCT5.5
試聴その04フジクラCV-S3.5SQ
試聴その15フジクラCV-S5.5SQ
試聴その16MIT ShotgunAC-1
試聴その17PioneerDV-AX10附属ケーブル

試聴したのは5曲。ケーブル試聴1本あたりに要した時間は、5曲×1分30秒+ケーブルやディスクの交換時間2分弱=10分ほど。これを延々17回繰り返す。試聴曲の詳細は別ページの最後の項をご覧いただくとして、各曲はの通り略している。

ジャズ:オムニバス 「JazzBar2004」 5曲目:ERIC TERUEL Liverpool Walk Inter Luttes→JAZZ
男性ボーカル:山下達郎「僕の中の少年」9曲目:僕の中の少年→山下
女性ボーカル:SOPHIE.B.HAWKINS「Whaler」4 曲目:As I Lay Me Down→ソフィ
ロック:佐野元春 「Cafe Bohemia」7曲目:YOUNG BLOODS→佐野
テクノ:平沢進(核P-MODEL) 「ビストロン」1曲目:二重展望3→平沢

試聴その01
アクロリンク
6N-P4020||
定価:\4,200/m 実売最安:\3,150(ダイナ中古センター)
販売店:木村無線/オヤイデ/テレオンサウンド110 /ダイナ中古センター/ヨドバシ新宿西口本店など

アクロリンクは株式会社アクロジャパンのブランド名だ。もともと、株式会社ジャパンエナジーでアクロテックというケーブルブランドを担っていた一部門だったのだが、2003年に新会社として独立し、ブランド名もアクロリンクと改名された。独立後に、既存のケーブルラインナップを一新。オヤイデ電気との技術提携が盛んで、精力的に新製品を発表し続けている。

6N-P4020||はアクロリンクが発売する2芯ノンシールドタイプの切り売り電源ケーブルだ。構造はいたってオーソドックスなキャプタイヤ構造。導体素材にはアクロリンクお得意のストレスフリー6N銅を使用している。導体は撚り線だ。旧P4020との相違点は絶縁材が変更されたこと。旧来はPVCだったものが、||ではポリオレフィンに変更されている。ケーブル外径はφ9.0。正確な導体断面積はわからないが、たぶん1.6スケアほどと思われる。柔軟で取り回しのしやすいケーブルだ。なお、試聴に用いた作例ケーブルは今回の試聴用に製作した訳ではなく、普段は別用途に使用しているケーブル。このケーブルにはレビトン8215CATプラグとフルテックFI-11MGコネクターを組み合わせている。長さが60cmと短いのだが、6N-P4020||には違いないので、プラグコネクターを変更することなく、このまま試聴ケーブルとして用いることにした。余談だが、アクロジャパンはホームページを持っていないので、ホームページへのリンクは貼ることができなかった。
JAZZ:突き抜けるシンバルとピアノ。低域の迫力が足りないような感触も受ける。

山下:全域にわたり素直で、ごく無難な音調で展開。

ソフィ:中高域が軽やかに延びる。響きが豊かというと、それほどでもない。癖なく素直な音質。

佐野:反応性十分。リズムが小気味良い。

平沢:弾け具合良好。

総評:素直でやや明るめの傾向で、質的には上々。色付けが少ない分、このケーブルに個性的なものを求める向きではない。解像度は中堅。レスポンスは平均的。メッシュチューブで締め上げるとか、重量付加を施すなど、なんらかの手を加えてやると生きてくるかもしれない。

試聴その02
アクロリンク
6N-P4030
定価:\10,500/m 実売最安:\7,875(木村無線)
販売店:木村無線/オヤイデ/テレオンサウンド110 /ヨドバシ新宿西口本店など

6N-P4020||をそのまま太くしたようなケーブル。絶縁材、導体素材、外装シース材質は6N-P4020||と同一。

いたってシンプルなキャプタイヤ構造。ノンシールドで、芯線は3芯タイプ。φ0.26×100本練りの6N銅で、導体断面積は5.5スケア相当。芯線の間に糸が数本垣間見える。これは電磁波吸収糸というものらしい。ケーブル外径はφ13とやや太め。太い割に、ケーブルは柔らかい。
JAZZ:ピアノが凄く滑らかに穏やかに変化。シンバルがやや引っ込む。全体的に音同士が溶け込んでいる。少し大人しいか。1本仕様よりエネルギーが少し低域寄りに。

山下:高域キラキラ輝くかなとも思うのだが、全域にわたりごく無難に展開。

ソフィ:非常に穏やかなソフィ。少し疲れているようにも聴こえる。高域切れ申し分無し。

佐野:ドラムがドスドスと腹にくる。佐野の声が引っ込んだようにも。パーカッションも良く出ている。

平沢:シャカシャカバリバリ鳴りまくる。音が散乱し気持ち良い。

総評:全域にわたりバランスが良い。解像度は平均的。低域の通りがよく、高域も出るところは出すので、特に不満はない。アクロリンクのケーブルらしく、癖らしい癖がない。際立った個性はないので、ケーブルで味付けするのが嫌いな人向き。ケーブルの音色を嗜みたい人には向かない。

試聴その03
アクロリンク
6N-P4020||ダブル使用

前述の6N-P4020||をダブル使用で使用した電源ケーブル。ホット/コールド導体に6N-P4020||をそれぞれ1本づつあてがっている。単純に導体断面積が2倍になっている訳だが、さて音質の変化のほどは如何に?

なお、この電源ケーブルも私が昔作ったもので、プラグコネクターにはフルテックFI-11G+FI-11MGを組み合わせているため、他のケーブルとの純粋な比較試聴にはなっていないことをご了承いただきたい。
JAZZ:弾力ベースがモコモコと。やはり下寄りになるようだ。低域モリモリ。ピアノやや落ち着き気味か。音色の厚さはこちらが上だが、熱さはシングルが上。

山下:やはり厚くなっている。鈍いか。いや、気のせいかも。

佐野:シングル仕様と特に変化無し。

平沢:音量が上がったように聴こえる。全体的に活気あり。

総評:ダブル使用にすることでP4030に似た傾向になる。はたして、ダブル使用に意義があるのかは作った自分もわからない。2本使いにしたところで4020||の音には違いないので、あまり意味はないだろう。見た目の面白さということかな。アクロリンクのケーブルらしく、癖や歪み感はない。

試聴その04
ディーバス
14-4CT
定価:\3,780/m 実売最安:\2,940(オヤイデ)
販売店:オヤイデなど

ディーバス(DIVAS CABLE)はサウンドアティックスの自社ブランドだ。DIVAS 14-4CTは発売以来、ハイCPな切り売り電源ケーブルとして人気を博してきた。

ポリウレタン製外装シースが硬いので、ケーブルも硬めに仕上がっている。絶縁材はテフロン系。導体は片側2芯分で推定3スケア以上はあると思う。ケーブル径はφ9と細めなので、取り回しに苦労することはない。こんな細い外径なのに、スターカッド構造を有しているため導体はとても太い。この試聴ではプラグ/コネクターにWattagate5266i+WattagateIEC320i透明タイプを装着している。なお、14-4CTは2005年6月現在、どの店も在庫切れ状態。キムラ無線に至っては今後、入荷の予定はないらしい。生産中止というわけではないらしいが、人気のあるケーブルだけに、メーカーの安定供給を強く望みたいところだ。
JAZZ:一気に抜けが良くなった。ピアノに透明感、浮遊感が出る。間合いが気持ち良い。音の間の静けさが高まった。つまり、S/Nが向上したというべきか。

山下:ドラムがドスンドスンとくる。全体的に元気。横方向に音場が広がる。パーカッションもキラキラと突き刺さるのが気持ち良い。

ソフィ:声を中心とした中域にはそれほどどうということも無いが、とにかく高域の輝きと低域のエネルギー感がグングン押し寄せてくる。ただし、高域の抜け切りは完璧とはいかず、わずかに頭打ちなところを感じる。これは使用したプラグ/コネクターの限界からか、ケーブルの特性からか、私の気のせいか。

佐野:冒頭のドラムがバシバシビシビシ気持ち良い。エネルギー感断トツ。スピード感も良し。

平沢:電子音がバリバリ突き刺さる。全ての音が押し寄せる。キンキンして気持ち良い。

総評:この価格でこの鳴り方はお買い得かも。特徴がある。中域に熱気と適度な艶があり、私好みだ。導体の材質や絶縁材はもとより、ケーブルの硬さと弾力が音色に強く作用していると推察される。このケーブル、シースが硬くて弾力があり、芯線を強固に押さえつけており、振動にもきわめて強そうだ。低域の量感は少ないが、弾む感じで心地よい。高域の奥行き感や広がりも特筆に値する。ただ、あくまで聴感上のことだが、超高域が少し抜け切らないという気もする。したがって、全く不満がない訳ではないが、S/N、反応性、解像度は高い。明瞭で角が立ち、賑やかな傾向だが、これがこのケーブルの良さでもある。スターカッドであるとか、ノンシールドであるなど、構造的にいうとオヤイデの2BY2とライバル関係といえるかもしれない。しかし、音質傾向は正反対だ。しっとり穏やかな2BY2に対し、14-4CTはカッチリガッツリだ。安価で元気なハイCPケーブルを自作したい人、ロックやポップスなど威勢の良い音楽を前のめりで味わいたい人にうってつけ。保留決定。超高域の抜けはスターカッドによるキャンセルが作用している可能性もあるのだが、プラグコネクターの選択で、不満点はかなり解消できるのではないか。そこで、お次はプラグコネクターをグレードアップしたバージョンを試聴してみよう。

試聴その05
ディーバス
14-4CT
オヤイデC-037+P-037組み合わせバージョン

14-4CTにオヤイデ電気のロジウムメッキプラグコネクターP-037/C-037を組み合わせたケーブルで音質変化を検証する。

これは私が常用している自作ケーブルなので、すでにメッシュチューブで被覆している。ケーブルの中身は14-4CTなので、今回の試聴に加えてみた。前述のワッタゲートプラグコネクター5266i/320iとの音質比較をしてみるためだ。
JAZZ:マリンコプラグコネクターバージョンよりピアノの実在感と透明感がわずかに向上。ロジウムの癖がそう錯角させているだけかも知れないが、リアルさを体感できる。

山下:シャラシャラしたパーカッションがより気持ち良い。14-4CTの持つ熱気が少しクールさを合わせ持つようにも感じる。P-037/C-037の効果か。

ソフィ:ソフィーの声抜群。ソフィの持つ寂し気な趣がより強調される。パーカッションも綺麗に広がる。

佐野:切れが良い。研ぎ澄まされ、叩き付けるようなドラムが良い感じ。パーカッションもカチーンカチーンとより散乱する。

平沢:シンセサイザー音が立体的に放射されている。とにかく耳に痛いくらいの鳴り方。

総評:超高域の抜けの悪さがかなり改善された。P-037/C-037やPSE-018HG/PSE-320HGやFI-11MG/FI-11Gなどの金メッキプラグと組み合わせると、違った表情を表しそうで興味のあるところ。ワッタ350/330は価格に不釣り合いだが、パターンとしては当然あり得る。PSE-018HG/PSE-320HGなどのロジウム対決でも面白い。PSEはともかく、国産プラグに高品質なものが出揃ったことは大いに喜ばしい。14-4CTの大いなる長所とわずかな欠点を、プラグコネクターでどう振り向けるか、自作の醍醐味である。

試聴その06
AET
GAIA-AC
すでに絶版 当時の定価\12,600 当時の実売\10,000程度
販売店:逸品館にて在庫処分中(2005年5月時点)。東京ではすでに姿を消している。

SCR-ACの販売と前後して絶版になった国産ハイエンド切り売り電源ケーブルだ。スピーカーケーブルとしても兼用できる。実売\10,000/m程度と高価にも関わらず、相当数のマニアがこれで自作ケーブルを製作したと思われる。高いものほど良いものだというマニア心理が働いていたとも思えるが、これを試した私自身、この音なら払った対価に相応しいと記憶している。

私が見る限り、基本構造は現行のSCR-ACと似ている。つまり、導体はMWT構造、芯線は4芯のスターカッド構造、ノイズビートテープによるシールド処理がなされている。GAIAはφ10なのに対し、SCR-ACはφ11.5と若干太くなり、GAIAの方が気持ち硬め。GAIAではご覧の通り合成繊維の介在物が充填されているが、SCR-ACではこの介在物はなくなっている。他にも、目視では確認できないところにGAIAとSCRの違いがあるようでもあり、これは実際の音に表れていることだろう。
さて、今回はプラグコネクターを外した状態でお蔵入りしていたGAIAを引っ張りだしてきて、今回の試聴リストに加えてみることにした。長さは1.2m。GAIAには初代と2004バージョンがあるのだが、これはspec2004だ。興味があるのは、後継ケーブルSCR-ACとパフォーマンスの違いがあるかどうかだ。
JAZZ:聳え立つように高く突き抜ける高域がいきなり出てくる。シャープな高域だ。ピアノがやや薄いが、シンバルはやたら聴こえ良い。耳に付くという言い方もできる。とにかくシャープだ。

山下:タカタンタンというパーカッションが良く耳に聴こえる。鈴の音のような効果音も強調される。ボーカルはまぁまぁ良い。音楽性という向きではどうかはわからないが、面白い鳴り方をする。

ソフィ:高域の響きの良さが特徴的なケーブルだ。解像度も高い。SCRは滑らかだが、GAIAはクールだというのが、ソフィの声にもはっきり現れている。これはこれでゾクゾクっと気持ち良い。人によっては高域が耳について嫌だろうが、切れは抜群。シャープに決まる。GAIAの方が低域も締まっている。たぶん、導体径の違いが音に現れているのではないか。

平沢:放たれるシンセ音がチクチクと気持ち良い。スピード感もあり、音離れが良い。低域は薄い。やたら高域が耳につく。

総評:かなり個性的なケーブルと感じた。とにかく情報量と反応性が抜群であり、高域の鋭さが際立つ。その分、中低域がやや薄いとも感じる。好き嫌いがあるはずだ。前作までのAETらしさとはこういうものなのかもしれない。以外かもしれないが、テクノ系の電子音を刺激的に聴きたい人にうってつけかもしれない。私的には今後も手元に残しておきたいと思った。ただし、GAIAはすでに絶版している。半年前にテレオンでは激安処分をしていたが、それもすでに売り切っており、秋葉原では入手はできない。2005年5月には、逸品館で数メートル毎にパッケージングした状態で処分特価販売しているのを見かけたが、現在もまだ残っているのかは分からない。

試聴その07
AET
SCR-AC
定価:\12,600/m 実売最安:\9,600(テレオンサウンド110 /逸品館)
販売店:木村無線/テレオンサウンド110 /逸品館

SCR-ACはAETの新作電源ケーブル。\12,000/mと切り売り電源ケーブルの中では高額な部類に入る。それだけに、音質に対する期待も大きいのだが、さてどうなのだろう。なお、逸品館ではエージング済みSCR-ACを販売している。どのようにエージングしているのかは知らない。ちなみに、SCR-ACの上にはSIN-ACが存在するのだが、実売\50,000/mと桁違いに高額なので、気軽に試すというわけにはいかない。

SCR-ACは先代のGAIA譲りの構造。テフロンとおぼしき絶縁材を有し、中心の樹脂仲介物の周りに、内側と外側が反転ピッチで撚り合わせた撚り線構造を有している。AETではこれをSHT構造というのだが、私が見る限りではS/ALABのハイエンドホース3.5のMWT構造と大きく違うところはない。4芯のスターカッド構造。アルミ箔に接する形でドレイン線が2本通してある。アルミ箔、ノイズビートテープ(アモルファスシールド)、外装シースとケーブルの柔軟性は気持ちGAIAより柔らかくなっている。取り回しはしやすい方だ。GAIAはケーブル外径φ10だったのに対し、SCR-ACではφ11.5とわずかに太くなっている。導体断面積は不明だが、GAIAよりは断面積が増えたように思う。外装シースは半艶の濃い青。
JAZZ:ピアノが滑らかで有機的だ。そう、全帯域に渡り艶やかで滑らかな感触がある。音楽的といえるかもしれない。各パートの分離も申し分無し。情報量が多く、音像の骨格がしっかりしている上で、滑らかさが加わっている。

山下:定位よく、刺激音はほどほどで音全体が融和している。シンバル音に艶と伸びやかさが加わり、空間に自然に広がる。

ソフィ:声に実在感がある。やはり、全域に余裕ある大人しさを感じる。出すところはきちんと出ているのでよしとする。

佐野:うーん、なぜか暖かみが加わる。弾力があるのだが、ただ一辺倒のボリューム感ではなく、音楽的な悦楽を感じさせる。濃密に奏でられる印象で、美音系だと言える。

平沢:電子音なのに、艶が乗っている。中央に芯が作られた上で、各音が左右にまろやかに広がっている。

総評:GAIAとはずいぶん性格を異にする。GAIAの街道度を継承しつつ、別経路に進化したようだ。非常に生々しく音楽的だ。音楽の濡れ場的な要素をうまく引き出している。よく練り上げて製品化されたと思われる。これからのAETの目指す音ということか。私の勝手な推測だが、導体断面積も含めて、全体的な構造を大きくしたことが、音色傾向の変化に大きく作用しているのではないか。価格は高いが、買って損はしないケーブルだ。オールマイティに音楽を楽しみたい人向け。多少出費が嵩んでもかまわないという人、アコースティックやボーカル系など空気感を楽しみたい人には特に受けそうだ。

試聴その08
アコースティックリバイブ
POWERMAX5500
定価:\5,775/m 実売最安:\3,675(オヤイデ電気)
販売店:オヤイデ/テレオンサウンド110(木村無線は近日入荷予定)

アコリバが2005年春、ついに切り売り電源ケーブルを発売した。それがこのパワーマックス5500で、まずはその太さに驚かされる。ケーブル外径はφ15と極太。外装シースは印象的な緑色で、この太さと相まって、キンバーのPK-10を思い起こさせる。

相当太いのに、ケーブルはそれほど硬くはない。パワーマックス5500はアコリバとオヤイデ電気の共同開発であり、たしかに随所にオヤイデらしさが表れている。例えばこの色。これはきっと村山社長が決めたに違いない。
ケーブル構造はいたって王道。極太導体にポリオレフィン絶縁体、樹脂の仲介材を介した上で、銅箔シールドを施し、外装シースを被せている。導体断面積は5.5スケア。この太さと導体径、アクロリンク6N-P4030の良きライバルといったところか。芯線はご覧の通り、ホット/コールド/グランドの3芯。導体は高純度OFCのアニール処理。こういう構造からすると、出てくる音はだいたい想像できる。おおらかで、下寄りのバランスで、刺激感がなく伝々・・・。この太さを見る限り、ちょっと私の好みの締まった音は出にくそうだが、実際はどうであろうか。想像通りか、それとも想像を超えた悦楽の世界が展開するか、パワーマックス5500の実力を見せてもらおうではないか。このケーブルならではの特徴としては、左上写真に写っている黒い介在樹脂。これはけっこう硬く、柔らかいケーブルにある種の引き締め効果をもたらしている可能性がある。なお、このケーブルにはマリンコのプラグコネクターを組み合わせている。
JAZZ:情報量はかなり多い。刺激音が無く、中低域の出が自然。全帯域にすんなり余裕を持って出てくる印象で、抑圧感や抵抗感が無い。

山下:達郎が椅子に腰をかけてリラックスして歌っている。各パートの分離申し分無し。やはり自然体だ。

ソフィ:ソフィもリラックスしている。風吹く爽やかな草原で歌っているようだ。あぁ、予想に反してこれはいいかも。音楽の流れの良さに少し涙ぐむ。ただ、穏やかなだけではない。余韻や間合いに感動がある。予想以上にこの方向性は好ましいかも。気に入った。

佐野:上から下までフラットに出ている印象。刺激が少ない分、音量を上げられる。長く聴くのに向いているケーブルだな、これは。極太導体径ゆえに、高域が劣っているのではないかと予想していたが、そんなことはない。

平沢:バランスは下寄り。ドーンドーンと音の波が押し寄せる。聴き疲れする音ではない。

総評:一見普通の音だが、音に深みと立体感があり、低域の腰が座っていて、聴きやすい。無理をしない余裕のあるケーブルだ。リラックスして音楽を聴きたい人向け。これはこれで1本持っていて損はない。

試聴その09
S/A LAB
HIGH-END HOSE PROFESSIONAL(HHS)
定価:\3,675/m 実売最安:\2,940(ヨドバシカメラ新宿西口本店)
販売店:オヤイデ電気/ヨドバシカメラ新宿西口本店など

息の長いケーブルだ。何度も絶版のうわさが流れつつも、かろうじて現行販売されている。S/ALABは旧来、サウンドアティックスのブランドとして展開していたが、現在、S/ALABの商標はAETが所有している。近年は、諸処の理由により全く宣伝をしなくなったものの、現在でも一部店舗で入手は可能である。電源ボックスの火付け役がアコリバのRTP-6ならば、切り売り電源ケーブルの火付け役はS/ALAB のハイエンドホース3.5(HH3.5)だった。今回はHH3.5が手配できなかったため、弟分のハイエンドホースプロフェッショナル(HHS)を比較試聴することにした。自作電源ケーブルが好きな方ならHH3.5をラインナップに加えてほしいだろうが、今回はHHSで我慢してもらおう。HHSの音については聴き慣れているため、ある程度傾向は掴んでいる。引き締まり瞬発力のあるケーブルと感じているが、他のケーブルと純粋に比較試聴したことはない。さて、改めてじっくり聴いてみると・・・なお、同ケーブルは昔から供給が不安定で、小売店での在庫切れがしばしばある。HHSがいつまで継続生産されるかも微妙なところであり、欲しい人は早めに確保しておくことだ。

ケーブル外径はφ9。芯線はCPW構造という導体撚り。1層目と2層目の撚り方向を逆にすることで、インクダンスの低減を図っている。導体は6N銅。断面積は2スケア。充填材はナイロンテープのような薄い箔帯状のテープと、グラスファイバーのような極細の糸で構成されている。
なお、今回試聴に使ったHHS自作電源ケーブルは私のプリアンプPRA-2000ZR用に製作していたものであり、プラグ/コネクターには松下WF5081/シューター4781を組み合わせ、さらあにシャークの青メッシュを被せている。HHSの詳細についてはオーディオ用ケーブル使用自作電源ケーブル その1に記載しているので、参考にしてほしい。
JAZZ:何ということは無い。ごくごくオーソドックスな鳴り方だ。切れのあるシャープな高域が特徴。妙な癖は無い。フラットだが、ボリューム感は少ない方で、低域は締まり気味。

ソフィ:平均的。シャープな鳴り方。ただ、誇張感はない。オーディオ用語で言う、色付けが無いというのが当たっている。

佐野:あっさりしている。決して過不足があるわけではない。各パートはきちんと出ているし、広がりや適度な刺激もある。ただ、全体的にあっさりしている。

平沢:電子音においても爽やかだ。同じコメントばかりだが、爽やかな、というのがHHSの音なのだろう。

総評:あっさり基調。爽やかで、高域にかけてシャープな印象を受ける。さらりと表現する点では、アクロリンク4020||に近い気もするが、こちらはもう少しスリムアップし、クールさが表に出る感じ。中低域のボリューム感はほどほど。解像度は良好。プラグコネクターを変えれば、印象が違うかもしれないが、そこまでの検証はできなかった。個性的な新型ケーブルが出現している昨今、存在感が薄らいでいるかも。こてこてごりごりな音が嫌いな人、安価に純粋な伝送性を求めたい人に向いている。

さて、長くなるので、続きは電源ケーブル17種類の音質比較レポート後半でどうぞ

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