オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオコンポーネント
CDプレーヤー TEAC VRDS-25xsのノーマルモデルと
VRDSメカニズムバージョンアップモデルの音質比較実験!


VRDS-25xsに移植された新VRDSメカ
2002年9月から2003年11月まで実施されたVRDSシリーズのメカニズムバージョンアップサービスについて、ノーマルモデル(発売時の状態)とバージョンアップモデルの音質比較実験をおこなったので、詳細なレポートをお届けする。このバージョンアップは同社のVRDS-25、VRDS-25x、VRDS-25xs、VRDS-50を対象におこなわれ、非常に好評を博したという。内容は、上述の機種にX-25やX-30同等の新VRDSメカブリッジとターンテーブルを移植するというもので、VUK-60というサービス名で呼ばれていた。バージョンアップ価格は5万円/台。TEACのホームページ上で確認すると、かなり頑丈そうな極厚アルミ製VRDSブリッジが移植されるようで、モーター系も最新バージョンに交換してくれるようだ。バージョンアップしたら飛躍的な音質向上が期待できそうで、期待が高まるばかり。同社ホームページにも「これによりさらにサーボコントロールが安定し、外部振動の影響を受けにくくなり、ディスクの読取り精度が向上します。音質は、分解能が向上するため、各楽器の明解な音色と質感を聴きとることができます。また、これにより音楽的な表現力の幅が広がり、演奏家のパッション、解釈がよりリアリティーをともなって感じとることができるようになりました。」といった効果が述べられている。しかもこのサービス、期間限定なのでこの機会を逃したらきっと後悔するに違いない。というわけで、私は所有するVRDS-25xsをバージョンアップした。実は、相当悩んだ挙句に、受け付け最終日にぎりぎりセーフで申し込みしたのだった。というのも、このバージョンアップの効果については、ネット上で様々な批評が飛び交っており、「高域の情報密度が向上した」という意見が多い反面、「VRDS-25xs特有の瞬発力が減少し、大人しくなってしまった」というマイナス評価も見受けられたからだ。私は同機の高域の切れ味が得たく気に入っているので、切れ味が薄まるのであれば、仮に総合的な音質が向上しようとも、わざわざバージョンアップする意味合いは無いのではないかと。結果的には、やらずに後悔するより、やって納得したほうがいいだろうということで、バージョンアップに踏み切ったのである。
2004年の3月にバージョンアップの作業が終わり、ティアック修理センターから愛機が戻ってきた。受け付け最終月は申し込みが殺到したため、メカニズムの増産調達に時間が掛かったらしい。よって、申し込みから半年後のバージョンアップ実施となったのだ。愛機は外見上、何の変化も無い。リアパネルには「改造済」シールが貼られている。さて、バージョンアップされた愛機をオーディオラックにセットし、期待と不安の音出しである。一番目の感想は「うっ、高域がスムーズになったなぁ。かなり伸びが良い感じ。低域は変化は変わらないが、確かにVRDS-25xsの中高域の華やぎが薄まってるぞ!あー、いいのか悪いのか。」であった。そう、もともとVRDS-25xsには中高域にピークが感じられ、それが丁度良いアクセントになっていたのだ。そのアクセントがバージョンアップによって払拭されている。うーん、このバージョンアップは正解だったのだろうか・・・。
VRDS-25xs
バージョンアップ後、私は悶々とした気持ちで過ごしていた。愛機のメカニズムは確実に向上している。ただし、私の好きな25xsではなくなってしまった。この悩みを断ち切るにはどうすればいいか?一つには、更なる改造を加えること。例えば、高精度クロックの搭載などのチューンアップが考えられる。しかし、その前にどうしても確かめておきたいことがある。ひょっとして、事前に調べた情報が自分の頭に刷り込まれているせいで、バージョンアップのマイナス面は自分の思い込みかもしれない、ということ。この疑問を払拭するには、バージョンアップをしていないノーマルモデルと厳密な比較実験を行うしかない!というわけで、買いました!ノーマルのVRDS-25xsを!わざわざ音質比較するためだけに。自分でも馬鹿だと思う。同じ機種を2台も所有するなんて。けど、これも愛するVRDS-25xsを愛し続けるために必要な行為なのだ。
追加購入したVRDS-25xsをラックに収めるためラックの組換えをおこない、次いで2台目のVRDS-25xsをセッティングする。これで、ダブルVRDS-25xsといういともおかしなオーディオシステムが出来上がった。2台の外見上の違いは全く無い。あえていうなら、リアパネルにバージョンアップの証明シールが貼ってあるか否かの違いである。当然、中身を開ければメカニズムの違いから容易に見分けがつく。2台ともケーブル類は全く同一にした。RCAケーブルはオヤイデストレートライン75AD使用自作ケーブル、電源ケーブルはS/A LAB HHS使用自作ケーブルである。アンプはリモコン付きのビクターAX-900を使用。巨大電源を搭載したプリメインアンプである。B-2103ではなくAX-900を使用した理由は、リモコンで瞬時に入力切り替えができるためだ。AX900のLINE1とLINE2にVRDS-25xsを接続。双方の入力に音質差異がないことは確認済みである。ソフトは全く同じCDを3種、各2枚用意した。まず、アイルランドの女性シンガーSOPHIE B. HAWKINS(ソフィービーホーキンス)の「tongues and tails」。ソフィービーホーキンスは官能的で、哀愁漂うメロディーが抜群。次いで、ピアノ弾き語りの矢野顕子「スーパーフォークソング」。矢野顕子のボーカルとピアノのみというシンプルな構成で、聴き手をリラックスさせる。さらに、フランスのシンセユニットDEEP FOREST(ディープフォーレスト)の「BOHEME」。ディープフォーレストはアフリカ、東ヨーロッパなどの民族音楽を巧みに折り込んだコンテンポラリーミュージック。これらは私のお気に入りソフト。ジャズやクラシックも用意できれば万人受けする実験ができたのだが、2枚揃えることができなかった。これら視聴ディスクを2台のVRDS-25xsにセットし、リモコンで頭出しをおこなう。当たり前だが、VRDS用のリモコン1台を操作すれば、2台のVRDS-25xsが同時に反応する。よって、全くズレの無い同時再生が可能。実際に、目的の曲の頭出しをして再生すると、双方のプレーヤーが一切ずれることなく再生できた。これで、比較試聴実験の体制は整った。
ホーキンス「tongues and tails」の4曲目「SAVIOUR CHILD」を再生する。この曲は冒頭の雑踏の賑わいと中半のサビ部分で聴き分ける。あ、確かに違う。25xsノーマルではパーカッションがシステム中央部の高さ90センチほどの空間に密度感のある定位が出現。一方、25xsバージョンアップでは高さ120センチのところに左右の広がりを持って展開する。ボーカルもそれに伴い上方に引っ張られる。この理由は察しがつく。つまり、25xsバージョンアップは帯域バランスがフラットもしくは高域側に寄ったため、スーパーツイーターからの放射量が増え、高めの定位になったのだろう。これがフルレンジユニット1発での再生なら、定位の高さ変化は無いはずである。ノーマルモデルの定位の高さはちょうどホーンツイーターFT600の高さであり、FT600の高域は15kHz以上急速減衰している。15kHz以上はT925に受け持たせているので、この周波数帯の変化があるのは明白である。ただし、私はスペアナを所有していないので、残念ながら変化量を正確かつ視覚的に捕らえることは出来ない。矢野顕子「スーパーフォークソング」では1曲目「SUPER FOLK SONG」を再生。ある程度音量を上げないと差が分からない。バージョンアップの方がわずかながら伸びが良い。ディープフォーレスト「BOHEME」も同様の傾向を示した。ディープフォーレストはシンセ音源などを多用したユニットであり、巧みなステレオ感と、透明感のあるサンプリング音源が抜群だ。3曲目の「MARTA'S SONG」を再生。冒頭のシンセ音と透明感のある女性ボーカルが、ノーマルでは中央付近に集中し、バージョンアップでは左右に拡散した音像を作り上げる。どちらも満足度の高い再生を示している。なお、これら両機の差異は、小音量再生では聴き分けられない。10時くらいのボリューム位置で差が判明できる。
ノーマル機の内部構造全景。 バージョンアップ機の内部構造全景。
ノーマル機のVRDSメカブリッジ。トラス状の鋳物がメカっぽくてかっこいい。 バージョンアップ機のVRDSメカブリッジ。極厚アルミブリッジが未来的な雰囲気を醸し出す。
ノーマル機の基盤。4本のヒューズが垣間見える。電源トランスの横にあるので、電源整流用の基盤と思われる。 バージョンアップ機には従来の基盤の上にもう一つ基盤が追加されている。ネオジウム磁石モーターの制御回路と思われる。
ノーマル機の側面内部シャーシ。増設基盤の固定用金具を取り付けるためのパネル打ち抜きが見られる。バージョンアップによる基盤増設を想定していたのだろう。 バージョンアップ機の側面内部シャーシ。増設基盤の固定用金具を用い、増設基盤が固定されている。ヒューズ交換には、この基盤を外すさなければならない。ヒューズはめったには切れないが。

これらの試聴で得た私なりの結論は、ノーマルとバージョンアップとでは絶対的にバージョンアップが有利というわけではなく、好みかどうかということだ。あくまで、私のシステムで再生した場合の主観的な感想だから、これに異論を唱える方も大勢いらっしゃると思う。耳が肥えていて、もっと素晴らしいシステムを持った方が同一の実験を試みられたら、バージョンアップモデルが圧倒的に優勢との判断を下すかもしれない。バージョンアップには高域レンジの伸びがはっきりと感じられた。その見返りに、この機種の特徴であった中高域の華やぐ感じや押し出しの強さがグッと抑え込まれている。以前、オーディオショップで試聴したことのあるX-25の音と同一の感触だ。VRDS-25xsとX-25ではDACの違いもあるのだが、やはりメカニズムが音質に及ぼす影響というのは大である。バージョンアップモデルを15kHz以上の高域の伸びが悪いスピーカーで再生すると、ただ単に中域が薄まった感じになってしまうのではないか。バージョンアップモデルの真価を発揮するには、スーパーツイーターを追加するか、高域特性が優秀なスピーカーを使うべきだろう。押しの強い個性のあるノーマル機と、優等生で大人びたバージョンアップモデル、どちらを選ぶかと言えば、ノーマル機が好みかもしれない。オーディオ的にはバージョンアップによる効果が出たということなのだろう。しかし、オーディオは趣味であるから、ワイドでフラットな再生が好まれるとは限らない。音楽の情熱は中域の表現に掛かっているからだ。さて、この2台のVRDS-25xsを今後どう生かすべきか?1台は寝室で使おうかとも考えているが、勢いで買った2台目である。正直、2台を所有し続けるのは金銭面と置き場所の関係でつらい。いっそ、ノーマルモデルを手元に残し、バージョンアップモデルを手放してしまおうかとも考えたりもするが、せっかく手塩にかけたバージョンアップモデルと別れを告げるのも惜しい。であれば、バージョンアップモデルを徹底的にチューンアップしてみようかとも思う。大人しくなってしまったバージョンアップモデルに活を入れるにはどうすればいいかなぁ。インシュレーター、高精度クロック変更、外部DAC、内部パーツの交換、制振対策などなど。これが目下の検討課題である。両機とも手放して、もっと良いCDプレーヤーを買ったらいいじゃないかと思われるかもしれないが、私はこのVRDS-25xsの意匠が好きなので、とことん愛し尽くしたいのだ。

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