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オーディオイベントレポート
FOSTEX G850試聴会レポート
2006.7.17公開!

開催場所:コイズミ無線本店(ミツウロコビル5階) 
開催日:2006.7.8 14:00〜15:00 15:30〜16:30

 自作スピーカー派お馴染みのFOSTEXから完成品スピーカーG-850が発売された。これは同社の新基軸である純マグネシウム振動板を搭載しているのが最大の特徴。純マグネシウム振動板搭載製品としては、T90A-EX、T500A-Mk2に次いで3番目の製品になる。

 さて、今回はG-850発売記念の試聴会をレポートしよう。ただ、この記事を読んでからG-850を欲しくなっても時既に遅し。限定販売数300本(150ペア)は全量売約済みとなっており、今から欲しいと言っても入手できない。しかしながら、G-850に搭載さているMG-850ユニットに関しては、まだ予約空きが若干数ある。私は最初から完成品G-850を買うつもりはなく、MG850ユニットのみの入手を考えていた。単に、私はスピーカー工作が好きだからである。

 MG-850は限定数量300個のユニット。すでに6月中旬から予約が開始されている。配布時期はきっと良いものに違いないので、試聴無しで予約してしまっても良かったのだが、やはり自分自身で納得したものに投資をしたい。せっかく試聴会が開催されるわけだし、純マグネシウムの実力を確認してから、購入予約しても遅くはないだろう。そんなわけで、コイズミ無線本店で開かれた試聴会に参加した。

試聴会の始まり。まず、小泉常務より挨拶。続けて、フォステクスカンパニーの佐藤さんよりG850の紹介がおこなわれた。ソフトの試聴と佐藤さんの技術解説を交互に織り交ぜながら、会は進行していった。14時開始の、時間にして1時間。佐藤さんの説明内容を要約しながら、G850の製品説明と試聴の感想を綴っていこう。
これが今回の試聴システム。両脇のワインレッドの小型スピーカーがG850。かなり小型のブックシェルフ型スピーカーだ。スピーカースタンドはG850にマッチングすべく開発されたもので、参考展示。発売時期は未定だが、製品化の予定。スタンドに載せた総高は90cmくらい。ソファに腰掛けると、ちょうど耳の高さにユニットが合うようになっていると思われる。
 G850の近影。とても奇麗な朱色仕上げが施されている。ただ、この個体は試聴機らしく、発売される物より若干色合いが薄いらしい。実際に販売する物に関しては、これより赤みが強くなる。参考展示のスピーカースタンドと同じくらいの赤みになるらしい。

 エンクロージュアの色調はバイオリンの腹の色を意識したもの。格調高い赤色を目指したようだ。色彩検討用に何台もの試し塗りがなされたらしい。

 エンクロージュア表面はブナのツキ板で仕上げられ、ステイン着色の上、艶出し加工が施されている。63,000円/台。外形寸法はW144 H302 D211。重量4.2kg。グリルネット付属。再生周波数帯域60Hzー40kHz。搭載ユニットMG850。

 G850のエンクロージュア方式はバスレフ型。ご覧の通り、前面ダクトを採用。このダクト、ありがちな真円断面ではなく、やや横長の円断面を有している。これにはきちんとした理由があるらしい。つまり、ダクト断面をやや押しつぶした形状にすることで、ダクトから吐き出される空気に粘りが生じ、低域の再生能力が上がるらしい。スリットダクトと同じ理屈である。

 エンクロージュアは18厚のブナ積層合板で構成されている。ただ、背面バッフルのみシナ共芯合板を使用。ブナ積層合板は硬く、シナ共芯合板は柔らかい。硬い面で発生した振動を、柔らかい面が受け止めることで、響きのバランスが取れているらしい。ちなみに、MG850ユニットは比較的響きのある板材と相性が良いとのこと。全面を硬い木で作るのはあまり好ましくはないようだ。MG850用のエンクロージュアを自作する場合、フロントバッフルには米松合板あたりが望ましいとのこと。

 ブナ(ビーチ)積層合板は入手の難しい板材だが、G850の性能発揮のため採用することになったらしい。ブナ積層合板のプライ(断面の積層)は、フィンランドバーチ合板(カバ)のそれと良く似ており、緻密で高級感がある。

エンクロージュアのことばかり書き連ねているが、同機の売りはなんと言っても純マグネシウム振動板である。マグネシウムは金属の一種で、アルミより比重が軽い。金属でありながらも内部損失が高い。内部損失が高いと言う事は、大雑把に言えば素材固有の響きが少ないと言う事。振動に対する応答速度にも優れており、スピーカーのコーン紙にとっては理想的な素材なのだ。しかしながら、マグネシウムと言う物質、なかなかに扱いづらく、空気中ではすぐに酸化してしまう。スピーカーの振動板に用いられるほどの薄さにするのが、これまた大変。振動板は平面ではなく、お椀状の立体形状をしている。型にマグネシウムシートを当ててプレスするとマグネシウム振動板が出来るわけなのだが、このプレス工程の力の掛け具合が難しいらしい。ゆっくり時間をかけてプレスする必要があるのだ。

ちなみに、ここ2年ほどの間にマグネシウム合金振動板搭載スピーカーを見かける様になったが、マグネシウム合金と純マグネシウムでは性質がかなり異なるらしい。無論、純マグネシウムの方が優秀。フォテクスの純マグネシウムの純度についても説明があったのだが、純度何パーセントって言っておられたかなぁ?忘れてしもうた。

G-850に搭載されているMG-850ユニットは、中央より左右各15度までの角度内なら、周波数帯域が一定に保たれるような指向性になっているらしい。

先にも述べた事だが、MG-850ユニットに用いられている純マグネシウム振動板は、製造に時間が掛かる。素材の純マグネシウムシートは加工が難しく、これをコーン形状に加工する際、ゆっくりと時間をかけてプレスしないと、ひび割れを生じる。また、純マグネシウムは素のままだと酸化してしまうので、これを防ぐためにポリイミドコーティングされている。

フレームとエッジはFE88ES-Rと同じ。フレームは銀色に塗装されている。エッジはUDRタンジェンシャルエッジだ。振幅に強いという特徴がある。

G850は手作業で製造されているらしく、完成したものから随時出荷しているとのこと。内部配線には、フォスお馴染みの銅銀単線が用いられている。単売されているφ2.6では少々太すぎるので、φ2.0の単線を使用。この単線にタングステンシートを巻き付け、内部配線としているのだ。使用自体は単線のスピーカー内部配線なんて、初めて聞いたぞ。良い意味でアマチュア心を感じさせるなぁ。恐るべしフォステクス魂。

なお、同スピーカーに付属のグリルネットは特殊な布。音質を極力損なわぬ素材として探しに探して見つけた素材らしい。同社ではこの布地を大量に買い込んだとの事で、今後同社から発売される完成品スピーカーには同じ素材を貼ったグリルになるとのこと。

システムの紹介。SACDにはアキュフェーズのDP-78、アンプには同ステレオプリメインE-550を使用。SSラックに載せられている。DP-78、E-550とも電源ケーブルは製品付属ケーブルと思われる。ラック内の機器は使用せず。ラインケーブルにはフォステクスWAGC202を使用。WAGC202はφ2.6の銅銀単線を導体に使用、タングステンシートで被覆したケーブルだ。機械製造による量産品ではなく、受注を受けてから同社社員の手で製作される。
黙々と試聴する参加者達。参加者はおよそ30名。立ち見というか立ち聴きも出る盛況ぶり。私の試聴位置は最後列だったため、参加者の人波が音を遮りがちで、完璧な試聴位置とは言い難いものではあった。また、小泉無線の試聴ルームは店舗と繋がっているため、空間面積としてはかなり広大。G850ほどの小型スピーカーには広すぎるのだが、総じて過不足を感じることはなかった。ま、私的には最後列で、しかも小音量再生だったため、もっと最前列で聴きたかったというのはある。

再生ソフトは6種類くらい用意されており、流行のノラジョーンズ始め、ボーカルもの、アンビエント系電子音楽、ジャズなどが次々と再生されていった。ソフトについては解説があまりなされなかったため、具体的な曲名などはわからない。ま、こういう試聴会の場合、ソフトの説明に注力されると間が空いてしまうので、サクサクと聴かせてくれた佐藤さんはえらい。

肝心の音質だが、なかなか素晴らしいものだった。比較対象のスピーカーなどが無かったため、どこがどう良かったのか説明するのは難しいのだが。8.5cm口径という小振りなユニットであるため、空間を揺るがすような再生や、ほっぺたをひっぱたかれるような爆裂音は範疇外。だが、音の立ち上がりや、定位感は素晴らしいものがあり、これはフォステクスの新しい音だと感じさせるものがあった。8cm口径くらいのユニットとなると、これもピンからキリまであるのだが、私の経験上、普通の8cmフルレンジスピーカーとは比較にならないほどの繊細さ、緻密さ、表現力の豊富さを感じさせた。12万円で妥協を廃した高性能スピーカーが入手できる、良い時代である。

佐藤さん曰く、G850はアンプの性格を如実に現してしまうスピーカーであるとのこと。お勧めのアンプは何かありますかとの参加者からの問いかけに、個人的にはA級アンプが合うと思いますとのアドバイス。真空管はどうですかとの問いかけに、けっこう面白そうですねとの回答。

ボーカル物を数枚聴かせてくれたのだが、小口径ユニットはボーカル再生に好適であることが実感できた。生々しさが抜群である。けど、それを感じるにはスピーカーにかなり近づかないといけないのだが。高域はやや派手目であるが、安物小口径スピーカーにありがちなドンシャリ音ではない。指向性はけっこう強めと感じた。ということは、置き方を色々と工夫するのがよかろう。スピーカーの向きや距離、間隔を変える事で、自分好みの位置決めをする。G850にはそういう楽しみがありそうである。

1時間の試聴会の後、30分ほど自由に試聴する時間が得られた。私は試聴会終了後、急ぎMG850の予約のためコイズミ無線ラジオストアー店に走り、予約を終えてから本店へ戻ってきた。その後、佐藤さんとしばらくお話し。その後、他の参加者の持参したソフトを便乗して聴かせてもらった。宇多田ヒカルを流す人、クラシックを流す人、色々である。私はスピーカーから1mほどの至近距離で聴いたのだが、ふむふむ臨場感抜群だ。音に包まれる感覚である。このスピーカーはニアフィールドで真価を発揮する。今回試聴した完成版G850を購入される方々も、おそらくニアフィールド的な使い方を考えているのではないだろうか。私の勝手な推測だが。長岡先生だったらこのスピーカーをどう評価されるだろうか。MG850ユニットをどう料理されるだろうか・・・。なお、AA誌121号やステレオ誌最新号にG850試聴記事が掲載されている。興味のある人は読むべし。

試聴の感想が短くて申し訳ないが、率直に申し上げると純マグネシウムスピーカーは買い!である。今回のスピーカーは小型ゆえに低域の再生に関しては限界を感じたが、そういうのはもっと大型のスピーカーに求めるべきものなので、割り切って考えねばならぬ。この試聴会が終わってすぐ、私はMG850を予約した。私が予約した時点で残り5ペアであった。

MG850ユニットを予約された方、どう使われますか?佐藤さんはバスレフ向きのユニットだと申されていたが、個人的には平面バッフルなんてのも面白そう。共鳴管ではどうだろうか?いずれにせよ、この8.5cmユニット、ニアフィールドスピーカーとして仕立ててやるのがお似合い。

実は私、現在メインシステムの再構築中であり、ぼちぼちながら進行中である。メインシステムとは別にサブシステムも構想していて、それはまさしく小型コンポによるニアフィールドシステム。アンプとソース機器の選定は進んでいたのだが、スピーカーに関しては良いものが浮かんで来なかった。けど、MG850の登場で主役は決まった。MG850はみじんこニアフィールドシステムの中核を成す事になろう。ま、MG850の配布時期は9月なので、まだまだ先の事だけどね。

MG850の使い道としては、マルチウェイスピーカーのミッドレンジ、もしくはツイーターとして使っても面白いんじゃないかと思った。MG850は限定ユニットFE88ES-Rと同じフレームなので、FE88ES-R専用アダプターリングを流用する事が出来る。つまり、MG850を10cmユニットと互換的に扱う事ができる。となると、スワンへの搭載も可能になる。きっと誰かやるに違いない。MG850を入手する150人中の何人かが。

純マグネシウムの今後の展開として、もっと大口径のユニットへの適用も模索中(試作中)だという。ただ、先にも触れた通り、純マグネシウムのシートを振動板へ加工するのには高度な技術が必要。そうおいそれとロクハンや20cm、30cmへと大口径化が図れるというわけではなさそうだ。HP形状の純マグネシウム振動板ユニットなんかが出来れば凄いだろうなと思うが、それはちょっと望みすぎかな。

今後のユニット発売に関してはMG850の先に、具体的なものはないようだ。それと、MG850に関しては今秋の300本限定販売の後、第二期販売は無いようである。ま、今までの限定販売ユニットの経緯から察するに、第二期販売が全く無いとは言い切れないのだが。

G850は数量300本限定で、すでに予約完売となっている。ただ、単売ユニットMG850に関してはまだ予約が可能かもしれない。こちらもたしか300本限定だったはず。秋葉原では、コイズミ無線、キムラ無線、ヒノオーディオで予約を受け付けている。大阪方面ではたぶん河口無線でも予約をとっているんじゃないかな。わからんけど。早い者勝ち、予約したもの勝ちである。

純マグネシウムの未来に栄光あれ!!

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