その1.外付け化への経緯と箱の組み立て工程
オーディオみじんこ
わが情熱のスピーカークラフト
PA-2専用外付けネットワークボックスその1
外付け化への経緯と箱の組み立て工程
2005.6.22公開
 私のスピーカーは故長岡鉄雄先生設計のPA-2という自作スピーカーで、歯切れの良い爆裂音が特徴の大型ブックシェルフ型だ。PA-2の製作段階では当初、長岡先生の推奨通りVCT3.5スケアキャブタイヤケーブルを使用した。さらには、ターミナルの接点ロスを避けるため直出し仕様とした。これはこれで良い音を奏でてくれて悪くはなかったが、やはりスピーカーケーブル直出しというのは何かと不便だし、第一スピーカーケーブルの交換が出来ないのが面白くない。長岡先生推奨のVCTも悪くはないが、今となってはいささか古めかしい。

 時代に流されるというわけではないが、せっかく魅力的なスピーカーケーブルが多々あるのだから、ケーブル付け換えて楽しみたい。また、新型コイルやコンデンサーも試してみたい。現在のように、ネットワーク回路をスピーカー内部に取り付けてしまうと、カットオフ周波数を変更したい時などに、パーツを変更しようにも作業は容易ではない。また、せっかく吟味したコイルやコンデンサーが全く見えないと言うのはいささかつまらない。となると、いっそのことネットワークを外付けにし、ネットワークパーツも一新、スピーカーケーブルを高品質なものに交換し、ターミナルを用いて脱着式にしよう。

 これら一連の改造計画はすでに一年以上前から構想していた。ネットワークボックスの置き場はスピーカーの天板の上に重ね置きするか、スピーカースタンドを兼ねたものをスピーカーの下に配置することを考えていた。色々な考察の結果、ネットワークボックスはスピーカーの上に乗せる形に決定。現時点での、私のオーディオシステムにおけるスピーカーとラックの高さの差は14センチあり、この差分の高さのネットワークボックスを作り、スピーカーに重ねれば、ラックと同じ高さになり、見栄えがよい。ボックスの天板を開閉式にすれば、ボックスを動かすことなくネットワーク回路をいじくることができる。さらには、ネットワークボックスにスーパーツイーターを取り付けたかったので、ネットワークボックスはスピーカーの上に重ね置きするほうが都合が良いと判断した。

 ネットワークボックスの外寸は高さ14cm横幅400cm奥行き360cmとした。私のスピーカーの天板寸法は横幅奥行きともに40cmなので、ネットワークボックスも同じ寸法にした方が見栄えはいいのだが、幾つかの理由でネットワークボックスの奥行きを36cmにした。一つは、ボックスに搭載されているスーパーツイーターT825の位相を微調整するため。ネットワークボックス側がスピーカー本体より4cm短いので、ボックスを前後にプラスマイナス4cmの範囲でずらす余裕ができる。天板はTGメタルの鉛板を使うことにした。本来はオーディオ機器の天板に載せて防振効果を狙う。私はこの鉛板を2枚所有していたので、これを蓋に使うことにしたのだ。防振効果と重量付加を兼ね備えた良いアイデアと自負している。これらのことを盛り込みながら設計に入る。設計と板取は交互におこないながら、効率的な板取を煮詰めていく。今回の板取りは21ミリ厚シナ合板のサブロクサイズを使用する。試行錯誤を繰り返しながら板取図が完成。基本構成が決まれば作業の半分は終わったも同然。今回の板カットは新木場のもくもくに依頼した。

前置きが長くなったが、以下に実際の作業工程をご紹介しよう。

左上はPA-2のネットワーク回路。長岡先生が煮詰めに煮詰め抜いた末、導き出した設定である。現行ではコンデンサーにASC、コイルにトリテックのエポキシモールド中空コイルを採用している。これらは十分に高性能なはずだが、今回はさらなるネットワークパーツのグレードアップを図る。右上は製作途中のネットワークボックス。21mm厚シナ合板で構成されている。釘は使わず、木工ボンドのみの接合としている。
ほぼ組み上がったネットワークボックス。PA-2の上に仮置きしてみた。うん、思惑とおりPA-2の上にぴったり重なる。
これは付き板シート。たしかウォールナットだったと思う。東急ハンズで購入。裏面が粘着タイプになっている。色々な付き板があるが、ウォールナットは柔らかくて素材に馴染みやすい。また、反りが少なく、目が細かいのもいい。右上はシナ木口テープ。ファンシーロールテープという商品名。これも東急ハンズで購入。合板などの切り口に貼って、断面を隠すために用いる。シナを薄くカットしたもので、裏面が粘着式になっている。シナ木口テープには2通りあって、アイロン圧着加熱式のホットボンドタイプと、粘着テープが貼付けてあるタイプがある。どちらも一長一短。

アイロン圧着加熱式はテープを断面にあてがい、その上からアイロンでじんわりと押し付けながら断面に貼付けていく。ボンドがアイロンの熱で融解し、再度硬化することにより木口断面と接着させるのだ。接着力は強力。アイロン圧着式の利点は、アイロンを再度あてることによりやり直しがきくこと。ホットボンドはすぐに硬化するので、作業が迅速に続行できるというメリットがある。デメリットはアイロンを用意しなければいけないことと、ズレなく奇麗に接着するにはある程度経験が必要ということだ。それに、火傷の危険性もある。また、曲面や奥まったところにはアイロンをあてにくいという欠点もある。ただ、これらの難所への貼付けは、ヒートガンなどでボンドを融解させてから手で素早く押し付けるといった手法で解決できる。かなりの慣れが必要だが。

粘着テープタイプは保護テープを剥がして断面に貼付けるだけなので、貼付けが簡単だという利点がある。貼付け後は余分な部分をカッターでカットするだけ。ただし、粘着テープタイプは貼り直しが難しいというデメリットがある。粘着テープで貼り付いているだけなので、剥がせるには剥がせるのだが、貼り直しすると粘着力が低下する。それに粘着テープタイプ自体の接着力はもともと弱いので、モノが引っかかったりすると簡単に捲れてしまうというデメリットがある。粘着テープタイプの最大の欠点だ。これを回避するには、ゴム系ボンドとの併用がおすすめ。あらかじめ、木口にボンドを薄く塗布しておき、ボンドが乾かぬうちに木口テープを貼付けていく。ボンドが乾燥すると強靭になるので、捲れ上がることもない。ただし、ゴム系ボンドははみ出すと汚いし、厚く塗りすぎても薄くしすぎても良くない。木口に奇麗に塗るには意外と慣れが必要だ。それに合板の木口にゴム系ボンド塗ると思いのほか早く乾燥していくので、ボンドが乾き切らぬうちに木口テープを迅速に貼付けないといけない。はみ出しに関しては、透明タイプのボンドを使えばいいのだが、塗装をする場合、はみ出し部分が塗料を弾いてしまい、塗装にムラが出来てしまう。はみ出したボンドは奇麗に拭い取ってやることが必要だ。また、ゴム系ボンドは手に付くとべとべとして気持ち悪いし、その都度作業を中断してシンナーで手洗いしてやることになる。木口テープ処理も一筋縄ではいかないのだ。

そんなこんなで、木口テープ処理ひとつとっても、様々な要所がある。さて、今回は材料調達の都合からアイロン圧着加熱式を用いる。

これはすでに木口処理を終え、塗装段階に入ったところ。実は、ネットワークボックス設計当初からの変更を思い付いたので、ここでは修正を加えている様子を撮影している。映っているのはボックスの背面、つまりスピーカーターミナルを取り付ける部分。
ネットワークボックスの設計当初、アンプからネットワークボックスへの配線はシングルワイヤリングを想定していたので、入力用ターミナルの取り付け凹みを1カ所、それにスピーカー本体への出力ターミナルの取り付け凹みを2カ所、計3カ所の円形凹みを開けていた。しかしながら、アンプ側からのバイワイヤリングをやりたいという想いが生じたので、背面のくり抜きを変更せざるを得なくなった。すでに3カ所のくり抜きを設けてしまった後なので、いまさらもう1箇所同じような凹みを設けることはできない。そこで、3つの凹みを連結させ、1つの横長の凹みへと修正することにしたのだ。この凹みに入出力ターミナルをずらりと取り付けるのである。ま、わざわざターミナルの取り付けにこんなくり抜きを設けなくてもいいといえばいいのだが、ここらへんは私のデザイン上のこだわりである。3カ所のくり抜きを一つにするにはノミやノコギリやヤスリを駆使した。いったん組み立ててからの凹みの変更であるため、凹みの底面部分が荒々しくなってしまった。奥まっているところなので、ヤスリで馴らすにも限界がある。そこで前述の付き板シートを凹み底面部分に貼付けて平らにしてやるのだ。
お次はターミナル取り付け穴の貫通作業。入出力各2系統あるので、ターミナルは方チャンネルあたり8個装着することになる。定規でターミナル取り付け箇所を図りながらケガき、ドリルで穴を開ける。
これが使用するスピーカーターミナル。バインディングポストとも呼ばれる。ノーブランドだが、真鍮に金メッキされており、作りもしっかりしている。秋葉原のキムラ無線やコイズミ無線、小沼電気などで売られているのだが、小沼電気が一番安い。たしか\500/個だった。両チャンネル合わせ計16本使用することになる。このターミナルに決めたのは、作りがしっかりしていながら比較的安価であること、ターミナルポスト、つまり板部分へ貫通させる棒の部分、これが長いのが特徴。たしか貫通部分は長さ30mmほどあったはずで、21mm厚の板を十分に貫通させることができる。市販の多くのスピーカーターミナルは15mm厚以下の板の貫通を想定しており、21mmもの厚板を貫通できるターミナルは意外と少ない。あっても高価なのだ。
左上はターミナルを分解してみたところ。このようなパーツ構成になっている。右上はターミナルにテフロンテープを巻き付けたところ。貫通させるべきシナ合板は絶縁体のため、別にこういう絶縁処理をしないでもいいのだが、一応やってみた。実は取り付け段階になって、このテフロンテープが邪魔になり、結局のところ剥がしてしまったのだが。このような試行錯誤を繰り返しながら、自作スピーカーは出来上がっていくのである。
スピーカーターミナルを取り付けた状態。ずらりと並んだターミナルが壮観だ。さて、お次はその2.ネットワーク回路の取り付けだ。

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