オーディオみじんこ
わが情熱のスピーカークラフト
バーチカルツイントールボーイスピーカー
製作:2003年10月 制作費:\60,000 使用ユニット:FE207E×4+FT17H×2
寸法:H1450×W300×D300(本体H1100×W300×D300,台座H350×W300×D300)
 重量48kg/台(本体30kg/台 台座18kg/台) ユニット配置:バーチカルツイン
使用板材:15mmラワン合板タイプ2 1820×910/2枚 1820×600/1枚
久々のスピーカー工作だ。友人の依頼で作った大形フロア型スピーカーである。友人のリスニング条件に合わせた、みじんこのオリジナル設計。この友人には以前、依頼を受けて12cmフルレンジ(FE127E)+8cmフルレンジ(FE87E)のオリジナルスリムトールボーイを設計製作した。今回は「もっと大きなものを!」という要望を受けたのだ。設計と材料調達には1ヶ月以上を要したが、製作はたったの12時間!見ての通りバスレフ型で、ユニット配置はバーチカルツイン(仮想同軸)。ユニット構成は様々な案を検討したが、最終的にはフルレンジ+ツーパーツイーターという、自作ならではの常道手段を採用。よって、ネットワークはコンデンサー1個というシンプルなもの。音は・・・なかなかやるな!予想以上だ!
ユニットは20cm、充分な低音と繊細な高音を奏で、制作費は6万円以内、テレビの至近距離に設置、という条件があったため、ハイCPなFOSTEXの防磁ユニットを選定した。外見寸法は友人のAVシステムとリスニングポイントに合わせ、高さは145cm、幅は設置の限界により30cm、奥行きは板取とデザイン上の理由で30cmと決定。リスニングポイントが異常に高いのは、友人がベッドに腰掛けた時、耳の高さが120cmほどになるため。さらには、床に座って聴く場合を想定し、リスニングポイントを変更できるようにした。つまり、スピーカーを本体と台座に分離して、座った時には台座を取り外して、スピーカー本体を直置きしてやる。この場合、リスニングポイントが高さ80〜90cmとなるように設計した。さらには、板取に無駄が無く、理想的なエンクロージュアー設計、予算内で可能な限りの高音質パーツを吟味する、というみじんこのポリシーを盛り込んだ。
カットは東急ハンズ渋谷店に依頼。カットされた板材は厳重に梱包されて到着。さて、戦闘開始だ。奥の段ボール箱にはFE207Eが4つ入っている。FE207Eはヨドバシカメラ新宿本店で注文。\7,580/ヶ。購入時に付いたヨドバシポイントでスピーカーケーブルも割安購入。ヨドバシポイントはありがたいな〜。
側面バッフルに、補強板及び天板底板を接着しているところ。今回は作業を迅速に進めるため、ハタガネを用意した。ハタガネは東急ハンズ渋谷店で購入。60cm尺\1,650/本。近隣住民への配慮と、外見を綺麗に見せるため、釘打ちは一切行なっていない。よって、板の接合は木工ボンドのハタガネ圧着のみ。
台座の加工。まずは側板と天板底板を接着。台座には後ほどコンクリートを流し込む。なお、使用した木工用ボンドはコニシのCH-1000という即乾性の強力ボンド。外見や使い勝手は普通の木工ボンドと変わらないが、かなり強力だ。購入は東急ハンズ渋谷店。ただし、CH-1000は特殊なボンドなので在庫は無く、コニシから取り寄せてもらった。バルク入りなので使いにくく、瓶に小分けして使っている。CH-1000は20リットルのバルク品しかないため、一般には勧められない。 フロントバッフルの加工。まずはダクトを木工ボンドで取り付ける。ダクトは内径125mm外径132mmの厚紙ボイド管で、かなり頑丈である。ボイド管は東急ハンズで購入。1mもので1本\1,800。ダクトの断面積は122平方cm、長さは18cm、fdは正確に計算していないが、40Hzほどと推定される。20cm×2発のユニット構成には120平方cm程度のダクトが妥当だろう。後ろに見えるのは台座で、天板と底板と側板をハタガネで圧着固定しているところ。
使用した大形の真鍮製金メッキスピーカーターミナル。ノーブランド品。コイズミ無線で購入。\1,100/ペア。バナナプラグ対応。内部配線はハンダ接着式。15mm厚の板材を貫通するにはちょうど良い。 リアバッフルにスピーカーターミナルを取り付ける。リアバッフルにはあらかじめφ50mmの丸穴を開けておき、フロントバッフルのユニット取り付け部の抜き板を裏から貼付けておく。ターミナル貫通穴は7mm。
台座のリアバッフルに穴を開ける。これはホールソーと呼ばれる工具。φ35mmの丸穴を開けることができる。
ホールソーで開けた穴。簡単綺麗に開けられた。この穴から重量付加のためのコンクリートを流し込むのだ。
接着面にボンドを塗布した上、ハタガネでリアバッフルを圧着しているところ。作業中に雨が降ってきたが、雨避けをしながら作業続行。いま思えばフロントバッフルを先に付けた方が良かった。作業開始から4時間でここまでできた。やはりハタガネの威力は凄い。 フロントバッフルの取付け。ツイーターが取り付けられる上下部分に補強板をかましてある。こうすることで、フロントバッフルの補強、並びに板のたわみを補正できる。かなり大きく長いスピーカーなので、フロントバッフルがずれないように注意する。
エンクロージュア(スピーカーボックスのこと)ができあがったところで、内部配線を配線する。ネットワークはツイーターにコンデンサー1個とシンプルなため、内部配線作業はとても簡単。ターミナルに3本のケーブルを束ねてハンダ付けするだけ。内部配線はオルトフォンのスピーカーケーブルSPK-3100を使用。外部シースは剥がしている。 ツイーターの背面にコンデンサーをブチルゴムで貼付ける。念のためテフロンテープで補強。さらに、内部配線をハンダ付け。コンデンサーはトリテック扱いのI.T.Electronics製QS3.30μF。コイズミ無線にて\680/ヶで購入。QSは比較的安価で良質なコンデンサーだ。3.30μFを使うことで、ツイーターのハイパスは6kHzの6dB/octとなる。
FE207Eに内部配線を取り付ける。内部配線のSPK-3100は1.25スケアと細いので、ユニットへのハンダ付け作業がとてもやりやすい。ハンダはKR-19SHRMA LFM38という無鉛銅入り銀ハンダを使用。オヤイデ電気村山専務お勧めの銀ハンダだ。5m巻き\1,000。 内部配線はこのようにツイストさせてある。ツイストさせることで導体から発せられる磁力と輻射ノイズをある程度キャンセルすることができる。ま、実際にどれほどの効果があるかは分からないが、ツイストさせた方が内部配線がシンプルにまとまる。
ハンダ付けが終わったところ。ここまでの作業時間は8時間。この後、ユニットを取り付け、さらにダクトからコンクリートを流し込んで作業完了。スピーカー本体は重量20kgなのだが、さらにコンクリートを流し込んで30kgとした。FE207EのMo(振動板重量)は15gなので、FE207E×2発でMoは30gとなる。スピーカー重量はMoの1,000倍以上が理想なので、コンクリート流し込みで理想的な重量としたのだ。なお、吸音材は一切使用していない。予算的な面もあるのだが、補強板を張り巡らせてあるので、定在波が起きにくいと考えたからである。ボンつけば、後から吸音材を入れればよい。コンクリートを流し込み、作業は全て完了!締めて12時間! 一晩おいたらコンクリートも固まっていた。突貫工事であるが、妥協はしていない。大形スピーカーの割には組み立て作業が短時間で済んだのは、ハタガネの効用が大きい。他には、ネットワークがシンプルなため内部配線作業が楽だったのと、エンクロージュア構造が単純だったことも起因している。さらには、依頼者の要望により、バッフルの研摩と塗装をしなかったことも大きい。バッフルの仕上げ作業は大変に労力を要するのだ。早速試聴してみたが、FEシリーズらしいレスポンスのよさが特筆。ツイーターも効果的に働いており、音場感抜群。仮想同軸構造ゆえか定位もぴったり決まる。フルレンジゆえ、低音の量感は少ないが、不足感はない。大成功!
台座を外せば高さ110cmのスピーカーとなる。この方が、低域の量感が増す。床に座り込むと、ちょうどツイーターが耳の高さにくる。スピーカー本体の底にはコンクリートを充填してあるので、ぐらつきがなく、とても安定している。 台座は素組状態で5kgだが、コンクリートを流し込んで18kgとした。組み立て後に、穴からコンクリートを流し込んだ。安定感抜群。これで、片チャンネル18kg+30kg。台座にはまだ空間があるので、必要ならば砂利などを追加してやれば良い。
スピーカーターミナルのアップ。ノーブランドながら、使いやすくしっかりしている。 ダクトのアップ。φ125と大きいが、20cmユニット2発だとこのくらいで丁度良い。
台座を使用した場合、ツイーターFT17Hは110cm弱のところにくる。友人は高さ40cmのベッドに腰掛けて聴くので、丁度良い。 台座を外せばツイーターは75cmあたりの高さになる。なお、FT17Hはオーディオユニオン新宿店にて中古ペア\3,600で入手。
完成したスピーカーと記念撮影。みじんこの身長は166cmなので、スピーカーの大きさが良くわかるだろう。この後、数時間試聴して出来の良さを大いに堪能した。夕方には梱包し、ヤマト便を頼んで友人宛に送った。さらば、我が愛しのスピーカーよ。友人に可愛がってもらえよ。 フォステクスの防磁型フルレンジユニットFE207E。外見上はFE207とほとんど見分けが付かない。FEシリーズは全てEバージョンとなり、性能の底上げがなされたが、FE206EはFE204に比べてオーバーダンピング気味になったらしい。よって、このFE207Eの方がFE206Eよりバスレフ向き。
オーディオみじんこへ戻る
わが情熱のスピーカークラフトへ戻る