オーディオみじんこ
わが情熱のスピーカークラフト
スリムトールボーイスピーカー
&センタースピーカー&オーディオラック

2004.7.7板カット図を新規追加!
上のイラストにリンクしています!
製作:2003年6月 制作費:\50,000  使用板材:15mmラワン合板タイプ2 (1820×910)×6枚
【フロントスピーカー概要】

    寸法:H1,150×W150×D150
    ユニット:(FE127E×1+FE87E×1)
    ユニット結線:パラレル
    重量:10kg/台
    内部構造:ダブルバスレフ
    インピーダンス:4Ω

【センタースピーカー概要】

    寸法:H600×W120×D120
    ユニット:(FE87E×2)×1
    ユニット結線:パラレル
    重量:5kg
    内部構造:バスレフ
    インピーダンス:4Ω

ラック寸法:(H260×W540×D450)×4組 (後日2組追加)
 このスピーカーとオーディオラックは、私の友人から依頼されて製作したものである。私のオーディオ病が友人に感染したのだ。そして、彼を連れてフォステクスのスピーカー試聴会に足を運んだりしている内に、彼自身も自作スピーカーを鳴らしたいという気持ちになってきた。彼には以前、私の5.1chスピーカーシステム「ウラヌス」を譲ったのだが、それでは飽き足らなくなっていたようだ。しかしながら、彼は木工工作の経験がないため、私に依頼してきたという次第。ついでに、オーディオラックも製作して欲しいとの要望もあり、両方同時に製作する事となった。

 彼の要望によると、予算は5万円で、設置の都合から幅は15センチスリムなトールボーイ型。さらに、センタースピーカーも作って欲しいとのこと。ラックは十分な大きさで、収納コンポの数から計算して箱数は4箱。積み上げたラック上に32インチのワイドテレビを設置しながらも容易に移動させたいとのことで、ラック下にキャスターを付けて移動可能とする。試行錯誤の結果、オリジナル設計のフルレンジ2発使いのダブルバスレフスピーカーを製作することにした。センタースピーカーもフルレンジ2発使いとした。ラックは長岡式積み上げラックとし、板厚は横板15mm縦板30mm とした。製作期間は1週間ほど、正味の製作時間は20時間ほどかかった。

 完成後に早速試聴したところ、FEらしいはつらつとした元気の良い音で、まずまずの成功。ユニットがまだ熟れていないせいか、やや詰まったところもあるが、これはいずれ改善されるはず。マトリックス接続によるサラウンド効果もそこそこ発揮している。小口径の極小バッフルゆえに、音場の広がりがスムーズである。低音再生には限界を感じるが、この口径にしては十分に健闘しており、狭い部屋ではそれなりの音圧が得られる。このスピーカーとラックは完成後、友人に引き渡し、現在も友人宅で元気に活躍中だ。それでは、これらの製作過程を以下にご紹介しよう。

-スリムトールボーイフロントスピーカーの製作-
私のオリジナル設計によるスリムなスピーカーシステムである。このスピーカーはマトリックススピーカーとして設計した。上部ユニットFE87Eがマトリックス接続となっている。これにより、2本のスピーカーでサラウンド効果が実現できる。FE87Eは天井面を向いており、このユニットから右左の差信号が上方にまき散らされてサラウンド効果を発揮するのだ。フロントバッフル面のユニットは12cm口径のFE127Eでまかなう。寸法制限が15cmだったので、これに見合う最大口径のユニットとなると12cmが限界なのだ。依頼人が試聴位置であるベッドに腰掛けた時、耳の高さが100cmちょうどになるため、FE127Eのセンターコーンが100cmの位置になるよう設計してある。FE127Eの上面のFE87E、フロント面のFE127Eともにネットワーク無しのフルレンジとして動作する。エンクロージュアの構造はダブルバスレフ型とし、小さなユニットで最大限の低音増強効果を狙っている。内部容量は何リットルか忘れた。仕上げ塗装は一切無し。制作時間の短縮と、コスト低減のためである。
届けられたカット済み板材である。カットは東急ハンズ新宿店に依頼。板代は高いが、板材が豊富で、通勤途中に立ち寄れるという利点から、いつもハンズを利用している。配送料は都内均一の\300。昔は、1万円以上の商品は配送料無料だったのだが、さすがにサービスし過ぎと気付いたのだろう。まぁ\300くらいなら安いもんだ。それにしても板の量が多い。さぁ、作りますか! まずは側面板に内部の仕切り板を貼付けていく。ついでにバスレフダクトも接着する。ダクトは厚紙で出来た直径7cmのボイド管。今回は釘を一切使わず、木工ボンドによる接着のみとした。近所からのクレームが来る事を恐れたため。木工ボンドのみでも、ハタガネを使用して圧着すれば、強固に接着できるからだ。なお、作業場はキッチンである。いつか専用の工作室が欲しいなぁ。
両側面を張り合わせ、目の字型になったエンクロージュア。ここへ、フロントバッフルを接着する。接合部分へ十分にボンドを塗ってから、慎重に張り合わせる。乾かない内に接合位置を正し、ハタガネで固定する。「木工ボンドは乾きが遅いから」と悠長にしていると、乾いて動かなくなる。ボンド接着はテンポ良くおこなおう。 バスレフの第二室前面に吸音材を貼付ける。この吸音材はサーモウールという羊の毛で、ニュージーランド産である。グラスファイバーのようにチクチク刺さらないので、作業性が良い。また、自然素材のため音調も人工的にならないとか。江川先生の「浮雲」もサーモウールで出来ている。サーモウールは秋葉原のコイズミ無線で入手可。
重量付加と防振効果を図るため、エンクロージュア下部の小部屋に砂を入れる。砂同士が擦れ合うことにより、防振効果が得られるのだ。この砂は大磯砂。東急ハンズのペットコーナーで入手。幾らだったか忘れたが、けっこう高くついたと憶えている。熱帯魚屋に行けば、安く入手できる。 大磯砂をいっぱいに詰め込む。このスピーカーは極端にスリムなトールボーイなので、こうやってエンクロージュア下部を重くしないと、安定性が悪いのだ。この大磯砂による重量付加は約1kg/台ほど。防振用の砂には、ジルコンサンドがベストなのだが、予算の都合で大磯砂とした。
リアバッフルにターミナルを取り付け、さらに内部配線をハンダ付けする。ターミナルはトリテック扱いの小型ターミナルである。ペア\950。真鍮製で金メッキがしてある。コイズミ無線で入手可。ターミナルを購入する際、板厚を考慮して、十分な長さを有したものを選ぶ事が重要である。ターミナルを買ったはいいものの、いざ取り付けようとすると板が厚すぎてターミナルが板を貫通できなかったなんて悲しいでしょ。また、ターミナルを使用するスピーカーの場合、ターミナルへの内部配線取り付けはリアバッフル接合前におこなっておくこと。エンクロージュアの組み立て後だと、スピーカーユニット取り付け穴から手を入れてハンダ付け作業をしなければならず、とてもやりにくいことになる。なお、内部配線をハンダ箇所が露出していると時間経過と共に酸化してしまうので、熱収縮チューブで被服している。(白い部分がそれ) リアバッフルを木工ボンドで接着し、ハタガネで固定する。このように長い板材同士の接着は、歪みや反りが出やすいので、ハタガネで固定した後も、時々様子を見てやる。というのも、板が木工ボンドの水分を吸って、水分を吸った側が膨張し、時間経過とともに反り返ってくるのである。小さな板ならまだしも、このくらい長い板を接着する場合、釘もハタガネも重しも使わないと、数ミリ単位の反り返りが生じる。180cmクラスの共鳴管スピーカーならセンチ単位で反りが生じる。積層合板は反らないだろうと思ったら、さにあらず。MDFのような木目のない特殊合板でも反るのである。だから、できるだけ多くのハタガネでがっちり固定してやり、反りによるズレが生じていないか時々チェックしよう。なお、ハタガネとスピーカーとの接触箇所には、板の切れ端などを介在させてやる。素のままでハタガネを使うと、スピーカーにハタガネの痕が残るからだ。
エンクロージュアが完成した。板ズレもほとんど皆無。さぁ、ここまで来るとあと一息。ユニットと内部配線をハンダ付けし、ユニットをエンクロージュアに固定すれば出来上がりだ。なお、ユニット取り付けネジのねじ込み位置は、ユニット取付前にユニットを嵌め込んで正確に印を打っておくのが良い。できれば、錐でザグリを入れておく。この行程をやらずにいきなりユニットをネジ留めした場合、ネジ止め作業中にユニットがずれてしまい、出来上がってみたらユニットが斜に付いていた、なんてことになりかねないからだ。特に、FE127のような真円でないフレームを有するユニットの場合、ずれると目立つのである。 ユニットを取り付けて完成!さて、このスピーカーは前述の通りマトリックススピーカーである。三角形状に配置された3本のターミナルのうち、下の2本はアンプからのスピーカーケーブルを接続する。上角のターミナルはマトリックス用で、左右のスピーカーの上角にあるターミナル同士をスピーカーケーブルで結線する。マトリックス接続とは、2chであるステレオ信号から、左右の差信号を取り出して、スピーカーユニットから再生し、サラウンド効果を演出する接続方法のこと。長岡鉄男先生が実践されていたことで有名。マトリックススピーカーについて詳しく知りたい人は長岡鉄男先生の著作物を読むべし。
-センタースピーカーの製作-

友人は映画好きなので、DVDの映像ディスクを5.1ch再生したいそうである。そこで、センタースピーカーが欲しいとの依頼を受け、このスピーカーを製作した。使用ユニットはFE87Eを2本。

まず、リアバッフルにターミナルとバスレフダクトを取り付ける。ダクトはぐらつかないように、シリコンで強固に固めてある。 前後バッフル以外の板を接着し、次に前後バッフルを接着し、ハタガネで固定。小型なので作業は楽だ。
内部配線は全長の中ごろの被服を剥いである。この被服を剥いだ部分と1つ目のユニットをハンダ付けする。さらに、配線末端を2つ目のユニットにハンダ付けする。こうすると、1つ目のユニットから2つ目のユニットへケーブルの切断無しに結線される事になり、2つ目のユニットの音質劣化が防げる。 ユニットを固定して、完成!エンクロージュア方式はバスレフ型。1台しか製作していないので、ステレオ再生の試聴はできなかったが、まずまずの音だ。当然ながら、このスピーカーは5ch再生で威力を発揮する。このスピーカーも製作後すぐに友人に引き渡し、現在は友人のワイドテレビの上に置かれている。
-オーディオラックの製作-
これも上述のスピーカーと同時に製作したものである。製作途中の写真を撮り忘れたので、上記は完成後の写真である。板厚は横板15mm、縦板30mm。これは木製オーディオラックとして最低限必要な板厚である。写真では一体型に見えるが、実は4組の箱を重ねている。ラック最下段には四隅にキャスターを取り付けた15mm板の上にラックを乗せ、ラック最上段の上には15mm厚の板を乗せているので、横板も実質30mm厚となっている。個々の箱と板は接着していないので、組み換えや増設が容易。このラックもスピーカーと同様に無塗装。上の状態でのラック全体の大きさは横幅1,080mm,tate 600mm、奥行き450mm。箱の内寸は横幅510mm、高さ230mm、奥行き450mmあり、通常のコンポーネントには十分な大きさを確保。このラックも友人宅で活躍中。
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