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オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオアクセサリー
自作電源ケーブル05夏コレクション
オーディオ用切り売りケーブル編
2005.11.08公開

オーディオ用として設計されている電源ケーブルは、導体の純度や芯線の構造、絶縁材や充填材の素材などに、高音質化へ配慮した設計がなされている。ここでは、これらオーディオ専用設計の切り売り電源ケーブルを素材とした自作電源ケーブルの中から、見てくれのよさそうな2本をご紹介する。自作の参考にしていただければ幸いです。

No.102 Imperial Red

ACケーブル:アクロリンク6N-P4020|| ACプラグ:松下WF5018 IECコネクター:シェルター4781

こちらはアクロリンク6N-P4020||を用いた電源ケーブル。衝撃吸収チューブ“カブセール”を被せているためケーブル径が太めに仕上がっている。ケーブル外径は約30mm。ケーブル長は約1.2m。以前、6N-P4020||をダブル使用した電源ケーブルを製作したことがあるが、今回はそれをばらして6N-P4020||1本のみで新たに製作しなおしてみた。6N-P4020||自体は極めて固有音の少ないケーブル。ケーブルによる色付けを望まない人にはうってつけのケーブルだ。活かすも殺すも使い方次第。
プラグとコネクターのアップ。ACプラグには松下WF5018、IECコネクターにはシェルター4781を使用。いずれも、オーディオ用として設計されたプラグコネクターではないものの、その素性がたまたまオーディオ向きだったこともあって、オーディオケーブルメーカーの市販ケーブルに多用されてきた端末だ。
プラグ/コネクターともに、全体をすっぽりとニシチューブで被服している。こうすることで、プラグコネクターとケーブルとの接合部分の耐久性が飛躍的に向上する。電源ケーブルの経年劣化には、電極の酸化が思い浮かぶが、ケーブルとプラグコネクターの接合部分が機械的に損壊することが意外と多いのだ。市販の電源ケーブルの中古品を入手する際は、この接合部分の状態を良く観察することが大切だ。使い回していると、けっこう傷みが激しかったりする。今回は衝撃吸収チューブを被せている事もあり、その端末部分とプラグコネクターをがっちり接合させる意味合いもある。
この電源ケーブルには“Imperial Red”と名付けた。これはカクテルの名称。最外装にはSFチューブを被せているが、その下、つまりSFチューブと衝撃吸収チューブの間には銅平網組シールドメッシュチューブを被せている。銅平網組メッシュチューブ自体は銀色なのだが、私はそれを金色に着色してみた。だから、SFチューブの隙間からは金色のシールドチューブが透けて見えて、なかなか美しい。見た目の高級感を狙っただけで、音質面には関係ない。もっとも、この銅平網組メッシュチューブ自体には高周波ノイズの遮断効果がある。銅平網組メッシュチューブ自体の重量による制振効果も期待出来る。
Imperial Redの製作過程を少しご紹介。上は衝撃吸収チューブを被せたところ。ケーブルにコネクターを固定してから、衝撃吸収チューブを通していく。
さらに銅平網組シールドメッシュチューブを被せたところ。シールドメッシュチューブ自体は、淡い金色、つまりシャンパンゴールド色に着色している。衝撃吸収チューブは伸縮性があるので、プラグを取り付けた後、衝撃吸収チューブを引き延ばせば、ケーブル全体にきちんと衝撃吸収チューブを覆いかぶせる事が出来る。今回はプラグ側の根元付近に鉛テープを巻き付けてみた。これはニシチューブを被せる際の段差を埋める役割が大きい。プラグとコネクターにニシチューブを被せれば完成となる。実際の製作にはおよそ3時間ほどかかっている。

製作後、主にプリアンプへの電源供給に使用している。癖がないため、プリ系での使用が好適と考えたからだ。素の状態での6N-P4020||と極端な差異はない。とても素直な傾向だ。あえて言うなら、高域のとんがりが抑えられ、低域よりにわずかにシフトし、さらには奥行き感が増した気がする。良くも悪くも余分な雑味を奇麗さっぱり濾過したような感じかな。ケーブル自体への重量付加と機械的振動の排除対策、シールド付加などの複合効果か。ケーブルがやや短いのだが、ケーブル自体は柔らかいので取り回しは良好。

No.103 Quattro

ACケーブル:オヤイデ電気2by2 ACプラグ:オヤイデ電気P-029 IECコネクター:オヤイデ電気C-029

9月に製作した私の最新作である。この電源ケーブルはオーディオみじんこをご愛読いただいている大阪府のH氏からの依頼で製作。オヤイデ電気のフェラーリレッドケースを装着して欲しいということと、予算的にはほどほどにということだけが指定され、ケーブルの選定は私に一任していただけることになった。もちろん、最優先は高音質であるため、予算的と絡み合わせて検討した末、オヤイデ電気の切り売り電源ケーブル2by2を用いる事とした。これはノンシールドで細身の外形寸法、高純度OFC導体で、芯線はスターカッド構成。導体断面積は意外と太く、たぶん4スケア近くあると思う。素材や構造は地味で、シースの色は灰色で、豪華でもなんでもない。ケーブル自体はかなり柔らかく、地味な外見と相まって、こんなんで良い音するのかいな?と疑問に思ったものだ。実際、切り売り電源ケーブルを一斉比較試聴した際、2by2はあまりパッとしなかった。その後、2by2はケーブルの被服処理の実験素材として使用。仕立て上げた極太電源ケーブルをオーディオ仲間のガッツ邸に持ち込んでエージングしてもらった。エージング後の2by2は大化けした。ケーブル組み立て直後の2by2とはまるで別物に変化していたのだ。高域の延びが素直になり、ボーカルの艶も出てきた。エージング恐るべしである。そんなわけで、2by2の素性の良さ、そして実売2,000円代という価格の手頃さ、ケーブルが柔軟で取り回しがしやすいことなど、これらを鑑みて、低価格切り売りケーブルとしておすすめの品なのである。
左上は材料一式。ケーブル長さはH氏の要望により2mとした。右はC-029/P-029、おまけのフェラーリレッドケース。プラグ/コネクター/被服処理材を合わせ、材料代は約13,000円ほど。

ケーブル オヤイデ電気ストレートライン2by2 2m \4,500
プラグ オヤイデ電気 P-029 \3,600
コネクター オヤイデ電気 C-029 \3,600
消費税 \585
税込み\12,285(以上、オヤイデ電気で購入分。)

銅平網組シールドメッシュ 2m 税込み\567(タイガー無線で購入分)

赤メッシュチューブ 2.5m分 \0(私の手持ち在庫から供出)

フェラーリレッドケースの内部。内部に見える銀色の棒はケーブル固定クランパの連結ネジ。この2本のネジを締め上げていくと、黒い固定クランパが降りてきて、とケースとの隙間が狭まっていく。これでケーブルが圧着固定されるのだ。P-029/C-029標準の黒ケースと構造は全く同じ。今回は、依頼者のH氏がP-0XX/C-0XXシリーズにおまけで付いてくるフェラーリレッドケースに惚れられて、同ケースを装着したケーブル製作を依頼されてきたのだ。フェラーリレッドのケースはオヤイデ電気での直接購入品にのみ、数量限定で添付されてくる。現時点でまだこの特別カラーのケースがあるのかどうかは不明。気になる方はオヤイデ電気のホームページ等で確認してほしい。P-029/C-029は無メッキの真鍮電極。P-0XX/C-0XXシリーズでは最も安価なプラグ/コネクターになるが、他のP-0XX/C-0XXとはメッキの違いのみで、構造は全く同じ。

右上はケース内部のケーブル固定クランパーの緩衝部品。大口径のケーブルを接続する際は、この緩衝部品を外してやる。今回は、ケーブルが細身のため、緩衝部品を用いる。ただ、緩衝部品をそのまま用いると、ケーブルがプラグコネクターのケーブル引き出し口の中心からずれて引き出されてしまう。これを解消するために、緩衝部品の一部をやすりで削ってやる。右写真の右側の部品がやすりで削った後の状態。こうすることで、ケーブル引き出し口の中心にケーブルが位置した状態でケーブルが固定できる。実際にケーブルを固定してみたら、中心からちょっとずれてしまったが。文章で表現するのが難しいのだが、これはマリンコ系/オヤイデP-0XX/C-0XXシリーズ、フルテックFI-25系に共通する構造上の問題である。ま、見栄えに影響するだけで、音質にはなんら影響ないことなので、問題というほどのことでもないのだが。

プラグの本体部分にテフロンテープを巻き付ける。こうすると、ケースとの密着度が増して具合がいい。右上は端末処理した2by2。この作例では、導体をハンダで固めずに、プラグコネクター電極へそのまま固定した。太くて撚り線数の多い導体だと、ばらけないようにハンダで固めた方が作業性が良くなる。なお、導体にはセッテンプロを塗布して、導通向上と酸化防止を図っている。
フェラーリレッドのケースに合わせ、ケーブルの最外装には赤メッシュを被せてみた。この赤メッシュはデンカエレクトロン製。同社ホームページであらかじめネット注文し、同社に直接訪問して購入したものだ。デンカは秋葉原から歩いて15分ほどのところにある。赤メッシュの隙間から、銀色のシールドチューブが垣間見えてキラキラ光る。シールド効果と見た目を両立させた演出である。2by2自体はノンシールド線であるが、スターカッド構造を有しているので、ケーブル自体にノイズキャンセル効果がある。スターカッド構造とは、ホット/コールドを2芯づつ、計4芯で構成される。4本の芯線を四角形の角にあたる配置で並べるのだが、その際、ホット2芯/コールド2芯をそれぞれ対角線上に配置、この組み合わせのまま芯線をねじることで構成される芯線配置構造を指す。この構造にしてやると、ホット線コールド線それぞれから発せられる電磁波ノイズが互いに打ち消し合うのである。このスターカッド構造のおかげで、2by2はシールドチューブを被せなくてもS/Nが良好なのだ。ただ、ノンシールドと知るとシールドを掛けたくなるのがケーブル自作派の人情というものである。赤メッシュの下層には銅平網組シールドチューブ(TBC)を被せている。
完成した電源ケーブルの端末。フェラーリレッドのケースが美しい。このプラグケースをオヤイデの社員さんから初めて見せられた時には、あまりに奇抜な色彩故に、これを商品化するのはどうなのかなぁ〜、と思ったものだが、こうやって組み立ててみるとなかなかいいんじゃないですか。
こちらはP-029/C-029の挿し込み部分のアップ。ここで、電源プラグ/コネクターの極性表示の見方をおさらいしてみよう。まず、左写真のプラグから。よーく見てみると黒い樹脂部分にWという刻印を見つける事が出来る。この側にある電極側がコールド電極になる。WはWhiteの略、つまり、電気配線の白い絶縁材=コールド配線を示している。郵便マーク(〒)に1本横棒を足したような刻印も見つける事が出来る。これはアースを表す刻印。つまり、左写真においてU字型に見える電極がアース電極である。何も刻印されていない電極がホット電極となる。余談だが、プラグの黒い樹脂の上の方には“NICOON”の刻印が確認出来る。これは、このプラグの製造元がニコオン株式会社であることを表している。ニコオンは電源コネクターの製造で有名な国内メーカーである。私はオヤイデ電気の村山社長から、P-0XX/C-0XXシリーズの開発段階において、苦労話を聞かされていた。P-0XX/C-0XXシリーズはオヤイデ電気の完全オリジナル金型による電源プラグ/コネクター。その開発段階で苦慮されたのが、パーツの精度を出す事だったらしい。開発過程においてとあるプラグ専業メーカーに試作品を依頼したが、同社の要求する精度に達せず、開発が振り出しに戻るなど相当苦労されていた。結果、同社の要求する精度を実現できたのがニコオンだったのだ。

右写真はコネクターのアップ。Nと刻印されている側がコールド電極である。NとはNeutral(ニュートラル)の略。コールド電極の表し方には、このようにWで表す場合とNで表す場合の2種類がある。どちらかに統一すればいいのにと思うのだが、現実にはこの2種類が混在して使用されるのが慣例のようである。

出来上がった電源ケーブルにはNo.103“Quattro”という愛称を与えた。依頼者が希望されたネーミングである。一応、私のところでも当然ながら試聴はおこなっており、目標とする音質傾向を引き出せていると感じた。ただ、この2by2自体はエージングに数十時間を要するので、私のところでの評価は評価にならないと思うので割愛。依頼者H氏はかなりのオーディオマニアで、私が憧れていた機器を幾台も所有されている。CDプレーヤーはソニーCDP-X5000、同CDP-MS1、STUDERのA725、REGAのPLANET(赤モデル)と4台も所有されている強者だ。今回の電源ケーブルはREGAのPLANETに接続されるとのこと。赤いCDPに赤いケーブル、うーん趣味の世界ですな。
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