オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオアクセサリー
プレートレス8個口電源ボックス
Deimos/Phobosの製作
2005.2.17新規更新!

ここでは電源ボックスDeimosとPhobosを紹介する。自作電源ボックスの項に追加するとページが長くなり過ぎるので、こちらに別項を設けた。製作台数は2台。ずいぶん前に完成していたのだが、ホームページにアップするのが遅くなったのだ。DeimosとPhobosの特徴はプレートレス8個口仕様となっていること。

この電源ボックスに用いられている木箱は本来、スピーカーPA-2の外付けネットワークボックスとして製作したもの。材質はシナアピトンで、板材カットはマキゾウへPA-2のカット依頼をしたときに一緒にやってもらった。カット材を元に木箱を組み立てたものの、実際にはネットワークボックスとして使うことはなかった。PA-2の外付けネットワークボックスは別途製作したためだ。良い板材を使って組み立てたこの木箱をそのままにしておくのはもったいない。あれこれ考えた末、電源ボックスに仕立てることにした。そのような経緯から出来上がったのがこの電源ボックスだ。木箱にコンセントをレイアウトしてみるとちょうど4個収まった。次にIECインレットをどこに取り付けるか。木箱の側面にIECインレットの取り付け穴を開けるのはいまさら難しい。コンセントを4個並べても、木箱の中には空間的余裕がある。よし、こうなったらインレットもケース内部に上面方向に向けて取り付けてしまおう。それも木箱の中心に。細かいことだが、木箱の中心にインレットを配置することで4個のコンセントへの内部配線は全て同距離になる。このことが何に有利かというと、内部配線の長さによる音質変異がないということになり、各コンセントによる音質差は事実上無視できる。これはコンセントの比較試聴用電源ボックスとして最適なのではないか、ふとそう閃いた。

ちなみに、インレットをボックスの中心に上向き配置している電源ボックスには、オーディオテクニカのAT-PT2002がある。では実際に、内部配線のわずかな長さの違いでコンセントの音質に差が出るかどうか。私は厳密な実験をおこなったわけではないので分からないのだが、某オーディオアクセサリーメーカーの社長は自社製6個口電源ボックスにおいて、インレットから一番遠いコンセントは音質がいまいちだとおっしゃられていた。ま、この内部配線の長さの違いに関しては、それほど神経質になる必要は無いと思う。私も今回の電源ボックスはパーツのレイアウトの都合上、たまたまインレットから等距離配線になっただけで、他の自作電源ボックスのほとんどはコンセント毎に内部配線の長さに違いが生じている。内部配線の長さの差を気にしていたら電源ボックスの自作はできない。

ただ、インレットの上向き設置は使用する立場からするとやや使い難い面がある。インレットに差し込む電源ケーブルは大きく湾曲させなければならず、ケーブルとインレットの接合部分に負担が掛かることが予想されるためだ。ま、これは電源ボックスから機器へつながる電源ケーブルにも同じことが言えるので、あまり神経質になっても仕方が無い。ちなみに、インレットを上向き配置している電源ボックスにはオーディオリプラスのSAA-6SZやORBの HT-4G、PSオーディオのJuice Bar、TMDのDIVA-TAPなどがある。

各パーツのレイアウトと内部構造を煮詰めていく。コンセントとインレットを取り付けるための台座には21mm厚シナアピトンを3枚重ねで使う。これは木箱の蓋にしていた板材だ。箱を流用する以上、蓋だけ残っても仕方ないし、アピトン材だから捨てるのももったいない。それに21mm材を3枚重ねにするとインレットの台座としてちょうど具合が良い。この台座はコンセントの片側を固定する台座も兼ねている。板材のコグチ(切り口の断面)は、見た目を良くするためにシナテープを貼り付けて隠してしまう。これで、ケース部分は全てシナアピトンで構成されることになった。シナアピトンは言わずと知れた強力な合板。一般的なシナ合板より密度が高く、フィンランドバーチ材と並び最高品質のスピーカーボックスの組み立て材といえる。
台座を木箱に押し込んで固定。固定には木工ボンドを使用。ボンドが乾いたら、台座部分にはパーツの固定ネジ穴も開けておく。フィニッシュペーパーで磨いた後、オイルステインなどで着色。これにてケースは完成。なお、この電源ボックスは製作構想の時点からすでにプレートを取りつけない事にしていた。これに見合うプレートとなると自作せざるを得ない。そうなるとプレート設計の手間とお金が掛かる。別の理由としては、コンセントプレートを取り付けなくても安全上危険が少ないと考えられたためだ。元になった木箱は内部の深さがある。底の深いケースに各パーツを低く取り付けてやれば、コンセント側面の導通部分は箱の底の方に位置することになる。このようにしてやれば、誤って導通部分に触れる危険性が少なくなり、あえてプレートを取り付ける必要も無い。それと、プレート自体が必要悪という説もある。この説が正しければ、プレートレスはプレート有りより音質的に有利とも言える。推測するに、プレートを取り付けることで狭小なケース内部空間に振動がこもり、これが電源供給に悪さをして音を濁らせているのはないかと思われる。似たような現象はオーディオ機器自体にも共通していることのようで、機器の天板を外すと音が良くなったとの事例をしばしば耳にする。私もPRA-2000ZRやL570の天板を外して使用していたが、これはこれらの機器の放熱が激しいから外したのであって、それによる音質的な変化というのは確認できなかった。ただ、内部空間が密閉された電源ボックスの内部空間に吸音材を入れると、音質が向上することは私自身確認している。
随分と余談が過ぎたが、次にインレットへの内部配線ハンダ付け作業に入る。インレットには音質抜群のニコオンNC174を使用。内部配線とインレット電極のハンダ付けには真鍮製のファストン端子を仲介させている。音質的な観点からすれば、ハンダ付け個所に仲介物を挿むのは不利に思え、できれば電極に直付けハンダするのが理想といえるだろう。しかしながら、ACインレットの小さな内部電極に4本もの内部配線を直付けハンダするのは極めて難しい。仮にできたとしても、耐久性に問題がある。今回の電源ボックスに用いる芯線1本あたりの導体断面積は約1.7スケアと細いのだが、これが4本も合わさると7スケアにもなる。これをインレット電極へ安定的に接合するには、何らかのスリーブが必須となる。よって、音質的に影響が少ない真鍮材にて圧着固定、そこへはんだを浸透させることで、確実な接合を実現しようというのである。このファストン端子は通常、スピーカーユニットへの配線固定に使われる端子で、トリテックの製品だ。コイズミ無線で売られている。
インレットから延びる内部配線にはS/ALAB HH3.5の芯線を使用。芯線の端末は一旦解いてから、中心に通っているテフロンチューブをカットする。そうしてから、導体を撚り合わせる。中心のチューブをカットするか否かは人によって様々だが、カットしたほうが音が良くなるという話があるので、私はそうしている。これも一度検証してみないとなぁ。それと、MWT構造は導体が一旦解けてしまうと元に戻せなくなってしまう。それなら、一度解いてもう一度撚り合わせた方が後々めんどうなことにならなくて済むというのもある。

HH3.5を内部配線材に選んだ理由について。これはたまたま手元にあったから利用したのだが、6N銅使用のMWT構造にテフロン被服してある芯線なので、品質にも問題ない。これを使用したのには他にも理由がある。この電源ボックスでは構造上、インレットからの内部配線を急激に折り曲げてインレット取り付け台座の下部に開けてある狭い隙間から引き出すことになる。このような構造では、単線のような硬い線材や口径の太い撚り線は使いにくい。HH3.5はこの点、扱いやすい。HH3.5に使われている5本の芯線それぞれは適度に細いため、急激な湾曲にも対応できる。誤解しないでいただきたいが、HH3.5そのものは硬めケーブルでしなりにくいのだが、「急激な湾曲にも対応できる」と述べているのはHH3.5の内部芯線のこと。

ファストン端子を仲介して内部配線を接合。さらに、ハンダ付けしてやる。
インレット電極と配線のハンダ付け状態。むき出しのままでは酸化してしまうので、テフロンテープと熱収縮チューブを被覆してやる。
さらに、導体が解けないよう先端を軽くハンダ付けしてやれば端末処理は完了。右上は配線し終わったインレット。立ててみたら立った。8本足だからまさしくタコだな。
この電源ボックスはケースが黒いので、各パーツも黒くして色彩の統一感を図りたい。さしあたり、使用するコンセントはアメリカン電気の7110GD。これはケースが暗灰色なので、見た目にもマッチングする。ただ、取り付け金具部分は金属色そのものなのでいただけない。プレート取り付ける場合、金具は隠れてしまうので何色であっても構わないのだが、今回はプレートレスなので金具は丸見えになってしまう。色を統一しようがどうしようが音質には何ら関係ないのだが、ここは私のこだわりの部分なのだ。各パーツの取り付けネジにはステンレス製を使用することにしているのだが、これもそのままでは目障りだ。よって、これらのパーツを黒く着色することにした。ちょっと分かりにくいが、右上は金具を黒く塗った状態。
インレットへの配線作業が済んだら、いよいよ各パーツをケースにネジ留めする。最初にインレットをケースに取り付け、内部配線を台座の下部から引き出す。引き出した内部配線をコンセントにネジ留めしてから、コンセントをケースにネジ留め。これにて8個口電源ボックスは完成。なお、内部配線の端末にはあらかじめ接点導通剤を塗布してから、コンセントへ配線している。
完成の後、もう少し手を加えてみようと思い、底面に防振対策を施してみることにした。メディコムのスーパーラバースプレーというゴム皮膜生成スプレーを底面に塗布してみた。スプレーしたところにゴム皮膜を形成し、滑り止め効果などを発揮するらしい。このスプレーを東急ハンズで見掛けた時、ひょっとしたら床からの振動遮断に効果があるのではないかと閃いたのだ。スプレー自体は至って簡単。2回吹きしてやれば、薄く均一なゴム皮膜が出来上がった。おお、これはうまくいったと喜んだのも束の間。このゴム皮膜、電源ボックスを少し引きずっただけですぐはがれてしまうのだ。これでは、防振以前の話だ。結局、手で擦って剥がしてしまった。まぁ、これは失敗した作業なのでホームページに載せる必要もないかと思ったが、写真を撮ってあったので紹介しておいた。

【Deimos/Phobosの完成写真】

完成したプレートレス8個口電源ボックス。それにしてもこの電源ボックス、異様な雰囲気を醸し出してるな〜。市販品では絶対あり得ない容姿だ。この電源ボックスは2台製作した。元々スピーカーPA-2のネットワークボックスとしてステレオペア2箱分を製作していたためだ。命名の由来は火星の衛星フォボスとダイモス。質実剛健で無骨な感じがふさわしいと思い命名した。

フォボスとダイモスの基本構成は同じだが、ネジは手持ちのものを見繕って利用したため、ネジの形状が若干違う。この電源ボックスは右上の写真をご覧いただいても分かるとおり随分と背が高い。寸法はW130×L300×H88。重量は1.8kg。21mm厚シナアピトン合板で作られているためとても頑丈なのだ。フォボスとダイモスは完成当初、AV機器やパソコン関連機器の給電用に使用していた。8個口もあるのでとても便利なのだ。もちろん、ピュアオーディオ用として製作したのだから、こういう使う方はもったいない。その後、メインのオーディオシステムの電源ボックスとしてしばらく使用し、ピュアオーディオにも十分な性能を有していることを確認している。開放感ある延びのいい高域と、適度な弾力のある低音のバランスが良好。正直、この電源ボックスをメインにしても十分ではないかと思った。プレートレスと強固なケース、癖のないコンセントの性格が相乗的に作用している。
コンセント取り付け部分。ご覧のとおりプレートレスのスケルトン状態になっている。コンセント間、及びコンセントとケースとの隙間は7mm。誤って手が滑り込むことはない。コンセントは4本のネジで強固に取り付けられている。
インレットの取り付け状態。ニコオンNC174はガラス繊維入りの耐熱性樹脂で出来ており、かなり頑丈。このインレットの音はがっちりとした低音が特徴。さて、次項ではこの電源ボックスを利用したコンセントの比較試聴を紹介しよう。
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