オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオアクセサリー
ターンテーブルシート
2004.9.14新規!
レコードプレーヤーをやっているとスタビライザーやターンテーブルシートなどに懲りたくなる。ここでは私のお気に入りのターンテーブルシートをご紹介する。
砲金製ターンテーブルシート:TTシート Y31ST1-GM1
発売:Y31PROJECT 価格:\35,000 購入: Y31PROJECTネット通販 購入年:2004年4月
TTシートとはY31プロジェクトが企画発売する砲金製ターンテーブルシート。型番はY31ST1-GM1という。価格は\35,000。私は兼ねてよりこのTTシートが欲しかった。このシートを知ったのはインターネット上であり、幾人ものオーディオマニアの方々がTTシートを購入し、かつ絶賛されているのを見かけたのだ。

TTシートは単なるターンテーブルシートではない。アナログマニアのツボを抑えた絶妙な設計がなされている。最大の特徴は、ターンテーブル内周に向かってすり鉢状のテーパーが付いていること。下の写真をご覧いただくと分かると思うが、外周に比べて内周が凹んでいるのだ。左下の写真は分かりやすいように赤線を引いている。すり鉢状になっている理由は反り(レコード外縁部の浮き上がり)を押さえ込むため。レコード盤はその製造年や品質、保存状態などの影響で平面性が保たれていないことが多い。これを俗に反りといい、反りの解消はレコード再生における難問の一つである。レコード盤の反りで悩んでいる人は多いはず。私自身も反りには悩まされていた。特に盤の反りは外周に従ってひどくなる。反りがあるとカートリッジの針先も反りに合わせて上下にふらつくので、音質にも悪影響を及ぼす。TTシートを活かすにはレコードスタビライザーの併用が前提となる。レコードスタビライザーでレコード盤の中心部分を押さえ込むと、レコード盤がすり鉢状の形状に添って沈み込む。このことでレコード盤の反りを矯正するのだ。TTシートにレコード盤をセットすると「レコード盤が吸い付くように納まる!」と言われる所以である。

反りの解消には真空ポンプによる吸着式ターンテーブルシートを用いるという手もある。吸着式ターンテーブルシートはオーディオテクニカが数機種発売していたが、これらもすでに絶版となっている。私自身、オーディオテクニカのAT-665BXという吸着式ターンテーブルとレコードスタビライザーのセットを使用していたこともある。(このページの下の方をご覧あれ)これは真空ポンプがスタビライザーに内蔵されているという極めてシンプルな吸着システムであった。ターンテーブルシートには外周縁にゴム製のリングが付いており、このゴムリングによりレコード盤とターンテーブルシートの隙間を密閉できるのだ。AT-665BXのセットは簡単。レコード盤をセットして、レコードスタビライザーを載せるだけ。後は、スタビライザーのスイッチを押すと、レコード盤とターンテーブルシート間の空気を吸出してレコード盤をターンテーブルに密着してくれる。密着したらスイッチを切って、レコードを再生するのだ。このような手順を踏めば反りが解消されるのだが、問題点も幾つかある。まず、AX-665BXはスタビライザー・ターンテーブルシートのセットであり、このセット品でないと吸着システムが働かないこと。好きなスタビライザーやターンテーブルを持っていても、それはそれ。AT-665BXはスタビライザー・ターンテーブルシートのセットで使わないと意味が無いのだ。もちろん、AT-665BXのターンテーブルと別のスタビライザーを組み合わせたり、その逆でもレコード再生は可能なのだが、その場合はAT-665BXの吸着システムは活かされない。次には、AT-665BXの吸着時間は十数分しか持続しないこと。レコード盤片面くらいはぎりぎり持つので問題は無い。しかし、ゴムリングはいずれ経年劣化するだろうから、ゴムリングがへたったら吸着性は保たれない。同じことは、レコードスタビライザーに内蔵されている真空ポンプについても言え、このポンプが故障すれば終わりである。AT-665BXにおける音質面については、反りが解消されるので再生音の安定性は高まるのだが、音がやや柔らかくなる傾向がある。これはターンテーブルに植毛されているフェルト状の植毛が音に影響しているのではないか。音質傾向については私の耳ではそう感じただけなので、別の意見もあるだろうが。

吸着式ターンテーブルシート以外には、レコードプレーヤー自体に真空ポンプによる吸着システムを内蔵したプレーヤーが幾つか存在した。しかしながら、これはそれらのプレーヤー固有のものであり、他のプレーヤーに転用はできない。それに、これら吸着式プレーヤーはいずれも絶版となっており、中古でも高額で取引されているので、入手は難しい。

これら吸着システムに対し、テーパー付きターンテーブルシートは至ってシンプルな機構である。テーパー付きターンテーブルシートにレコード盤をセットし、スタビライザーを載せるだけ。これだけでレコード盤の反りは完璧に解消される。吸着システムの様に電気的な駆動をおこなうわけではないので故障もない。真空ポンプのスイッチを押したりする必要もない。テーパー付きターンテーブルシートというと昔はパイオニアのブチルゴム製ターンテーブルシートJP-501があったが、惜しまれつつも絶版になっている。よって、現在発売中のテーパー付きターンテーブルはTTシートだけである。つまり、現時点で反りを根本的に解消できるターンテーブルシートの現行品はTTシートのみと言える。

TTシートは完全予約の受注生産なので、注文してから到着までしばらくかかる。左上は予約後1ヵ月弱で届いたTTシートY31ST1-GM1。厳重な梱包だ。送料は着払い。わくわくして開けてみると、まばゆいほどの輝きを放つターンテーブルシートが出てきた。おー、これは美しい。まずは見た目で感動。ま、これだけ良いものだと待つ甲斐があるってものだ。外形寸法はφ297mm、重量3.1kg、厚さは外周6mmで、内周に向かって次第に薄くなり、内周近辺は4mm厚となっている。
TTシートY31ST1-GM1を斜から。左上はおもて面で、右上が裏面。おもて面にはレーベルの厚みを逃がす段差が彫られている。裏面は面一だ。仕上げはヘアライン仕上げになっている。
左上はターンテーブルシートの中心にあるスピンドルの差込穴。このY31ST1-GM1はほとんどのレコードプレーヤーに対応する。対応プレーヤーリストはTTシート使用実績表に公開されている。TTシートには、マイクロやトーレンスなどスピンドルの大きいプレーヤー用に、穴の径が大きいY31ST1-GM2というタイプもラインナップされている。右上はTTシートを安全にセットするための把手(長いネジ)をねじ込むための穴。M3のネジ切りがしてあり、M3の長いネジも付属する。ターンテーブルへのセット時や取り外し時には、この穴にネジを差し込む。そして、TTシートを水平に持ち上げてやる。素の状態でTTシートを載せたり外したりすると、スピンドルを痛めてしまいかねないので注意しよう。
左上はレーベル部分の切り欠きのアップで、切り欠きはφ110mm、段差0.2mm。右上はTTシートの側面。角は綺麗に面取りされているので、誤って手を切ったり盤を傷つけたりする事はない。
愛機GT-2000L改にセットしてみた。良い収まり具合だ。銀色の巨大なターンテーブルには金色が良く映える。TTシートにはワックスやクリアースプレー掛けなどはなされていない。よって、脂ぎった手で触ったりすると、左上の写真のように数日後には酸化皮膜として痕が浮き出る。これは砲金製だから仕方ないことである。使い込んで味を出すのも良し、金属磨き剤などで時々磨いてやるのも良し。TTシートのメンテナンス法については、Y31プロジェクトのTTシート洗浄現場に紹介されている。それによると、TTシートの出荷時には、ピカール→中性洗剤→布空拭き といった手順で丹念に磨かれているようだ。ラッカーなどのクリアースプレーをすれば、メンテナンス無しで綺麗な状態が保たれるだろうけれど、私はあまりお勧めできない。均一にスプレーするのは難しいし、万が一、ダマやタレが出来てしまうとレコード盤の密着性が悪くなってしまう。それに、真鍮や砲金といった金属は使い込むと味わいが出てくるもの。汚れが目立ってくれば、金属磨きでピカピカに磨いてやればよい。磨けば磨くほど、愛情も倍増間違い無しだ。
次に、レコードを載せ、スタビライザーをセットしてみる。スタビライザーを載せるとレコード盤がわずかに沈み込み、TTシートへ見事に密着した。反りが完全に解消されている。再生音は極めて安定感のあるものへと変貌した。針先が安定して音溝をトレースしている結果だろう。劇的ではないにしろ、私が今まで使っていたノーブランドのゴム製ターンテーブルシートよりはるかにいい。解像度がアップしている。金属的な響きが再生音に被るかと思いきや、余計な鳴きが付加された様子もない。TTシートは相当厚みがあるので、それ自体鳴きが少ない。金属製ターンテーブルシートで6mm厚といえば、かなりぶ厚いのだ。さらに、GT-2000Lのターンテーブルにセットしてやったところ、叩いてもほとんど響かなくなった。とにかく、TTシートは\35,000払ってでも買う価値のある製品と言えるだろう。

アナログにうるさい方なら、テーパー付きターンテーブルシートについて次のような疑問を持つのではないか。つまり、テーパーが付いているとレコード盤にも同様の傾斜が付くので、針先が盤に垂直に接することができないはず。したがって、左右の音溝から正確に信号をピックアップできないのでは、との疑問が生ずるだろう。ただ、私が使用した限りでは、左右のバランスが崩れることもなく、再生音に全く問題ないことを確認した。

Y31プロジェクトはこのTTシート以外にも様々なオリジナルオーディオアクセサリーを製品化している。詳細はY31プロジェクトのホームページを拝見していただきたいが、「アナログオーディオ用こだわり製品の開発」と名打っているだけあって、アナログプレーヤーに関連したパーツを砲金や真鍮の削り出しで製品化しているのが特徴。加工精度も相当に高い。なにより、マニアのツボを押さえた製品を企画しているのが凄い。ここで紹介したTTシートにしろ、Y31プロジェクトの製品群はオーディオ店では売っていない。Y31プロジェクトのホームページにおけるネット販売のみである。私が知る限りでは、ヤフオクへの出品や雑誌への広告掲載もされていないようなので、まさに口コミなのである。Y31プロジェクトは法人ではなく、Y31さんというオーディオ好きの方が運営されている。個人だからこそ、利益追求の大量生産品ではなく、限られたオーディオマニアの需要に応える製品企画ができるのだろう。大袈裟な言い方かもしれないが、Y31プロジェクトはオーディオアクセサリー業界のニッチ的な存在だと思う。製造はY31さん自身がおこなっているのではなく、知り合いの金属加工業者に依託されている。製品の販売にも特徴があり、一定数の注文ロットに達したら製造を開始するという、受注発注体制になっている。したがって、注文したらすぐに届くわけではなく、注文のタイミングにもよるが数週間から数カ月待つことになる。平均すると注文後、1ヵ月ほどで納入となるようだ。私もTTシートを注文した時点から手元に届くまで1ヵ月半程を要した。もちろん、製造開始時期は判明次第、メールで連絡してくれるので安心だ。

吸着式スタビライザー+専用ターンテーブルシート
オーディオテクニカ AT-665BX
発売年:? 定価:\30,000 購入年:2001年 購入額:\13,000(中古) 入手先:ヤフオク
レコードのそりを真空ポンプの力で矯正するスタビライザーと専用ターンテーブルシートのセット。かなり古いものらしく発売年は不明。レコードのそりに悩んでいたので、ヤフオクで購入。ターンテーブルシートの縁がゴム製になっており、ディスクと密着する。ターンテーブルシートの茶色の部分はフェルトで、振動吸収とディスクの保護に役立っている。シートのベースは金属製でけっこう重い。このスタビライザーが真空ポンプ(電池駆動)になっている。真ん中のスイッチを押すと「ブブブブー」と下面の穴から空気を吸い出す。そして、レコードディスクとシートとの間の空気が吸い出され、ディスクがシートに密着する仕組み。このスタビライザー自身は樹脂製で軽い。吸着時間は十数分。ディスク片面分は裕に密着性を維持できる。AT-665BX使用感は上々。音は柔らかいが、情報量は増えた感じがする。なお、AT-665BXは2004年初頭にヤフオクで売却した。TTシートの購入資金にするためだった。
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