オーディオみじんこ
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自作電源ケーブル
2006年新作モデル極太自作電源ケーブル
2006.03.02公開

ここでは、極太仕様電源ケーブルの2006年最新作を2本ご紹介する。いずれの作品もみじんこ2006年初頭の作品。実験的要素が強い。うまくいったものもあれば、太過ぎて使い物にならないものも。いやはや、やり過ぎは禁物。

No.110 DREADNOUGHT
ケーブル:富士電線VCT5.5 ACプラグ:レビトン 8215C IECコネクター:山手電研 AP-400
No.110 DREADNOUGHTはみじんこ電源ケーブル創作史上、最大導体大面積を有するACケーブルである。ケーブルには富士電線VCT5.5をダブルで使用。ホット/コールド双方に5.5スケア×2の導体を割り振っている。つまり、導体断面積11スケアの大面積を有している。
DREADNOUGHTに使用したVCT5.5は元々、PA-2のスピーカーケーブルとして使用していた。PA-2には別のケーブルをあてがうことにしたため、余ったVCT5.5の再利用を兼ねて製作した。必要以上に太い断面積にするとどんな音がするのか。お遊びと言うか、実験である。極太導体をどうやってプラグ/コネクターに固定してやるか、難しければ難しいほど面白い。ここは腕の見せ所。
この電源ケーブル、太いのに柔軟で使いやすい。抑圧感が皆無で、バランスはフラット。ダブル使用によるデメリットは予想より少ない。刺激感が無く、レンジが広く、太っ腹な音質傾向。予想に反して大成功。製作難易度は、みじんこ的に上の中。
ケーブル部分のアップ。VCT5.5にはデンカエレクトロンの青メッシュチューブを被せてある。青メッシュはスピーカーケーブルとして使用していた時から被覆していたもの。2本のVCTをツイストし、さらにSFチューブを被せてある。SFチューブの隙間から青メッシュに包まれたVCTケーブルが透けて見える。なお、このケーブルはシールドなし。
ACプラグ付近のアップ。うーむ、我ながらなかなかうまく仕上がったなぁ。VCTケーブルはφ13と太めのケーブル。これをダブル使用すると、太さは並みじゃない。このダブルケーブルを受け止めるプラグにはレビトン8215Cを使用。たまたま手元にあったという理由もあるのだが、プラグの構造上、太いケーブルの固定に好都合だったのだ。レビトン8215C(5266C)/8215PLC/ハッベルHBL8215(HBL5266)/HBL8215CTは、ケーブル固定クランパーの構造が同じで、プラグぎりぎりまで太いケーブルを持って来れるのだ。説明が難しいが、まぁこれらのプラグには使い勝手の良いところがある。フルテックFI-15/レビトン8256V/ハッベルHBL8115Vなら、極太ケーブル取り付け作業はもっとやりやすいだろう。ケーブルに関して言うと、VCT5.5じゃなくて、例えばアクロリンク4030あたりを使ったりしてやったら、もっと高品位なケーブルになったかもしれないが、それではコストが掛かり過ぎる。ま、このVCT5.5ダブルケーブルの音が良かったら、4030ダブルを作ってみても良いかな。
プラグ部分のアップ。隙間や段差は自己融着テープ、テフロンテープなどで成形。さらに、ニシチューブで収縮処理を施している。ケーブル部分にエンブレムが取り付けにくかったので、エンブレムはプラグに貼付けた。名称はNo.110 DREADNOUGHT。戦艦ドレッドノートから拝借した。ドレッドノートは大鑑巨砲主義の火付け役となった大英帝国の戦艦。この太いケーブルに相応しい名前をと思いネーミング。余談だが、巨大なものによく付けられる「ド級」「弩級」という言葉は「ドレッドノート級戦艦」が語源。
コネクターのアップ。ヤマテのAP-400を使用。安いコネクターで、構造には今一歩のところがあるが、今回の作例には好適そうなので採用した。実際に工作してみると、予想に反してけっこう苦労した。コネクター内部が狭いので、追加加工が必要となったのだ。その様子は以下。
AP-400へのケーブル導体取り付けには丸形(R型)圧着スリーブを介している。この丸形スリーブは秋葉原で売られている一般的なもの。銅に錫メッキ(ニッケルメッキ?)が掛けられている。R8-S8というサイズだったと思う。ただ、このスリーブはでかいので、そのままではコネクターに収まらないことが判明。よって、コネクターに収まるようヤスリで成形している。右上は、スリーブをケーブルにハンダ付けしたところ。収縮チューブを掛けることで、絶縁性/酸化防止を図っている。ケーブルは黒同士/白同士を合わせた。ケーブルのダブル使用の際、ホット配線/コールド配線をケーブル1本づつあてがうか、上写真のように双方のケーブルから同じ色同士の芯線を組み合わせるか、2通りの方法が考えられる。これに関しては、どちらでもいいような気がする。作業上、やりやすい方でいいかも。ただ、よーく考えてみると、右ネジの法則で発生する磁力をツイスト構造でキャンセルさせるには、理論上、黒同士/白同士をまとめた方が良さそうである。

話がそれるが、VCT線はケーブル内部で黒線/白線がツイストされている。これはVCTに限ったことではなく、多くの多芯ケーブルに採用されている。導体に電流が流れると、導体の周りに右向きの磁界が発生する。ケーブルをツイスト構造にすると、ホット/コールドそれぞれで発生する磁界を打ち消し合うことができるのだ。つまり、ツイスト構造とは、シールドに頼る事無く、ケーブルに発生する磁力をキャンセルする手法なのだ。ケーブルに発生する磁力はノイズの源にもなりえる。できるものなら、極力減らした方が良いというのが一般的。必ずしもそうとは言えないところもあるが。

ツイストと同じ理屈として、スターカッド構造というのがある。これは4芯ケーブルにおけるツイスト構造のことである。また、3芯の場合には、芯線を三つ編みにすることもあり、これも一種のツイスト構造と言えるかもしれない。もっと多くの多芯線を複雑な網組構造にしているケーブルもある。その代表格はキンバーケーブルの4TC/8TC。4TCは8本の芯線、8TCは16本の芯線を有し、非常に複雑な編み構造を有している。プラス/マイナス線を近接して捩り合わせる事により、磁力をキャンセルさせているのだ。

ヤマテ電研のIEC320規格コネクターAP-400。秋葉原のパーツ店でよく見かける。900〜1000円ほど。東京ラジオデパートの最上階のパーツ店が一番安い。このコネクター、丸形スリーブをネジ留め固定できるようになっている。今回はケーブル導体が極太になるため、スリーブを介さざるを得なかった。なので、スリーブネジ留め固定できるコネクターを選んだのだ。ところがこのAP-400、ケース内部が狭い。また、ケーブルが太すぎることもあり、そのままではスリーブが固定できない。仕方なく、電動リューターを使ってケース内部を切削。苦労の甲斐あって、なんとかケーブルが固定できるようになった。
コネクターとケーブルの接合部には段差が生じる。自己融着テープ、ブチルゴムテープ、テフロンテープを巻き付けて段差を解消。この後、ケーブル全体にSFチューブを被せる。さらに、コネクター付近にニシチューブを被覆し、ヒートガンで収縮。右上はプラグ方向の端末処理。こちらは棒形(I型)スリーブを採用。
SFチューブを被せる前の状態。これはこれで見た目がなかなか個性的。青メッシュが隠れてしまうのがちょっともったいない。この後、SFチューブを被覆し、DREADNOUGHTは進水式を迎えたのである。ケーブルのダブル使用。なかなか面白い技である。ただ、自分で試した感想と、ダイナ秋葉原トレードセンター植木店長の話を総合してみると、ケーブルのダブル使用に向くケーブルと向かないケーブルがある。S/ALABのHHSやHH3.5はダブル使用でさらなる音質向上が望めるが、ディーバス114-4CTは向かないなど、相性があるようなのである。うーん、こればっかりはやってみないと分らないことだなぁ。導体径は太ければ良いと言うものではないので、必ずしもお勧めできるものでもないが、この異様な姿に魅力を感じる人は、この作例を参考に製作してみると面白いだろう。
No.107YAHWEH
ケーブル:オヤイデ電気2by2 ACプラグ:マリンコ5266BL IECコネクター:マリンコ320IEC
直系5cmの極太ケーブルである。一連の極太ケーブルシリーズの究極形態として製作したのだが、かなり太い。長さは1.5m。制作方法はおおむね極太シリーズと同じ。カブセールという衝撃吸収チューブにケーブルを通している。
要となるケーブルにはオヤイデ電気2by2を使用。以前、この2by2を使った自作ケーブルを製作した事がある。それはNo.86 Excetraというケーブルだった。2by2は一見柔なケーブルで、使い始め当初はふやけた音質で、素直だが当たりが柔らかすぎ、音の角が丸みを帯びていて、どうにもいけ好かなかった。ところが通電数十時間を経過したあたりから、目が覚めたように雰囲気が出てきた。別物のケーブルに生まれ変わったのだ。電源ケーブルは通電でかなりの変化があるのだが、2by2のエージング効果は激変レベルだった。エソテリックの8N-PC8100との同時比較試聴でも、No.86Excetraは互角の性能を示した。No.86のさらに上を目指したのが、このNo.107YAHWEHであり、音質傾向はこのケーブルにおいても同じ事が言える。まだエージングが完了していないが、非常に艶やかで、濃厚な音楽表現が可能であり、解像度、帯域バランスも完璧に近いものがある。
艶やかで、光沢のある音色。解像度も申し分無し。上記にも説明したが、この自作ケーブルに使用した2by2は、エージングで激変するタイプのケーブルである。この2by2の性能を最大限発揮すべく製作したのが、No.107YAHWEHである。
No.107YAHWEHに使っている2by2ケーブルはノンシールド。よほどノイズにまみれた環境ならまだしも、一般的にはノンシールドのままでも良い。2by2はスターカッド構造なので、ノイズには比較的強いのである。ただ、今回はメッキ無し銅網組シールドチューブを入手できたので使ってみた。
最外装はSFチューブ。SFチューブの編み目から銅色に透けて見えるのが、BCAというメッキ無し平編み組チューブである。
No.107YAHWEHがどれだけ太いかの比較。左端がNo.107YAHWEH。隣りが、このページの冒頭で紹介したNo.110 DREADNOUGHT。その隣りはアコリバPOWERMAX5500SFチューブ掛け。さらに隣りがAET SCR-AC透明メッシュ掛け。隣りの青いのはCV-S3.5青メッシュ掛け。さらに隣りはCV-S3.5SFチューブ掛け。さらに隣りがCV-S3.5透明メッシュ掛け。さらに隣りがCV-S2.0透明メッシュ掛け。さらに隣りはサエクAC-4000SFチューブ掛け。さらに隣りはAET GAIA-AC透明メッシュ掛け。さらに隣りはディーバス14-4CT透明メッシュ掛け。一番右側は東日京三EM-EEF2.0SFチューブ掛け。あぁ、ケーブルってそれぞれに表情があって面白いなぁ。
こちらはNo.107YAHWEHとディーバス14-4CT使用ケーブルとの比較。プラグ/コネクターは同じマリンコ系を使っているにも関わらず、また同じ電源ケーブルという機能を有するにも関わらず、見た目の迫力が全然違う。
No.107YAHWEHのプラグ/コネクター。マリンコ5266BL/320IECだ。うん、ひょっとしたらワッタゲート5266i/320iだったかもしれんが、同じ事だ。
YAHWEHとは「救世主」。“エホバ”とか“ヤーヴェ”とか“エヴァ”とも発音する。ケーブル表面の状態。SFチューブから銅網組シールドが透けて見える。
これは2by2の素の状態。マリンコを取り付けている。ストレートライン2by2は一見、何の変哲もない細いケーブルだ。柔軟性があり、取り回しはしやすい。エージングに時間が掛かるが、熟れてくると何とも魅力的な音色を奏でるケーブルだ。
外装シースに印字されている通り、2by2はACケーブルとしても、スピーカーケーブルとしても使える。ただ、これは2by2に限った事ではなく、全ての切り売り電源ケーブルに言える事。実際、スピーカーケーブルと電源ケーブルの兼用を謳っているケーブルは多い。おおざっぱに言えば、全ての切り売り電源ケーブルはスピーカーケーブルにも転用出来る。おおむね、電源ケーブルで発揮される音色が、スピーカーケーブルとして使用した場合にも表れる。逆に、切り売りスピーカーケーブルを電源ケーブルに転用する事も、ものにもよるが、可能と言えば可能だ。私のところにも、たまにそういう相談が寄せられる。ただ、スピーカーケーブル=電源ケーブルにも使用可能、というわけではない。用いる機器にもよるのだが、耐圧性が完全でない場合、絶縁材が溶け出して発火する危険性もある。またまた余談だが、スピーカーケーブルをラインケーブル製作に転用することもできる。これもケースバイケースだが。最近の例で言うと、ミュージックスピリットBasic-1。スピーカーケーブルとして発売されているが、ラインケーブルとしても使用できる。名言はされていないが、オルトフォンのスピーカーケーブルSPK-3100も、ラインケーブルとして転用しやすい。また、福田先生が雑誌上で絶賛された作例、つまり、モニターのスピーカーケーブルLS-502のラインケーブル転用は、その記事を見た多くのマニアの反響を呼び、秋葉原のオーディオ店では一時期LS-502が売り切れていた。福田先生が目を付けられるだけの事はあって、LS-502はラインケーブルに好適な物性を有している。ケーブル外径はRCAプラグに好適な太さ。芯線がほどよく硬めで、撚り線1本1本がしっかりしており、断面積は細すぎず太すぎず、絶縁材は程よい硬さを有している。おっと、話が逸れすぎた。
こちらは銅平網組線の無メッキ品。BCAと呼ばれる。一般的には錫メッキされたTBCというタイプが出回っているが、このBCAタイプは滅多に見かけない。というのも、銅は、空気や湿気に触れるとすぐに錆びるから、BCAは扱いに慎重にならざるを得ず、また用途も限定されるのだ。TBCは錫メッキのおかげで錆びにくく、何かと安心なのだ。では、なぜこの扱いづらいBCAをあえて使うかと言えば、第一に銅色が奇麗だからである。第二に、錫メッキが音質へ及ぼすの悪影響を検証するためである。嘘かホントかわからんが、TBCに施されている錫メッキは音質へ悪影響を及ぼすという話をちらほら耳にする。真偽のほどは如何ほどのものか。実はこの銅網組メッシュ、もの凄く高額で、今回使用した分(2mくらい)だけで、6,000円くらいした覚えがある。
BCAはメッキ無しの平編シールドなので、経年による酸化、つまり錆びが懸念される。渋い黒系の錆になればまだしも、緑青が発生したらやっかいである。そこで、銅の色彩を保ったまま防錆できないかと考えた。オイルを塗布し、酸化を抑える事のはどうか。いや、それでは、ケーブルを触るたびにオイルが手や床に付着してしまう。次いで考えたのが、ニスかラッカーに漬込み、乾燥させる方法。これも種々の問題があり、断念。やはり、ここは透明スプレーを吹き付ける方法が無難だ。まず、銅網チューブをカブセールに通し、膨らませる。チューブが膨らんだ状態で、カブセールを引き抜く。チューブが膨らんだ状態のまま透明ラッカースプレーをまんべんなく塗布。スプレーは数回に分けておこなった。これにて防錆処理は終了。
2by2には真綿を巻き付けた。真綿とは絹のこと。つまり、シルクだ。オーディオマニアにはピュアシルクアブソーバーと言った方がピンと来るかもしれない。アコースティックリバイブの試聴会に参加した折、ピュアシルクアブソーバーPSA-100の劇的な効果に感動。ただ、PSA-100は少々高価なので、自分でピュアシルクを探し出し、入手した。ケーブル全体にシルクを巻き付け、糸で縛る。この状態のまま、カブセールに挿入。いわば、シルクを介して、ケーブルがフロートされた状態である。シルクによる微小振動と電磁波吸収効果も期待している。さらに、銅平編組線を被せると、右上のようになる。
この後、SFチューブを被せて完成となる。2by2/シルク/カブセール/銅網組シールド/SFチューブという構造となる。おっと、その前に、プラグ外周へ竹炭テープを巻き付けた。これはエンゼルポケット秋葉原店で売られていたもの。かつて、AVビレッジで連載されていた8N電源ケーブル製作時にシールドテープとして用いられていたものだ。
さて、けっこう苦労して製作した電源ケーブルYAHWEHの音質は・・・まだ100%は本領発揮せず。太すぎてコンセントへに挿し込みにくい。ケーブルの柔軟性はあるのだが、さすがにちょっと太すぎたか。ラックのかなり上の方においてある機器に挿し込むのは、自重でケーブルがひっこ抜けるかもしれないので危険なので、低い位置(床から30cm程度)への機器へ給電するのに使っている。壁コンから電源ボックスへの配線ケーブルとして、床を這わすなら、全身がスタビライザーで覆われたような構造をしたこのケーブルが活かせるかも。壁コンセントに挿すと、上写真のような感じ。なかなかイカついでしょ。使い勝手に制約はあるけど、エージングが進むに連れて、やはり化け物じみた素晴らしい音を奏で始めている。
No.107YAHWEHの最小曲げ状態。だいたい直径20cmくらいまで曲げられる。それ以上曲げれない事も無いが、内部の発泡系樹脂がへしゃげる恐れがあるので、あまり曲げない方が無難。ケーブル自体はBCA銅網チューブを仕込んであるので、けっこうずっしりと重みがある。
2by2を究極に高めてやろうという意図で極太になったので、使い勝手の面では不自由なところもある。ただ、太さの大部分は発泡系樹脂なので、極端に重量があるわけではない。最初は、あまりの太さに、製作した私自身もたじろんだのだが、低い位置に設置してある機器への給電なら無理無く使用できている。
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