オーディオみじんこ
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オリジナル自作電源ボックス
< 強化木使用自作電源BOXクローズアップ写真 >
2006.3.27公開

同機のヤフーオークション出品に先立ち、詳細な拡大写真を15点掲載します。同電源ボックスの制作過程、及び特徴はオリジナル自作電源ボックスの項の中程をご覧下さい。

強化木電源ボックスは私のリファレンス電源ボックスとして3年間愛用してきた。電源ボックスの理想を追い求め、その当時の電源理論を考慮しつつ、あらゆる音質向上対策を施している。まず、特徴的なのは、コンセントプレートレスであること。これは、福田雅光先生が問題定義された「コンセントプレートレスによる音質向上効果」を具現化するためである。これは、ステレオ誌で数年前、話題になっていた「ツートップコンセントボックス」にもあてはまる。コンセントプレート(コンセントカバー)を取り付けると、ボックス内部が密閉された状態となり、これが音のこもりの原因となる。また、コンセントプレート素材の響きが再生音にも影響を与えると推測され、それは得てしてマイナス方向に働くと言われている。特に、金属製のプレートは、その材質の響きが再生音に大なり小なり影響する。それらプレートの素材感を音造りに積極的に利用しようという考え方もあり、それはそれで一つの方向性である。私も以前、4mm厚ステンレスプレート電源ボックスを自作した事がある。この作例においても、ステンレスプレートが良くも悪くも音質に作用していた。現在では、オーディオ用に吟味された高音質プレートが市販されているが、安くはない。最もコスト安で、色付けが少ない電源ボックスは、プレートレスということになる。
ただし、プレートレスには使用上の危険性がある。それは、電気の導通箇所が露出していることである。この電源ボックスの場合、インレット内部電極と内部配線には厳重な絶縁被覆がなされている。しかしながら、上写真のコンセントの側面にある配線固定ネジは露出しており、ここには電流が流れる。使用時に、万が一、このネジを手で触ると、当たり前だが感電する。その他、何らかの物体がケースの隙間に紛れ込み、導通箇所に接触すると、ショートや発火の危険性が考えられる。ボックス内部の隙間に手を入れない限りは安全であるのだが、子供などがいる家庭では、置き場所に配慮が必要である。プレートレスが音質上好ましいとしても、そんな空恐ろしいもの、メーカーは製品化出来ないのである。そもそも、プレートレス電源ボックスなんてものは、法律上製品化出来ないはずである。自作ならではの音質最優先構造、それがプレートレス電源ボックスなのである。
この電源ボックスの特徴の一つとして、ケースへの強化木採用が挙げられる。強化木は高密度のサクラ材を何層にも積層し、これにフェノール樹脂を浸透し、さらに高圧プレスにて圧縮成形した積層材の一種。木質と樹脂の割合は3:7で構成されている。積層合板というより、樹脂の一種として捉えた方が適切である。叩くとカンカンと硬質な響きがする。響きの減衰も早い。木のような外見を有しながらも、密度が均一で、高比重。比重は約1.4。高比重材と呼ばれているメープル材でさえ比重は0.7。強化木は実にメープル材の2倍の比重を有するのである。強化木は、集成材や積層合板とは比較にならないほどの強度と耐久性を備えている。強度加工性にも優れており、主に内装用のドアノブや、ナイフの持ち手などに利用される。建材の一種であるため、入手は難しい。強化木はオーディオアクセサリーにとって極めて理想的な素材にも関わらず、オーディオ界での使用例は皆無に近い。メーカーの市販品に用いられている例は、私の知る限り皆無。マニアの自作関係でも強化木の応用例はほとんどない。高価である事、大きな板が入手しづらいことなどが要因と考えられるが、そもそも強化木自体、一般的に知られていない素材だからだろう。私は東急ハンズの素材コーナーで入手。ブロックや小板、円柱、角柱などが売られている。
この電源ボックスの特徴は、プレートレス/強化木の他にも多々挙げられる。パーツは製作当時、考えられうる最上級のものを選択。使用パーツは以下の通り。

コンセント 
オヤイデ電気SWO-DX
IECインレット 
オヤイデ電気ロジウムメッキIEC320INRET
内部配線 
φ2.0高純度銀単線
絶縁被覆 
テフロンチューブ+黒ガラススリーブ
ネジ 
制振合金M2052

オヤイデ電気SWO-DXは言わずと知れた高音質コンセント。詳しくはコンセントの比較試聴を参照あれ。銀メッキ+ロジウムメッキ電極がなされており、音質は切れよし、抜けよし、馬力最高。聴いていて気持ちよいコンセントである。現在では、CCR-DXの方が高域の延びの良さで上回っている。ただ、SWO-DXには額を拳でぶん殴られるようなエネルギー感があり、その魅力は色褪せていない。

内部配線には、オヤイデ電気のφ2.0純銀単線を採用。φ2.0は3スケア弱であり、規格上、20Aもの許容電流に対応する。大電流パワーアンプにもストレスなく電源供給が可能である。さらにこの配線は銀線であるから、一般的な銅線より電気抵抗が少ない。銀線は絶縁抵抗に優れたテフロンチューブに通し、最外装には耐久性に優れたシリコン浸透黒ガラスチューブを被服。テフロンチューブは知っての通り、空気の次に絶縁抵抗に優れた絶縁素材。これら内部配線は、インレットから2分岐され、2個のコンセントに独立配線されている。インレット電極周辺は感電しないようテフロンテープと収縮チューブを被服。独立配線により、個々のコンセントの音質差はほぼ無いと言える。一般的な市販電源ボックスは、それが高額なものであったとしても、コンセント経由の直列配線を採用していることが多い。つまり、インレット-1個目のコンセント-2個目のコンセント-3個目のコンセント・・・と綱渡りのような配線となっているのだ。2個目以上のコンセントは手前のコンセントを経由する事になり、接点の増加や、手前のコンセントに繋がれた機器からのノイズ還流などの影響を受けやすくなってしまう。理想はインレットからの独立配線であるにも関わらず、多くのメーカー市販品が直列配線を採用しているかと言うと、幾つかの要因が考えられる。まず、インレットからの独立配線より、コンセント経由の綱渡りの方が配線材が少なくて済むと言うこと。もう一点は、インレットからの独立配線は高度なハンダ付け技術が要求されるからである。市販品でインレットからの独立配線を採用しているメーカーとしては、オヤイデ電気やオーディオリプラスなどが挙げられる。
強化木電源ボックスの外形寸法は300L×100W×62H。重量は1.64kg。4個口電源ボックスとしては重い方である。ちなみに、4個口電源ボックスの重量を見てみると、オヤイデ電気MTB-4は1.6kg。アコリバMTP-4は1.5kg。同RTP-4は2kg。セイシンのOMS-4は1.2kg。山本音響工芸のTT-3は800g。オーディオリプラスのSBT-4SZは2.8kg。私の強化木電源ボックスは、金属シャーシではないのにけっこう重量がある。
SWO-DXの金メッキ金具が美しい。コンセントは強化木ブロックに取り付け。ブロック状の台座にネジ4本で固定されているため、ぐらつきは皆無。市販電源ボックスの多くは、ネジ1〜2本取り付けである。ネジ1本取り付けというのは、コンセント中央のヘソネジのみでケース本体に固定されている場合。ネジ2本というのは、両端の金具に対し各1本づつネジ固定する場合である。こういう取り付け方法だと、コンセントがぐらつきやすい。まれにヘソネジと金具へのネジ計3本で固定された製品、或いは本機と同じくネジ4本で固定した製品もある。最も安定した固定方法は、ヘソネジを併用した3本取り付け、または本機で採用しているネジ4本取り付けである。
コンセント取り付けネジには制振合金M2052のM4ネジを採用。
コンセント中央のプレート取り付けネジは、空き状態にせず、制振合金M2052のM4ネジを取り付けている。プレート取り付けネジは俗称「ヘソネジ」「ツボネジ」などと呼ばれ、文字通り音質向上のツボと言われている。ここを空き状態にするより、ネジで塞いでやった方がS/Nが向上するという。プレート固定ネジ必要論を唱えたのも、福田雅光先生である。ツボネジの材質実験において、福田先生が最も効果ありと評価したのが、制振合金M2052であった。なお、このSWO-DXを含めた日本製UL準拠コンセントは、プレートネジの径がM3.5という中途半端なネジ規格になっている。で、M2052にはM3.5なんてネジ径は存在しない。そもそも、このM3.5というネジ径自体、極めて珍しいものであり、困った事でもあるのだ。M3かM4にしてくれていれば楽なんだがなぁ。で、私がどうやってM4ネジを取り付けたかと言うと、M4のねじ切り工具を使ってM3.5ネジ穴をM4に押し広げたのだ。結果、SWO-DXにM4のM2052ネジを取り付ける事に成功。ただ、これは必ずしもうまくいくとは限らないので、あまり真似しない方が良い。実は、このSWO-DXプレートネジ穴へのM4ネジの取り付けには、取り付け径以外にも問題があるのだが、話すとややこしいので割愛。
コンセント取り付け台座にはM4サイズのネジ穴加工を施した上で、M4ネジで固定。強化木は樹脂に近い密度感があるので、ねじ切り工具でのネジ穴加工が施せるのだ。このネジ穴の位置決めには相当神経を使ったが。位置がずれるとコンセントがうまく固定出来ず、元も子もないからである。

固定に使った制振合金M2052ネジ、ただのネジと侮るなかれ。相当な音質向上効果があるのだ。M2052はマンガンを主体とした合金であり、数年前からオーディオアクセサリーに応用されている。M2052に振動が加わると、合金内に相晶効果と言う金属結晶の雪崩現象が起き、振動が熱に変換されるという。そんな現象、目に見えるものではないので、私はふむふむそうなのかと納得するしか無い。ただ、実際のところ、M2052は顕著に効くアクセサリーである。このネジ1本で相当な振動吸収効果がある。ただ、このセイシンネジ、けっこう高価なのが玉に傷。このM4ネジが8本入りパックで5,000円程度はしたと思う。同電源ボックスにはM4セイシンネジ×計10本、M3セイシンネジ×2本使用。

インレット部分の状態。M3セイシンネジ×2本で固定。オヤイデのロジウムメッキインレットIEC320INLETである。現在、普通に入手可能なインレットの中では、高域の延びとS/Nがダントツ、最右翼的な高音質インレット。SWO-DXと通じるところがあるのだ。インレットみたいな小さなパーツで、そんなに音質が変わるものかと思われるかもしれない。けど、私が実験した限りでは、けっこう変わります。詳細は、 電源ボックスSaturnian Moonsの製作 その7:IEC320インレットの比較試聴をご覧あれ。7種のインレット中、最も際立っていたのがこのオヤイデIEC320INLETであった。1個800円。
インレットを取り付けている強化木板は以前、接着部が外れてしまい、再度エポキシ接着剤で付け直している。接着剤が乾くまで固定クランパーで固定していたのだが、その固定強度が甘かったらしく、板が内側に1mmほど奥まって固定されてしまった。使用上の不都合はない。
電源ボックスの裏側。オヤイデ電気製の真鍮スパイクを四隅に取り付け。オヤイデの電源タップOCB-1の底面に使われている真鍮スパイクの単売品である。
真鍮スパイクは両面テープで貼付けているだけ。すぐに取り外せる。スパイクは振動排除の観点からすると好都合なのだが、床との接地安定度からするとやや不安定だ。この電源ボックスは、4個口電源ボックスとしては自重が重い方なのであるが、硬いケーブルを何本も挿し込むと、電源ボックス自体が動く事がある。これはスパイクが点接触しているため、床との接触摩擦が小さいためである。電源ボックスが動いてしまう場合、このスパイクは外した方が安定する。スパイクを外し、別途、オーディオスパイダーシートのような滑り留めゴムシートなどを敷いてから床に接地してやれば、ずれる心配はなくなる。スパイクをもう一度付けたければ、両面テープで貼り付ければよい。

さて、この強化亜木電源ボックス。私が長年リファレンスとして使用してきただけあって、極めて優秀。色付けや癖が非常に少ない事が一点。これはもう、強化木ケースとプレートレスの効用だろう。金属シールドがされているわけでも無し、また、ノイズ的な対策をしていないにも拘らず、S/Nが極めて良い。そして、解像度申し分無し。音が詰まったりする感じが一切無く、延び延びと開放的である。電源ボックス自体の存在が無くなったような感じでもある。

強化木のプレートレス電源ボックス。作るのは簡単そうに見えて、実は結構大変だった。コンセントの取り付け台座のブロックの固定位置、コンセントの取り付けネジ穴溝掘り加工など、コンマミリ単位での組み立て精度が要求される箇所もあるのだ。もし、真似てみたいという奇特な人がいるのなら、強化木のカット図を参照あられたい。パーツ点数は少ないので、どれがどのパーツかは分るだろう。台座同士は75ミリの間隔を空けて組み立てれば良い。そうすると、おのずと私の強化木電源ボックスと同じ形が出来上がる。わざわざ強化木を使う必要は無いかもしれん。シナ合板やアピトン合板などでも良いものが作れそうだ。まぁ、実際の工作はここで述べている以上に色々な苦労がある。

以上、強化木電源ボックスのご紹介でした。

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