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切り売り電源ケーブル一斉比較試聴
〜電源ケーブル17種類の音質比較レポート後半〜
2005.06.09公開
2005.11.16ページを2分割
ページが長くて読みずらかったので、2005.11.15にページを前半/後半に2分割しました。
前半9本、後半8本の試聴結果を掲載しています。前半はこちら

 切り売り電源ケーブル17本を一斉比較試聴レポートの前半に続き、ここでは残り8本分の比較結果を掲載する。巻末には、総括も載せてあるので、切り売り電源ケーブル選びの参考にしていただければ幸いである。なお、切り売り電源ケーブルの現状や、比較試聴に至る経緯、試聴環境については切り売り電源ケーブルの現状 比較試聴に至る経緯 試聴環境】にまとめてあるのでご参照いただきたい。

 今回試聴した電源ケーブルのラインナップを列挙しておく。この後半ページでは、試聴その10〜17までの8本分の試聴感想を記載している。

試聴その01アクロリンク6N-P4020||
試聴その02アクロリンク6N-P4030
試聴その03アクロリンク6N-P4020||ダブル使用
試聴その04ディーバス 14-4CT
試聴その05ディーバス14-4CT+オヤイデC-037+P-037
試聴その06AETGAIA-AC
試聴その07AET SCR-AC
試聴その08アコースティックリバイブPOWERMAX5500
試聴その09S/A LABHIGH-END HOSE PROFESSIONAL(HHS)
試聴その10SAECAC-4000
試聴その11オヤイデ電気Straight Line 2by2
試聴その12富士電線 VCT3.5
試聴その13富士電線VCT5.5
試聴その04フジクラCV-S3.5SQ
試聴その15フジクラCV-S5.5SQ
試聴その16MIT ShotgunAC-1
試聴その17PioneerDV-AX10附属ケーブル


試聴その10
SAEC
AC-4000
定価:\2,800/m 実売最安:\2,130(テレオンサウンド110)
販売店:テレオンサウンド110/木村無線/ヨドバシカメラ新宿西口本店

木村無線で最初にこのケーブルを見かけた時、正直心躍ったものだ。なんという渋い外装シースなのだろう。ちょっと古くさい配色と言えなくもないのだが、黒と茶色の網組メッシュがなんともいい味を醸し出している。メーカーを知ってさらにびっくり。え?あのサエクがついに切り売り電源ケーブルを出したか!サエクと言えば、古くはトーンアームやカートリッジで名を馳せていたが、現在はもっぱらケーブルメーカーだ。キャメロットテクノロジーやスプラの輸入元としても有名。自社製品として、TAP-MATEやTAP-PLUSなどの電源ボックス、PL-1000/PL-2000などの電源ケーブルを製品化している。

さて、今回のお題であるAC-4000に話を戻そう。AC-4000はごくオーソドックスな2芯キャプタイヤ構造にメッシュと透明PVCシースを被覆している。絶縁材、仲介材ともにPVC。金属製シールドは見当たらない。には電磁波吸収膜があると表記されているのだが、この黒茶のナイロンメッシュらしき黒茶メッシュが電磁波吸収膜なのだろうか。端末処理してみても、この黒茶メッシュ以外には特にシールドらしいものは見当たらないのだ。時流からすると、絶縁体にはPVC以外のものを採用すべきではなかったか。導体はφ0.26×37本の撚り線で、導体断面積は2スケア。線材は高純度銅とある。ケーブル外径はφ12。太くもなく細くもなく、中堅どころだ。ケーブルは柔らかい。これは内部構造にPVCを多用したからだ。
この電源ケーブルで不思議なのは、製品の型番だ。サエクのホームページにも、ケーブルシースにもPL-4000(POWERLINK-4000)として表記されているから、製品名称はPL-4000なのかと思いきや、店頭にぶら下がっていたチラシやケーブルを巻いているリールにはAC-4000と印字されている。よって、オーディオ店ではAC-4000として売られている。私が推測するに、AC-4000はリール卸の切り売り販売の名称で、PL-4000とは、今後発売されるであろうAC-4000使用の完成品ケーブルにつけようとしている名称ではないか。であれば、PL-4000の製品説明ページにつけられている値段や説明に納得がいく。
JAZZ:ごくごく平均的。ベースの量感が多いと感じた。全域的に広がりがあるというわけではない。音が中央に集中する感じ。

山下:加もなく付加もなく、ごく普通。色付けのないナチュラルな感じと言えば聞こえがいいが、少し何かが足りない気がする。なんだろう。面白みが無い。普通になっているのだ。

ソフィ:ソフィの声は意外と良い。ただ、音楽の流れがどんよりとしているような気もする。

佐野:まぁまぁ鳴っている。ただ、なんだろう。情報量がやや不足しているような。それなりに鳴っているが、美味しい要素が欠落している。

平沢:やはり音が中央に寄る。広がりが少ないともいえる。

総評:平凡な鳴り方だ。極端に悪いという訳ではないのだが、特に褒められるところもない。広がりが少なく、情報量も多いとは言えない。以前、PL-1000とPL-2000を聴いたことがあるが、その時の印象とよく似ている。

試聴その11
オヤイデ電気
Straight Line
2by2
定価:\3,150/m 実売最安:\2,363(オヤイデ電気)
販売店:オヤイデ電気/ヨドバシカメラ新宿西口本店など

スターカッド構造でノイズキャンセルを計っている。シールド無し。ケーブルは柔らかい。絶縁材にはポリオレフィンを採用しているようだ。ストレートラインシリーズのラインケーブルはずいぶんと凝った構造をしているが、この電源ケーブルは至ってシンプルな作りだ。

ケーブル径はφ9.5。構造的にはディーバス14-4CTと同じなのだが、導体、絶縁体、シースの材質などがずいぶんと違うので、音も絶対違うはずだ。予想、ケーブルが柔らかいので、音も柔らかいのではないかと思うのだが、どうだろうか。導体は第一種OFCといわれる線材。φ0.26×37本撚りが4芯あり、ホットコールド2芯のスターカッド構造。導体断面積は2芯分で2スケア。
JAZZ:ドラムの存在感がある。ピアノもまぁまぁ。それ以外は特に目立つところはない。粘りとかコクのようなものがないので、JAZZにはやや物足りなく感じる。

山下:オーソドックスな鳴り方だ。各パートもきちんと分離している。

ソフィ:ソフィが語りかけてくるようでなかなかに良い感じ。サイドへのパーカッションの広がりも良い。ただ、コクとか旨味とか個性というものは少ないかな。

佐野:音離れはそこそこ良い。各パートの弾力もあり、それなりに楽しく聴こえる。2kHzあたりに少し特徴がありそうだ。

平沢:ほうほう、これはなかなかマッチングしている。やや繊細に響く傾向がある。

総評:素直で癖がない。14-4CTとは正反対の音だ。4020||に似た傾向。柔和な基調だが、表現力を邪魔するようなところはないので、ケーブルの癖を排除したい人向き。どんなジャンルもそつなくこなすだろうが、どれに向いているということはない。私はケーブルに個性を求める方なので、ちょっと物足りないところもある。このケーブルはエージングにおよそ50時間と、他のケーブルより長くかかるらしい。したがって、使用しているうちに変化してくる可能性はある。ま、エージングによる変化はどのケーブルにもありうることなのだが。こういう柔らかいケーブルには、メッシュチューブを被服してやると、レスポンスや解像度が向上することがある。メッシュチューブにはケーブルを仮想的に硬くする効果があり、音調も引き締まってくるのだ。このように、何かしらの手を加えると化けるかも。

試聴その12
富士電線
VCT3.5
定価:?/m 最安実売:\157/m(愛三電機)
販売店:オヤイデ電気/九州電気/愛三電機など

長岡鉄男先生は電源ケーブルやスピーカーケーブルにVCTを愛用されていた。この影響から、長岡派オーディオマニアを中心にVCTの愛用者が多い。VCTとはJIS規格における600V耐圧ビニルキャプタイヤケーブルの規格名。産業向けの強電ケーブルだ。ハイCP好きで高級ケーブル嫌いの先生らしい。一口にVCTと言っても、様々な産業用ケーブルメーカーがVCTケーブルを製造している。私が使っているVCTは富士電線の2芯タイプのもので、灰色の外装シースを有してる。ケーブル外径はφ11.5。ケーブルはかなり柔軟な方で、取り回しに不都合はない。なぜ富士電線かというと、最も入手しやすいからだ。長岡先生は富士電線製を使っておられたようなのだが、箱舟に行って確認した訳ではない。実際に箱舟に足を運ばれた方の情報求む。オヤイデ電気では\325/mだが、秋葉原ラジオセンターの九州電気では\200/m程度で入手できる。愛三電機では10m買いで\157/mとなり、さらにまとめ買いするともっと安くなる。VCTはごくありふれたケーブルなので、わざわざ秋葉原まで出向かなくても、皆さんの近所にある電気工事店でも扱っているかもしれない。

左上写真はVCTのノーマル状態と、私がシールドチューブを被せた状態のもの。素の状態は灰色のシースなのであしかあらず。良い写真がなくてすいません。下の写真も同様に、私がシールドチューブを被せたもので、実際にはノンシールドの灰色シースである。ケーブル外径はφ11.8。導体はφ0.32×45本撚り。VCT3.5m2と表記されてある通り、導体断面積は3.5スケアある。VCTにはこの他にも、1.25/2.0/5.5/8.0など様々な導体断面積のものがあり、芯線本数も2〜4本と様々。オーディオマニアの間では3.5と5.5の2芯タイプが多用されている。コネクターには松下5018とシューター4781を使用した。できれば、他の比較試聴ケーブルと同様、マリンコで統一したかったのだが、全ての試聴ケーブルにマリンコをあてがうと相当お金がかかるので、安上がりに済ませてしまった。
JAZZ:安いケーブルのくせに意外とやるもんだな、というのが第一印象。ピアノの余韻がえらい延びる。ただ、しばらく聴くと、ピアノが少し奥に引っ込んでいるとも思える。極端ではないが、必要な情報量は出ている。

山下:ドラムの厚みがあり、ボンボンと強調される。高域のシンバルはやや控えめだ。超高域への延びの限界は感じる。

ソフィ:平均的だ。ギターが少し控え目になっている。逆にソフィの声が良く聴こえる。

佐野:これもごく中堅的に奏でられている。佐野の声がやや暗いが、落ち着いて聴こえるという言い方にもつながる。

平沢:過不足ない。

総評:このケーブルを何も告げられずに試聴したら、格安強電ケーブルとは気づかないだろう。やや大雑把ではあるものの、快活でフレッシュな印象を受け、好ましい。たしかに、他のオーディオブランドケーブルと比較すると、やや素っ気ないとも感じ。また、高域にかけての抜けの良さに限界があるようにも感じる。ただ、タフピッチ線と適度な導体断面積が相まって、中域にかけての明瞭さ、押しの良さに繋がっている。こういう柔らかめのケーブルにはメッシュチューブなどを被覆し、ケーブルを適度に締め上げてやると良い。私も幾度かVCTにメッシュチューブ被服を施した自作ケーブルを製作し、音質向上を確認している。VCT+メッシュチューブだとCV-Sケーブルと同等のコストになるのだが、VCTはメッシュ被覆しても柔軟性があるので、取り回しがしやすいというメリットがある。狭い場所での取り回しにも苦労しない。ゴリッとしたメリハリ調を好むならCV-Sを選択したらいい。VCTは低コストで脱付属ケーブルをなし得たい人、長岡派、長大な引き回しや、復数のACケーブルを格安で製作したい人に向いている。いずれにしても、VCTの使いこなしにメッシュチューブは有効だ。見た目もよくなるしね。それと、3.5スケア以上のケーブルの場合、数十時間使うことによるエージング効果がかなり期待できる。

試聴その13
富士電線
VCT5.5
定価:?/m 最安実売:\241/m(愛三電機)
販売店:オヤイデ電気/九州電気/愛三電機/東急ハンズ渋谷店/工務店など

上述のVCT3.5と並んで長岡派オーディオマニア御用達の電工ケーブル。VCT3.5との違いは導体径とケーブル外径が違うだけ。

導体はφ0.32×70本撚り。ケーブル外径はφ14.8。太い割に柔軟性は良好。これは被服にPVCを採用していることと、金属シールドなどがないためだ。導体断面積は名前の通り5.5スケアある。導体は4N相当のタフピッチ銅と呼ばれるもので、これもVCTに共通の線材。電工用ケーブルの線材として広く使われているごくありふれた銅線だ。ちなみに4Nとはフォーナインとも呼ばれ、純度99.99%のことで、9が4つ並ぶので4Nとかフォーナインと呼ばれる。逆に言えば、1/10,000程度の不純物が含まれていることになる。不純物は鉄/鉛/酸素などで構成されるようだが、私もそれ以上の詳しいことは知らない。4Nがあればそれ以上の純度のものも当然ある訳で、オーディオ用ケーブルでは6N銅が広く知れ渡っている。6Nとは純度99.9999%のこと。6N銅ともなれば、不純物の除去に莫大なコストがかかるため、価格もとたんに跳ね上がる。7Nや8N銅ともなれば、高度な精製技術が必要であるし、需要も限られるので、さらに高価な線材になる。
写真のVCTケーブルはデンカエレクトロンの赤メッシュを被せたもの。富士電線VCTは本来、先に紹介した写真のように灰色シースである。このVCTケーブルはスピーカーケーブルとして使用していたものなのだが、今回の試聴のために電源ケーブルに仕立て上げ直した。スピーカーケーブルとして使用していた時に装着していた赤メッシュを外すのも面倒なので、そのままにしておいた。プラグには松下WF5018とシューター4781を装着した。ともに電工用プラグ/コネクターだが、オーディオ用としても遜色ない。

JAZZ:ピアノが重厚。ベースの量感がある。シンバルの抜けが頭打ちか。

山下:低域の出方が多い。ドンドン押し寄せる。声は意外と良い。

ソフィ:メリハリあってなかなか気持ち良い。

佐野:これも意外と解像度が高くて好印象。

平沢:バリバリ鳴りまくる。

総評:当然ながら、VCT3.5と似ている。見た目の予想通り、VCT3.5の低域量感を増した感じ。高域はあまり変わりない。値段からしてハイCPに違いない。ケーブルは柔らかいので取り回しは楽。導体が太いので、製作時にはやや苦労するかもしれない。これは導体断面積5.5スケア程度のケーブルに共通して言えることである。使いこなしはVCT3.5と共通。VCTはノンシールドなので、機器やケーブルが混雑している環境ではノイズシールドのために銅平網組メッシュチューブを被せてもいいだろう。

試聴その14
フジクラ
CV-S3.5SQ
定価:?/m 実売:\420/m(オヤイデ電気)
販売店:オヤイデ電気など

産業用部材の老舗、藤倉電線のCV-Sケーブルだ。これは本来、オーディオ用ケーブルではなく、工場やビルなどの配線に用いられる強電ケーブル。オーディオマニアの間では2003年の月刊ステレオ誌短期連載「電源ケーブル自作指南」に紹介されて以降、話題にあがるようになった。私は藤倉CV-Sの非常にメリハリのある音質が気に入って、オーディオ用屋内配線や電源ケーブルに多用している。CV-SはJIS規格で制定されている600Vポリエチレンケーブルの規格名称であり、非常に強固な構造を有している。一口にCV-Sケーブルと言っても各社各様の素材を有しており、シールド材にアルミ箔を採用しているメーカーもあれば、藤倉のように極厚銅箔を採用しているものもある。介在物もメーカー毎に様々で、紙を採用しているメーカーもあれば、藤倉のように合成樹脂繊維を採用しているものもある。CV-Sに共通しているのは、単線並みに太い撚り線構造を有していることと、絶縁材にポリオレフィン系素材を使用していることだ。導体素材はタフピッチ銅線であることも共通している。このように、CV-Sにも様々ある訳だが、私が知る限りでは藤倉のCV-Sが構造的に最も優れていると感じている。藤倉CV-Sは実売\400/m程度であり、オーディオブランドの切り売りケーブルと比べると格安。秋葉原ではオヤイデ電気で入手できる。産業用に広く流通しているようなので、探せばもっと格安で入手できるかもしれない。ちなみに、九州電気や愛三電気でもCV-Sケーブルが売られているが、藤倉電線製ではない。さて、今回の比較試聴では藤倉CV-S3.5と5.5を試聴する。以下はCV-S3.5の試聴結果。3.5は導体断面積が3.5スケア(m2)であることを指しており、5.5は5.5スケアある。

左上はCV-S3.5SQの断面。右上は5.5スケアと3.5スケアと2.0スケアの3種類を比較。3種類とも耐圧は600Vで許容電流20A。外径は5.5スケアがφ15、3.5スケアがφ13、2.0スケアがφ11。ケーブル構造は3種とも共通で、図太いタフピッチ線がポリプロピレン絶縁体で被覆され、さらに充填材を追加した上に銅箔でシールド。外装は艶消しの黒いPVCジャケット。
黒い外装シースと白い紙状の被服に次いで、銅箔が露出する。銅箔は相当厚みがある。銅箔を剥ぎ取ると白い繊維が露出する。藤倉CV-S3.5のケーブル外径はφ12。硬いので取り回しはしにくいが、CV-S5.5よりはマシだ。なお、CV-S3.5にはマリンコ5266+マリンコIEC320を装着した。オーディオメーカーの電源ケーブルとどれほどのパフォーマンスの違いを見せるか、興味のあるところである。さらには、同じ産業用ケーブルであるVCTとの違い、導体断面積が違うCV-S5.5との相違も興味深い。なお、藤倉CV-Sに関しては電工用ケーブル使用自作電源ケーブル その1に詳しく紹介してあるので、ご覧いただきたい。
JAZZ:ベースが前に張り出してくる。弦の弾き具合が手に取るよう。シンバルが適度に乾いていて小気味良い。エネルギーが中低域に集まる感じはある。高域の伸びの良いケーブルと比較すると、高域粗いようにも思うが、これ単独で聴いている分には高域の不足はない。むしろ、高域の乾いた感触はまさしくジャズ向き。

山下:達郎の声が熱気を帯びている。全体的に乾いた、さっぱりした感じを受ける。言い方を変えるとストレート。各音のエッジが立つ。好き嫌いがはっきり分かれるケーブルだと思うが、私は好きだ。シャンシャンとした鈴のような効果音が弾け飛ぶ。気持ち良い。

ソフィ:声は普通。やはりパーカッションとドラムが硬質に響くが、私には心地よい変化だ。

佐野:これもやはりパチンパチンと各音が弾け飛ぶ。CV-Sの特徴がはっきりつかめてきた。ストレートで硬質な音色。ドラムの弾け方がずば抜けている。思わず聴き込む。きつ過ぎて嫌がる人も多いだろう。

平沢:電子音が部屋に充満。鳥肌が立つ。強烈だ。今回、パワーアンプにはCV-Sを固定している。さらにいうと、ブレーカーからのリスニングルームへの配線にもCV-Sを使用している。ソース機器にもCV-Sを使ったことで、CV-Sの傾向が重なったのかも。滑らかさとは正反対だ。

総評:一言で言うと「骨太」である。フジクラCV-S3.5の良さについてはオーディオみじんこで何度も書いてきたので、いまさら改めるべくもない。オーディオ用ではないのに、非常に優れたケーブルだ。値段も安いし。音がストレートに突き抜け、どぎつくエネルギーの固まりが飛び散るような個性的な音がする。好き嫌いは確実にあるだろう。元気の良さではディーバス14-4CTに匹敵する。おこがましくも言わせてもらえるなら、14-4CTは陽気で音楽的な快活さ、CV-S3.5は暴力的で音としての快活さがある。CV-S3.5の使い始めは、上品さがなく、粗っぽく、高域の抜けが寸どまりなので、要エージングである。使い続けると解像度が増し、艶っぽさがかなり加味されてくる。ケーブルが硬いので取り回しには注意が必要。狭い空間で使う場合は、あらかじめ手でしならせたい方向にクセをつけておいてから接続すると良い。バロック音楽など繊細な雰囲気を嗜みたい時には向かない。ロック/ジャズ/テクノなど角が立つと気持ちいい音楽に向いている。ただ、エージングが進むとどんなジャンルでもいけるだろう。CV-S2.0/3.5/5.5を作り揃えると骨太家族が出来上がるか。

試聴その15
フジクラ
CV-S5.5SQ
定価:?/m 実売:\473/m(オヤイデ電気)
販売店:オヤイデ電気など

こちらは前述の藤倉CV-S3.5SQの兄貴分にあたる。ケーブル外径はφ13。オヤイデ電気で\500/m程度で売られているはずだ。以前、このケーブルで自作電源ケーブルを仕立てたことがあるが、そのドスの利いた低音に度肝を抜かれたことがある。

右上写真の一番太いのがCV-S5.5だ。真ん中のCV-S3.5と比べてもずいぶんと違いがある。この藤倉CV-S5.5、値段も安く非常に面白い。外装シースを見た目高級にし、ケーブルのしなりをもう少し柔軟にし、導体を高純度銅にでも変更すれば、オーディオブランドケーブルとして十分通用しそうだ。構造はフジクラCV-S共通のもので、硬い外装シース、極厚銅箔シールドに合成繊維介在物、ポリエステル絶縁材と、オーディオ的な高音質要素が揃っている。導体は針金並みの単線が7本束ねられたような強靭さ。きわめて硬いケーブルなので、取り回しに難がある。狭いスペースで無理に湾曲させようとするとケーブルの反発力で機器のインレットを壊しかねない。広いスペースで取り回しするか、送り側のコンセントと受け側の機器との配線長を考慮した上で、ケーブル製作する必要がある。
JAZZ:ベースが前に張り出してくる。弾力というか、粘りが全体的に支配している。極右的なJAZZ向きの面白い鳴り方。ベース好きの人にいいかも。中興域が目立つゆえ、高域はわずかに控え目。

山下:ロックみたいなバックバンドになっている。山下が矢沢みたいに聴こえる。

ソフィ:業務用ケーブルだが、実用十分。やはりドラムがドスンとくる。良くも悪くも荒っぽい。

佐野:少し音の細かさというものが足りない気もするが、ドカドカと押し寄せてくる。ドラムで支えられ、これはこれで面白い。

平沢:ドスの利いたテクノだ!テクノがヘビメタに変貌した。うーん、ホントにドスドスくるです。

総評:個性的にもほどがある。これは完全に使い方が限定される。まず、私が使ったケーブル中、最も硬く、取り回しは至難である。曲がらない訳ではないが、機器の背面には40cm以上の空間的余裕が必要である。軽い電源タップだと、ケーブルの弾力でタップごと浮き上がる危険性もある。ケーブル自体も相当に重いので、機器のコネクターに無理な力が加わる危険性がある。何らかの方法でケーブルを保持する必要が出てくるかもしれない。それとこの音、相当な色付けというか、中低域にかけての浸透力、押しの強さは半端ではない。粗っぽく、歪み感もあるのだが、それがこのケーブルの個性なので、積極的に楽しむのも一興だ。ゴリッとしたグルーブ感、カウンターパンチを食らいたい人向け。私はヘビメタやハードコア、ノイズ系は聴かないのだが、そうのが好きな人は試してみるといいかも。好みに合えば、これにかなうハイCPケーブルはないであろう。ただし、取り回しには重々注意すること。

試聴その16
MIT
ShotgunAC-1
定価:?/m 最安実売:\36,000/2m(愛三電機)
販売店:オヤイデ電気/九州電気/愛三電機/東急ハンズ渋谷店/工務店など

この電源ケーブルはメーカーブランド完成品の代表としてご登場いただいた。なぜ、このケーブルかと言うと、現在私の手持ちの完成品電源ケーブルがこれしか持ち合わせていなかったためだ。MITはご存知、米国ハイエンドケーブルブランドだ。MITはMusic Interface Technologiesの略。MITと書いて「エムアイティ」と呼ぶのだが、マニア筋では「ミット」とあだ名して読んでいる。「ミット」という呼び名が本国でも通用するのかは定かではない。Shotgunシリーズは同ブランドの電源ケーブルの中堅クラスに当たる。上位にはMagnamシリーズ、最上位にはOracleシリーズがある。ShotgunAC-1はShotgunシリーズにラインナップされているZ-circiut(ケーブル中間に接続されている黒い箱)が1つのモデル。Z-circiutが2つ搭載されているモデルはShotgunAC-2と呼ばれる。輸入元であるナイコムの方によるとノイズ環境がひどくなければZ-circiutは1つで十分だとのこと。私自身も福田屋ケーブル試聴会でShotgunAC-1とShotgunAC-2を聴き比べたが、極端な差異は感じられなかった。ShotgunAC-1およびShotgunAC-2が、この試聴会で抜群のパフォーマンスを発揮したので、その後、中古販売されているのを見かけ購入した次第である。なお、MITの電源ケーブルはオーディオ店の中古ではほとんど見かけることはない。非常に高度な再生能力を有するMITだが、残念なことに、現在は電気用品安全法の絡みで表立っての販売は禁止されている。(2005.6時点) 電安法による販売停止と入れ替わるように、ヤフオク上での個人輸入販売が盛んになっている。それだけ、MIT電源ケーブルの人気があるということなのだろう。ナイコムはMIT電源ケーブルのPSE認証を取得する方向で動いているらしい。しかしながら、2004年夏頃には取得できると言われていたPSE認証はいまだ取得できずにいるようだ。だから、オーディオ店に行ってもMITの電源ケーブルを店頭で見かけることはない。どうしても欲しければ、ヤフオクかネット通販店を探すか、オーディオ店の店員さんに交渉してみることだ。 

さて、ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、こちらがShotgun AC-1。ケーブル長は1.8m。MITにおいては中堅クラスなので、コネクター側はモールド一体型となっている。ACプラグは本来、レビトン5266を装着しているのだが、私は手持ちで余っていたレビトン8215PLCに換装している。5266と8215PLCは構造的にはほぼ同じ。透明ケースの8215PLCの方が見栄えがいいというのがある。厳密にいうと、透明ケースの方が硬質なので、音調も引き締まってくるということはある。なお、8215PLCには通電の有無を知らせる緑色LEDが仕込まれている。LEDは簡単に外すことができる。LEDを外した方がS/Nが向上するという話もあるのだが、私はそのままにしておいた。
自作系オーディオマニアの悪い癖。それは完成品をばらしてしまうこと。これはショットガンAC-1のプラグを外した端末の状態。導体は撚り線で、端末はほどけないようハンダで固められている。導体の直径はφ2.0=約3スケア。グランド線にはドレイン線が合流している。
試聴もぶっ続けでおこなっているため、だんだん疲れてきた。

JAZZ:さすがはMIT。音抜けがよく、ピアノのタッチが小気味良く表現されている。ギター、パーカッション、ベースの存在感がリアル。低域が薄いが、それを補って余りあるものがある。

山下:達郎がのびやかに歌っている。パートが綺麗に分離して、情報量も多いのがMITの特徴と見た。解析的という印象。福田先生の電源ケーブル試聴会で感じたことと同じ。

ソフィ:ソフィがマイクの前で歌っている姿が見えるようだ。耳に聞こえるか否かくらいの超高域の延びがストンと落ちているようにも聴こえるが、それは他の部分で補っている。きちんきちんと整理された音を出してくるので、音楽的なケーブルなのかといわれたら、微妙なところもあり、好き嫌いが分かれるだろう。

佐野:ドラムがえらく軽快に弾む。痛い一歩手前。うん、これはこれで好ましいと思った。角が立って刺激があり、心地よい。パーカッションもパンパンシャッシャッ切れまくる。

平沢:これも同じ。PA-2のモニター調と言うか、PA的な特徴を助長している。おー、高域が切れまくるなぁ。部屋全体がライブハウスのようだ。近所迷惑はなはだしい。

試聴その17
Pioneer DV-AX10附属ケーブル

最後に、試聴機器に付属していたDV-AX10付属ケーブルを試聴しておこう。付属ケーブルなので、小売りはしていないのであしからず。付属電源ケーブルにしては割としっかりしており、ケーブル外径はφ10 ほど。導体素材や導体断面積は不明。この太さからすると、導体断面積は2スケア程度の撚線と思われる。外装シースに6Nであるとかの表記がないため、導体素材は一般的な4Nタフピッチ銅線だろう。構造的には、一般的な2芯ノンシールドキャプタイヤ構造と推察される。

JAZZ:ピアノが冷たく、ちょっと寂しげ。これは情報量不足からくるものかも。全般的にはオーソドックスに鳴る。山下:達郎の声が透明でよく聴こえる。ギターの響きが何故かふらついている気もする。元気いい。高域は普通。

ソフィ:特にどうということも無く、良く綯っている。面白味はない。分離が悪いようで少し団子になる。

佐野:軽いドラム。弾む。声は少し引っ込むが、切れは中堅。

平沢:中域が厚い。低域は量感あるが、ややどんよりしている。高域は程ほどに良い。刺激少ない。

総評:中堅的な鳴り方だ。レスポンスはやや弱い。刺激感が少なく、清涼な印象。面白みはない。付属ケーブルはでも悪くはないが、あくまでおまけと考えたい。

ー総括ー

私が今回の試聴で気に入った切り売り電源ケーブルは以下の5品目。

試聴その04ディーバス 14-4CT

試聴その06AETGAIA-AC

試聴その07AET SCR-AC

試聴その08アコースティックリバイブPOWERMAX5500

試聴その04フジクラCV-S3.5SQ


14-4CTとCV-S3.5は好みであることが試聴前から分かっていたが、
SCR-ACは期待を大きく上回った。非常に艶やかで声に色気が出る。
予想に反して良かったのはPOWERMAX5500だった。
爽やか、穏やかで、包み込むような感触が心地よい。
これらの切り売りケーブルは今後、さらなる追求をしてみたい。
プラグ/コネクターとの組み合わせを吟味するなど、まだまだやるべきことは多い。

ケーブルを強化するなどの処置を施せば、イケるではないかと思ったのは以下の5品目。
これらのケーブルはケーブルの防振処理、メッシュチューブによる締め上げ処理などを施し、
可能性を探る。実はこれらケーブルにはすでに強化処理を施し、かなりの音質向上を得ている。
近い内にその概要を公開しよう。

試聴その01アクロリンク6N-P4020||

試聴その02アクロリンク6N-P4030

試聴その11オヤイデ電気Straight Line 2by2

試聴その12富士電線 VCT3.5

試聴その13富士電線VCT5.5

以上、私の主観による切り売りケーブル比較試聴の感想でした。
好みの音楽や所有するオーディオ機器は千差万別なので、
このレポートがそのまま皆さんの環境に当てはまるか確証は持てないけど、
切り売り電源ケーブル毎の方向性の違いは感じていただけるかと思います。
さぁ、皆さんも電源ケーブル自作してみてはいかがでしょう。
そこには幾多の困難と大いなる喜びが待っているはず。

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