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2005.1.21公開!
オーディオみじんこ Colossaltowerの製作 その5:完成と試聴 T氏の依頼を受け製作したバーチカルツインスピーカーがようやく完成にこぎつけた。製作過程は上のリンクからご覧いただける。このスピーカーの製作には正味60時間の時間と40の行程を得ている。要した日数は2週間だ。ユニットの選択は抜かりなく、エンクロージュアも頑丈そのもの。 |
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漆黒のエンクロージュアにFE208EΣの白いコーン紙が映える。ほぼ満足のいく出来上がりになったと思う。自作ならではの独特の存在感は表現出来たと思う。 寸法はH1,290×W300×D350。ご覧の通り、かなり背の高いスピーカーになっている。巨大な塔かビルのような面持ちなので、「Colossaltower」と命名することにした。巨塔という意味である。名前をつけることで、自分自身どの工作なのか判別しやすい。黒いので「Black-Colossaltower」としようとも考えたのだが、これを日本語訳すると「黒い巨塔」となってしまう。これでは「白い巨塔」を文字ったんじゃないかと思われそうなので「Colossaltower」という名前に留めておいた。「Colossaltower」の重量は42kg/本。この大きさのスピーカーとしては重い方だ。ユニット10kg+エンクロージュア17kg+錘り砂15kgとなっている。フロントバッフルは15mm厚を2枚重ねにして計30mmの厚みを有している。前面が幅270mm、もう1枚が幅300mmと、幅を違えたフロントバッフルを2枚重ねにしているので、両端に15mmづつの段差ができている。これはデザインを考慮した結果だ。ただののっぺらぼうじゃ面白くないからね。 | |||
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Colossaltower背面の状態。ダクトの状態がよくお分かりいただけると思う。7つの穴の内、中程の5つがダクトで、上の穴にはスピーカーターミナルを取り付けている。下の穴は錘り用の砂投入口となっている。穴はゴム栓で塞いである。ま、スピーカーの設置時に背面は見えなくなってしまうので、背面を凝っても仕方ないように思うかも知れないが、このデザインは構造的に思案を巡らせた末に導きだされたもの。 | |||
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FE208EΣを正面から眺める。HP形状と言われるフォステクス独自の立体的なコーン紙形状が確認できる。暗いのでちょっと分かりにくいが、エッジ部分にはタンジェンシャルエッジと呼ばれる渦巻き状の凹みが付けられている。実はエッジにこのような凹みを付けたのはテクニクスが最初である。テクニクスSB-M10000に使用されたユニットのダンパーにはたしかに渦巻き状の凹みが付いている。フォステクスはこのタンジェンシャルエッジをFE208ES(前期型)で初採用したのだが、テクニクスから特許侵害のクレームがついたらしい。そこで、フォステクスはテクニクスの特許に抵触しないよう微妙な改良を加え、FE208ES後期バージョンが発売されたと言うのだ。具体的には、大きな渦巻き状の凹みはそのままに、凸部分に細いスジを付けたのだ。あくまでうわさなのだが、某有名クラフト店の店員さんの話だから信ぴょう性は高い。話が逸れたが、次はスーパーツイーターT90Aについて。T90Aはフォステクスの現行スーパーツイーターの売れ筋であり、小型中型スピーカーに好適なツイーターだ。今回はこれをエンクロージュアに組み込むと言う荒技を敢行したのだが、ご覧の通りうまく固定出来た。T90A周りのバッフルはR状にラウンドさせている。なぜこのようにしたかというと、コイズミ無線の店員さんのアドバイスがきっかけとなっている。店員さんによると、T90AにしろT925Aにしろ、フォステクスの現行スーパーツイーターはホーン部分が短く、もう少しホーンを延ばさねばならないところ、途中でストンと切れているというのだ。その部分で回析現象が起き、音が乱れるとか。だから、理想的にはホーン部分を延長するようにバッフルにアールをつけると良いだろうと言うのだ。具体的には、フェルトを積装して擬似的なホーン形状にするのがやりやすいだろうとのこと。なるほどと思ったが、バッフルにフェルトが貼り付いているのはなんともカッコ悪い。それに、今回のスピーカーはツイーターの上下にフルレンジユニットが近接して取り付けられることになっているため、フェルトなんかで段差をつけるほどの構造的余裕がないのだ。であれば、バッフルをホーン状に削ってしまえ!というわけで、ツイーターの取付穴周辺を横長のホーン形状に加工したのだ。おかげでデザイン的にも良いアクセントにもなったと思う。このホーン形状の加工が実際に機能しているか否かは分からないのだが。横に広がったホーン形状は縦方向の指向性を強めることになるので、試聴位置が多少上下に動いても一定の指向性が得られるはずなのだが、どうなんだろう。 | |||
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スピーカーターミナルポートの状態。バイワイヤーにするほどでもないので、シングルワイヤーとしている。依頼者のT氏はサンスイの名機AU-07アニバーサリーを使用されているそ。この機種はスピーカー出力が1系統となっている。であれば、なおさらシングルワイヤーで良いだろう。もちろん、1系統でもバイワイヤできるのだが、フルレンジ+スーパーツイーター構成であれば、無理してバイワイヤにする必要はない。右上は天板の様子。 | |||
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明るい野外で写真を撮った。ユニット周りはこんな感じ。右上は出来上がったスピーカーとみじんことの記念撮影。私は身長166cmなので、このスピーカーがいかにノッポか良く分かる。ノッポだけれども、スピーカー底面には15kgもの砂が入っているので、安定性は良い。
さぁこれから肝心の試聴がこれから始まる。さてさて、どんな音を奏でてくれるのか。自作スピーカーで最も心踊る瞬間がやってきた。まず、完成初日。夜だったので、ボリューム位置はほどほどに数枚の愛聴盤CDを立続けに再生した。定位感の良い音と言うのが第一印象。繊細感が際立っている。私のPA-2とは対照的な鳴り方だ。 |
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翌日、朝っぱらからXLOのバーンインCDを掛けた。配線が間違って逆相になっていないか、どのくらいまでの周波数をきちんと再生できるのかなど、これ1枚で様々なチェックが行える。それよりなにより、このCDの大目玉はテスト用トラック9.にある「バーンイン・トーン(エージング)15分」だ。広範囲に及ぶ周波数を織りまぜたノイズが「ザザザザ グワ〜ン グワ〜ンキュイーン キュイーン」とただひたすら鳴り続く。このバーンイントラックを大音量でループ再生し続けるとエージングが急速に進むそうである。 | |||
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そんなわけで、家族で外出している数時間、このバーンイントラックを連続再生しておいた。ただ、私の家では近所への騒音苦情を配慮して、あまり大音量で鳴らせない。だから、このCDでエージングが進んだのかどうか分からない。バーンイントラックを他人が聞いたら、なんだこの家は?なんか変な機械でも動かしているのか?と思われるに違いない。右上が試聴に使ったCD。普段良く聴いているお気に入りだ。いちいち説明するのが面倒なので、盤名は割愛。ポップス、テクノ、ジャズ、クラシック、ボーカル、ロック、インスツルメンタル、環境音楽、ラウンジなどである。
昼過ぎに帰宅し、ボリュームを上げて本格的な試聴を始める。スーパーツイーターとフルレンジのつながりも良いし、非常に繊細な音色を奏でている。ボーカルものの再生においては、収録部屋の空間の広さが分かるようなエコーの広がりを感じる。このスピーカーは高性能スーパーツイーターT90Aを内蔵しているので、高域の繊細感が格別。ツイーター軸上正面に耳を持っていくと、パッと音が飛んできて、眼前に音像がポンポン浮かんでくる。俗に言うスイートスポットがはっきりしている。T90Aの指向性はかなりきついようだ。T90Aのハイパスは0.47マイクロFでちょうど良かった。ちなみに、T90Aは正相で配線している。次に低音の出方について。このスピーカーのメインユニットであるFE208EΣは本来バックロード向きのハイ上がりのユニットだ。FE208ESやFE208SSほどではないにしても、資料を見るとややハイ上がり気味。よって、バスレフ形式だと低音が不足するのではと懸念していた。しかし、実際に鳴らしてみると低域の量感は十分。ただ、FE208EΣは真っ当にフルレンジ動作させているので、強烈な重低音は苦手のようだ。なお、FE208EΣというユニットはエージングにかなり時間のかかる傾向があるらしい。これはタンジェンシャルエッジを有するフォステクス製20cmユニットに共通のようである。熟れてくる(エージング)までに数カ月は要すると思われる。実際、新しいユニットにありがちな、なんとなくカサカサと引っ掛かった感じがある。それなりの音量で使い込んで、ダンパーや振動板が熟れてくれば解消されるだろう。 ユニットや内部配線材とともに、エンクロージュア自体のエージングも進んでいく。これは時間経過とともにボンドが完全に乾燥して接着強度が増すとともに、板の接合時に生じた歪みが解消されていくためだ。 ダクトもきちんと動作しているようだ。fdは80Hz近辺のはずだ。低域を余り欲張っていないのである。ダクトは長さ100mm、内径75mmのものが5本。ずいぶんと短いダクトと思われるかも知れないが、ハイ上がりユニットをバスレフで使うには短かめのダクトが良い。5本のダクトの総面積はFE208EΣの振動板面積の55%に及ぶ。これはこれでダクト断面積が大き過ぎやしないかと思われるだろうが、ハイ上がりユニットにはこのくらいでちょうど良い。低音がだぶついているようなら、穴を1つづつ塞いでけば良いのだ。もし、ダクト開口が1つだけだとこうはいかない。ダクトを複数に分散させたのにはこのようなことを配慮したからでもある。 さて、一通りの試聴を済ませたら、最後の仕事、梱包作業に入る。これがまた大変。でかいし重い!段ボール箱を幾つもつなげて、全体を覆っていかなければならない。もちろん、緩衝材(プチプチ)も織りまぜながら梱包していくのだ。3時間ほどを要し、2本とも梱包し終えた。これほど大きくて重いものは貨物便で送らざるを得ない。私はクロネコヤマトのヤマト便を利用した。指定日に自宅まで集荷に来てくれるのでとても楽だ。配送も無事に終え、後はT氏の手元に着くのを待つのみ。 配送して3日後、T氏にスピーカーが届いた。重量物のため、設置には相当ご苦労なさったようである。下の写真はT氏からお送りいただいた「Colossaltower」の設置状況である。東京からはるか離れた主人の元で、このようにきちんと佇んでいるスピーカ−の姿を見るのは嬉しくもありつつ、摩訶不思議な感覚だ。 さて、無事にスピーカ−も届いたところで、気になるのはT氏がこのスピーカ−をお気に召していただけたかどうかである。設置の当日に早速ご試聴いただいたようで、T氏よりご感想メールを幾つもいただいた。その中から少し抜粋させていただくと・・・ 「・・・届いたスピーカの重さは予想はしていましたが、それ以上でした。業者の方と一緒に車から降ろすのを手伝いました。・・・たった今、ようやく私の部屋におさまり、スイッチが入ったところです。・・・SACDサンプラーCDをかけてびっくり、今まで聴こえなかった音が聞こえてきました。やっぱり音が生きています。明日は、職場の友人が試聴に来るようになっています。これを聴いてなんと言うか楽しみです。本当に有難うございました。これを機会に、またまたオーデイオの世界にはまっていきそうです。・・・」 「・・・ようやく部屋も少し落ち着き、今、ゆっくりと音楽を聴いています。音の輪郭といいますか、SACDを聴いた時に特にはっきりとわかるようです。大変満足しています。今後、エージングが進んでいくのを楽しみにしています。・・・」 「・・・コーラスのきれいさと、その迫力に圧倒されました。結果オーライというところですが、このスピーカー、あらためて感激しています。すごい音です。初めて体感しています。・・・」 こういう感想をいただけると、正直嬉しい。自分の生み出したもので驚きや感動を感じてくれる、これは製作者冥利に尽きるというもの。新たなものを生み出すための励みになるのだ。今回のスピーカー製作では様々な試みも験せたし、自分自身の経験値も増えた。ご依頼いただいたT氏には改めて感謝である。「Colossaltower」を末永くご愛用いただければ、これほど嬉しいことはない。 最後に「Colossaltower」の製作に要した材料と製作過程を列挙しておく。スピーカー本体の実制作は累積61時間。梱包を含めると64時間だ。これも当初の予想通り。 |
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「Colossaltower」の材料代一式
(手持ち材料の利用や使用した工具類は省く) |
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用途
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品名
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購入先
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税込み価格
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スーパーツイータ | FOSTEX T90A×2本(中古) | オーディオユニオン新宿店 |
\19,950
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フルレンジ | FOSTEX FE208EΣ×4本 | スピーカ−工房コイズミ無線 |
\65,520
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ハイパスコンデンサー | FOSTEX CS0.47uF×2個 | スピーカ−工房コイズミ無線 |
\3,926
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スピーカー箱内吸音材 | ニードルフェルト×1枚 | スピーカ−工房コイズミ無線 |
\787
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スピーカーターミナル | ノーブランド×4個 | 小沼電気 |
\1,960
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背面バスレフダクト | 紙ボイド管1m×1本 | 東急ハンズ渋谷店 |
\1,113
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内部配線不足分追加 | ortfonSPK-3100×1.1m | キムラ無線 |
\850
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サブロクシナ合板21mm×2枚/15mm×1枚/カット代/送料 | 東急ハンズ渋谷店 |
\35,836
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板材切り口隠し用 | シナテープ15mm×13m | 東急ハンズ新宿店 |
\1,638
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板材切り口隠し用 | シナテープ22mm×9m | 東急ハンズ新宿店 |
\1,606
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ツイーター固定仕掛け用 | M4鬼ナット×4個 | 東急ハンズ新宿店 |
\100
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ツイーター固定仕掛け用 | M4ネジ60mm×4本 | 東急ハンズ新宿店 |
\126
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砂投入口封入用 | ゴム栓13号×2個 | 東急ハンズ新宿店 |
\263
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スピーカー箱底面重し用 | 川砂30kg×1袋 | 近所の建築資材店 |
\577
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スピーカー箱塗装用 | エコウッドステイン1L×1缶 | 東急ハンズ新宿店 |
\2,888
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スピーカー箱仕上げ用 | ラッカースプレー黒×1缶 | ユザワヤ吉祥寺店 |
\609
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板接着用木工ボンド | タイトボンド×1本 | 東急ハンズ渋谷店 |
\430
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スピーカー箱研摩用 | 耐水ペーパー2000番×4枚 | 東急ハンズ新宿店 |
\524
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スピーカー箱整形用 | 紙ヤスリ180番×5枚 | 東急ハンズ新宿店 |
\336
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スピーカー箱整形用 | 紙ヤスリ320番×5枚 | 東急ハンズ新宿店 |
\336
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梱包用 | クラフトテープ×1巻 | 近所のコンビニ |
\208
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材料計 |
\139,683
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「Colossaltower」の製作行程
(設計や材料調達に要した時間は省く。) |
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1日目2h | 梱包開封/ツイータ固定板 | ||
2日目3h | フロントバッフル接着/木口テープ接着 |
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3日目3h | フロントバッフル接着/木口テープ接着/補強板のくり抜き加工 | ||
4日目3h | 木口テープ接着/側面板と補強板と底面板と底板の接着 | ||
5日目4h | 側面板と補強板と底面板と底板ダクトの接着/ダクトへの吸音材接着/整リアバッフルへの接着 | ||
6日目12h | 側面枠とフロント板の接着/リアダクトへの吸音材接着/ダクト整形とリアバッフルへの接着/ツイータ固定板加工/パテ盛り修正 | ||
7日目10h | ツイーター固定板接着/ターミナル取り付け穴と砂投入穴の貫通/リアバッフル接着/パテ盛りヤスリがけ整形/ツイータ取り付け穴ラウンド削り/全体をヤスリがけ研摩/塗装1回目 | ||
8日目6h | パテ盛りヤスリがけ整形さらに修正/塗装2回目/全体をヤスリがけ研摩/塗装3回目/スピーカーケーブル分解配線材カット | ||
9日目4h | 塗装4回目/全体を研摩/ターミナルへの内部配線ハンダ付け | ||
10日目3h | ツイータ取り付け板さらに修正/スピーカーボックスへのターミナルの取り付け | ||
11日目4h | コンデンサーハンダ付け/ユニットへの配線ハンダ付け/ユニットの取り付け/音出し確認 | ||
12日目3h | 砂の乾燥/小音量再生(制作時間に時間含めず1h) | ||
13日目1h | 砂の投入 | ||
14日目3h | 木口テープの一部補修/一部再塗装と再研摩/中音量再生試聴(制作時間に時間含めず3h)/バーンインCDによるエージング(制作時間に時間含めず5h) |
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15日目3h | 中音量再生試聴(制作時間に時間含めず1h)/梱包 | ||
計64h | |||
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