オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオアクセサリー
電源ボックスSaturnian Moonsの製作
その7:試聴の準備

幾多の苦難と試行錯誤を乗り越えて、ようやくステンレスプレート電源ボックスが完成した。今回製作した電源ボックスは12台。パーツの一斉比較実験をおこなうために、1台毎に仕様を替えている。比較試聴部分以外の基本的な部材は全て同じであり、製作も同時進行していったので、工作上のばらつきは極めて少ないと思う。そんなわけで、パーツ毎の音質変化を純粋に捉えられるだろう。

上はオーディオルームに並べられたステンレスプレート電源ボックス。これから1台ごと綿密な比較試聴をおこなう。

【比較試聴の項目】

比較試聴するのはIECインレット7種類、内部配線3種類、内部配線の配線方法2種類、制振処理4種類。IECインレットは当初、8製品を予定していたが、内部配線のハンダ付け時に山手電研AP300-2B-1-Nが破損したため、7製品の比較試聴となった。試聴項目の詳細は下表参照の事。

IECインレット7種類
メーカー
型番
特徴
ニコオン NC174-10N-C ニッケルメッキ
ニコオン NC174-10N-A-F6.35 ファストンタイプニッケルメッキ
オヤイデ電気 IEC 320INLET ニコオンNC174のロジウムメッキバージョン
平河ヒューテック CM-11 ニッケルメッキ
平河ヒューテック CM-11金メッキ 金メッキ
フルテック INLET-G 金メッキ
フルテック INLET-R ロジウムメッキ
内部配線材3種類
東日京三電線 EM-EEF2.0 単線。PE絶縁/シース。導体純度不明。
品川電線 VVF2.0 単線。PVC絶縁/シース。導体純度不明。
古川電気工業 PCOCC1.6 単線。単結晶状高純度無酸素銅。
配線方法2種類
インレットからコンセント毎への3分岐配線。並列配線。
インレット-コンセント-コンセント-コンセント配線。直列配線。
ケース内部制振処理4種類
制振合金ツァウバーワイヤーφ2.2+サーモウール
制振合金ツァウバーワイヤーφ2.2のみ
サーモウールのみ
なし

【試聴環境の準備】

試聴環境の整備にはできる限り注意を払った。設置や配線がいい加減だと、実験にも支障をきたす。

電源ボックスは迅速に取り替えられるよう機器の前面に設置。床の上に直置きするのはさすがにまずい。お世辞にも、みじんこオーディオルームの床は強固とは言えず、スピーカーの振動がモロに床に伝わってくるのだ。何かベースになるものはないかなーと考えてみたらば、あるではないか!いいものが。最近、出番が無くて放置していた御影石オーディオボード。450×600×20の石板だ。これは元々、レコードプレーヤーのボードとしてオーディオラックの最上段に載せていたのだが、今は使わずに外しているのだ。このボードを床に設置してみた。ただ、この状態ではスピーカーからの床振動は全然防げない。床振動のシャットアウトには軟質系のシートを挟んでやる必要がありそうだ。そこで、キタリアの滑りとめシート「アンティ」を使ってみた。アンティーの透明タイプはオーディオユニオン系列店で「オーディオスパイダーシート」という商品名で売られている。値段は同じ。400×1,150で1,700円くらい。アンティーは折畳まれて箱に入っているので折り目が付いてしまっているが、オーディオスパイダーシートはロール状に丸めてパッケージングされているので、折り目がついていないので敷きやすい。
キタリア滑り止めシートを床に貼付けてから御影石をセットする。床と御影石の間に挿み込んでやるのだ。これは確かに効いている。御影石を触ってみても振動はほとんど伝わってこない。
試聴電源ボックスへ電力を供給する電源ケーブルはブレーカーから直接引っ張ってきている。ケーブルは藤倉電線のcv-s3.5。ブレーカーから長さ10mで引いている。このケーブル配線は普段、オーディオラック最下段内臓電源ボックスに直結している。
ケーブルには一定間隔でフェルトを巻き付けている。さらに、レクストのRSCUBiCに載せているので、床からの振動は伝わりにくくなっている。

試聴電源ボックスから各機器への電源分配には長めのケーブルを3本使用。写真左上にある一番上の青い電源ケーブルは今回使用していない。CDプレーヤーVRDS25XSにはMITのShotgunAC-1を使う。ShotgunAC-1はみじんこお薦めのハイCP電源ケーブルだ。アンプは高域と中低域に振り分けるバイアンプ駆動をおこなっている。そのため、アンプ用に2本の電源ケーブルを使うことになる。高域用のB-2103MOSVintageには藤倉電線CV-S3.5使用の自作電源ケーブル(作品名:SkyDiving)を使用。一番下の青いケーブルがそれだ。中低域用B-2103MOSVintageには品川電線VCT3.5使用自作電源ケーブル(作品名:Bacardy)を使用。これは写真中の朱色のケーブルである。なお、ライン伝送にはプリアンプは仲介せず、VRDS25XS からB-2103MOSVintageへの直結配線としている。VRDS25XSのRCA出力を高域用B-2103へ、VRDS25XSのXLR出力を中低域用B-2103に配線。このような配線方法でCDPからパワーAMPへのバイアンプ駆動を実現している。B-2103MOSVintageには簡易的なボリュームとセレクターが付いているため、ソース機器との直結が可能だ。できれば、手持ちのプリアンプPRA-2000ZRを挟みたいところだが、配線関係の都合により現在は外している。

次は、電源ボックスのエージングだ。1台毎に2時間ほどの鳴らし込みをおこなった。6個口全てのコンセントに電源ケーブルを挿し、これらに繋がれたオーディオ機器を全て動作させる。2時間のエージングでは足りないかもしれないが、数が多いのでこのくらいが限界。数が多いのでエージング作業だけで丸2日ほど要している。

【試聴ソフトの紹介】

さて、エージングも一通り終了し、いよいよ電源ボックスの一斉比較試聴の日を迎える。じっくりと丸一日掛けて実験する。

試聴に用いたソフトは3種類。左上は私が愛聴しているソフィーB.ホーキンスのアルバム「WHALER」。ソフィーの2枚目のアルバムで1999年の発売だ。4曲目の「As Lay Me Down」を聴く。ソフィーはけっこうマイナーなアーチストだが、女性ボーカルが好きな人にとってはかなりお勧めのアーティストだ。ソフィ−の声は冷たさと愛らしさが同時に押し寄せる感じで、私の心にジーンと染み入る。録音も綺麗なので、オーディオの試聴ソフトとしても常日頃愛用している。真ん中はオーディオファイルご用達の「さよならToday」。ジャズサックス奏者矢口博康のソロアルバム。オーディオ評論家の方々もこのソースでのレポートを頻用されている。演奏もしかりだが、録音が良いという触れ込み。私は12曲目の「鉄の舟」を試聴に利用した。ソフト屋よりむしろオーディオ店での扱いが多いディスクだ。確かに音はいいし、陽性ジャズサウンドが聴いていて楽しい。私はジャズをあまり聴かないのだが、多少はオーディオマニア受けしそうなソフトを加えておこうと思い、試聴ソフトに加えた。使ってみて思ったが、このソフトは確かに比較試聴向きですな。機器による変化がとても分かりやすい。なお、このソフトはSACDとCDのハイブリッド盤だが、再生機にはVRDS-25xsを使うので、CD再生となる。3枚目はオコラの民族音楽。ユーゴスラビアの民族音楽の生録だ。12曲目を使用。男の子の声楽のみというシンプルな曲。オコラといえば、長岡先生ご推薦の民族音楽レーベルだ。高温質な生録を特徴とし、世界の民族音楽を順調にリリースしている。このソフトの大部分は壮絶な楽器演奏盛りだくさんであり、できればそのような楽曲での比較試聴が望ましい。しかし、防音がいい加減な賃貸マンション暮らしの私にとっては、近所迷惑にならないような穏かな楽曲を選ばざるを得ない。とほほ。それと、いま思い返してみるとオコラで選んだ曲は単純すぎて比較試聴に不向きだった。自分が普段から好んで聴いているCDにしておくべきだった。

この3枚のソフトを用い、試聴をおこなう。なお、試聴日の早朝から試聴開始までの3時間ほど、適当な音楽を鳴らし込み、機器の状態を安定させておいた。試聴の流れはこうだ。ソフト3曲試聴→機器の電源を落とす→電源ボックスの電源ケーブルを抜く→次の電源ボックスを設置→電源ケーブルを挿す→機器の電源を入れる→ソフト3曲試聴→・・・。これを繰り返す。
その6
試聴の準備
オーディオみじんこへ戻る
わが愛しのオーディオアクセサリーへ戻る