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オーディオみじんこ
わが愛しのオーディオアクセサリー 電源ボックスSaturnian Moonsの製作 その5:内部配線作業 プレート研磨とケースが出来上がったら、次は内部配線作業に取り掛かる。ここも色々と解決すべき難問があって、試行錯誤を繰り返しつつ作業を進めた。なお、今回の電源ボックスの重要なテーマは構成パーツの音質比較実験である。これは同じものを複数台製作するから可能なことだ。その3の項でも紹介したが、IECインレット7種と内部配線材3種、防振対策3種、それに配線方法2パターンの違いによる音質比較実験をおこなうことにしている。このテーマに沿って、12台それぞれにパーツの仕様を違えている。 【IECインレットへの単線取り付け】 まずはIECインレットへの内部配線ハンダ付け作業について説明する。今回の電源ボックスでは接点劣化を最小限にするため、インレット内部電極から個々のコンセントに個別分岐で配線することにしている。内部配線にはEM-EEFなどの単線を使うことにしている。しかも、コンセント毎の音質を一定に保つため、インレット内部電極から個々のコンセントに直接分岐配線することにしている。つまり、インレットのホット/コールドそれぞれの内部電極に3本の単線をハンダ付けすることになる。その際に問題となるのが、インレット内部電極の大きさと配線の固定方法だ。 |
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左上の写真を見ても分かる通り、IECインレットの内部電極は小さい。幅4mmほどだ。これは細めの撚り線を1本だけハンダ付けすることを前提としているためだろう。また、フルテックとIeGO社の一部の製品を除き、IECインレットの多くはハンダ付けによる配線を想定している。こんな小さな端子にφ2.0単線を3本もハンダ付けするのは至難の業。たしかに、インレット内部電極から複数本分岐配線するなんてメーカーは想定していないから致し方ない。内部電極へ3本の2.0単線をいきなりハンダ付けしてしまおうとすればできなくはない。しかし、この作業自体かなり難しく、長期的な固定強度にも不安が残る。そんなわけで、3本のφ2.0単線をインレット内部電極へ確実にハンダ付けするには、裸圧着端子もしくは裸圧着スリーブを仲介させた方が無難。ただし、音質劣化を招きそうなスリーブは避けなければならない。となると、スリーブの材質は非磁性体である真鍮か銅が望ましい。右上の図をご覧いただくと分かる通り、φ2.0単線を3本束ねるとその最大径はφ4.2となる。スリーブの内径はφ4.2以上必要だ。さて、私の圧着端子探しの旅が始まる。 | |||||||||||||
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様々な構造的には、小さなインレット電極を挿み込めるような端子が望ましい。電極を物理的に挟み込めれば、ハンダ付け作業がやりやすいし、ハンダ付けも最小限で済むため、音質劣化要因を最小限に抑えられるためだ。スピーカ−ユニットへの配線に用いられるファストン端子がこれにあたる。これらの要点を総合すると、ケーブル適合径φ4.2の非磁性体ファストン端子があれば理想的。秋葉原を散策し、ネットで調べ、ホームセンターなども駆けずり回った。様々な圧着端子を掻き集めてみたのだが、私が想い描いているような理想的な端子は見当たらない。ファストン端子といえばトリッテック製のものがスピーカ−クラフト店で売られているが、大きくてもφ3.5までしかなので、これではφ2.0×3本を挿入できない。そんな中、これならなんとか使えそうだなという製品を見つけた。それが写真右上の純銅製金メッキ円型圧着端子。型番はTL8-M4R50という。もちろん、ケーブル口はφ4.5ある。\150/個と、一般的な圧着端子の4倍ほどもする。それもそのはず、普通のパーツ店で売られている圧着端子とは出来が違う。厚みもあって頑丈そのもの。これは秋葉原ラジオ会館4階のインパルスで売られている。インパルスはカーオーディオ専門店なのだが、端子類が豊富に揃っていて、私も時々お世話になっている。店員さんも気さくな方々ばかりで、とてもアットホームなお店だ。 | |||||||||||||
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TL8-M4R50の形状そのままではインレット電極にハンダ付けしにくい。IECインレットの端末と圧着端子をできるだけ広い面積で接合させてやりたい。そこで、インレットに取り付けやすい形状にするため端子を加工する。銅は柔らかいのでペンチで比較的簡単にカットできる。余談だが、TL8-M4R50は本来、カーオーディオのスピーカ−配線やアース配線に用いる端子。インパルスではオーディオテクニカ製の端子として売られている。インパルスの店員さん曰く、TL8-M4R50の材質は真鍮でしょう、と言っていたが、実際に切断した断面を見ると銅だった。銅は真鍮より電気抵抗が少ないので、音質的にも有利だろう。 | |||||||||||||
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ハンダにはゴールドニッカス101を使用。錫+ニッケル+金+天然松ヤニで構成されるハンダ。ゴールドニッカス101は昨冬発売され始めた新製品だ。高音質ハンダの代名詞たる銀ハンダに異を唱え、あえて銀を添加していない。銀は化学変化を起こしやすく、長期的な安定性に欠けるらしい。ゆえに、銀を入れずに製造されている。「この世で最高音質」との触れ込みを信じて使ってみることにした。なお、製造元は日本スペリア社で、発売元はKOサウンドラボ。ローカルメールオーダーを皮切りに、最近はキムラ無線などにも入荷してきている。 | |||||||||||||
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さて、ここからは実際の配線作業だ。ニコオンのNC-174を例にとって説明しよう。まず、IECインレットを動かないように固定する。放熱クリップをハンダ付けする端子に鋏んでおく。ハンダの熱が溜まってケースが溶けてしまうのを防ぐためだ。内部電極にはあらかじめハンダを少し被せておく。 | |||||||||||||
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次にインレットを適正位置にあてがう。ハンダコテで数秒過熱し、頃合を見計らってハンダを付ける。ゴールドニッカスの使用感だが、銀ハンダ並みの融点らしく、決して融けやすくはない。綺麗に融かすには慣れが必要だろう。サーモスタット機能付きのハンダコテを使った方がよさそうだ。 | |||||||||||||
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インレット電極にハンダ付けされた圧着端子。私は基本的にグランド配線はおこなわないことにしているので、真ん中の電極はいじらない。私がグランド配線しないのは、しなくても問題が無いからだ。最近どやこや言われている「グランドループを断ち切る」という観点からも、グランド無配線S/Nに有利だったりする。 | |||||||||||||
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ケーブル口にφ2.0単線を3本押し込む。そして、慎重かつ手早くハンダ付けする。あまり長時間ハンダの熱が加わると、ケーブルの絶縁材が溶け出してくるからだ。しかしながら、3本のφ2.0を綺麗にハンダ付けするには、接合部分をあらかじめきちんと熱しておかないとハンダが乗りにくい。ここらへんの見極めがなかなか難しい。やはり経験を積んで、コツを掴むしかない。なお、圧着ペンチによる圧着はおこなっていない。 | |||||||||||||
PCOCC単線のハンダ付け状態もご紹介しておこう。要領は先に紹介したものと同様。今回使用したPCOCCはφ1.4。EM-EEF2.0に比べ線径が細いので、ハンダ付けも楽。ハンダ付け部分にはハンダの酸化物やヤニが残っている。これらは真鍮ブラシでササッと擦れば、写真右上のように綺麗さっぱり剥ぎ落ちる。 | |||||||||||||
インレットに接合されたPCOCC線。古河電工PCOCC線はオヤイデ電気で5m売りされている。\1,000/5m。売られているのは裸線だったので、絶縁のためテフロンチューブを被せた。 | |||||||||||||
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インレットへのハンダ付けが終わったら、導通部分の絶縁行程に入る。フルテックのインレットを例に説明していこう。 | |||||||||||||
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あらかじめ、ハンダ付け部分にチタンオーディオオイルを薄く塗布しておく。これは酸化を防ぐためだが、やらなくてもいい。念のためだ。テフロンテープを巻き、さらに収縮チューブを被せる。これで絶縁処理は完璧。 | |||||||||||||
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配線済みのインレットたち。さて、休むことなく、お次はケースへの取り付けだ。 | |||||||||||||
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2本のネジでインレットをケースに取り付けていく。フルテックは皿ネジを使うことになっているが、その他のインレットは丸小ネジを使うタイプ。 | |||||||||||||
1台だけコンセントを跨がる配線にしてみた。インレットから直接分岐の場合とどのくらい音質が劣化するのか確かめるためだ。これを直列配線というのかどうかは分からない。ま、直列といえば直列か。 | |||||||||||||
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配線の端末を磨く。ポリマールと言う金属磨き布で丹念に磨いてやるのだ。磨き布が真っ黒になる代わりに、端末はピカピカになる。酸化皮膜が取れたのだろう。ポリマールはけっこうお薦め。\250/枚、或いは\500/2枚で東急ハンズで売られている。工具コーナーにもあるが、銀細工コーナーにも置いてある。銅、金、銀用と3種類あるが、基本的にはどれでもいい。なお、ケーブル端末の研摩ができるのは単線の魅力。撚線だとポリマールで磨いている線がばらけてしまうので、綺麗になるどころかぐちゃぐちゃになってしまう。なお、ポリマールにはワックスが混入されている。磨いた部分を薄いワックスで覆うことにより、経年による酸化も防止してくれる。ただし、ワックス入りなのでハンダ付けする部分には使ってはいけない。ハンダが乗らなくなってしまうからだ。磨き過ぎも注意。無メッキならしつこく磨いて構わないが、金メッキなどを強く磨いてしまうとメッキが削れてしまう。金メッキ部分には研摩力の弱い金用ポリマールを使うと良い。 | |||||||||||||
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ポリマールでピカピカになった端末。ここへさらにチタンオーディオオイルを塗布する。ポリマールで酸化防止できているから、わざわざチタンオーディオオイルを塗布しなくても良いのだが、せっかくだから塗っておこう。ただし、塗過ぎは禁物。塗り過ぎたら拭き取ってやろう。端末に直接たらしている写真を掲載したが、実際に使う際は綿棒などに含ませてから端末に薄く塗布した方がいい。チタンオーディオオイルに限ったことではないが、接点復活剤を塗り過ぎると逆効果になる。音がぼける気がするのだ。なお、数ある接点復活剤の中からチタンオーディオオイルを選んだのは効果うんぬんというより、液が無色だから。チタンオーディオオイルは効果があるので使っているのだが、手持ちのケイグ赤やセッテンプロも同様に効果がある。ただ、ケイグ赤は塗った部分が赤くなるし、セッテンは黒くなってしまう。セッテンプロを塗ると低域の出方が強まるので私は好きなのだが、ユーザーが黒くなった内部配線の端末を見て「なんだ真っ黒に汚れてんじゃねぇか!」と勘違いされても困る。だから、無色のチタンオーディオオイルにしておいた。もっとも、ケースを分解して配線を外してみないとわからないことなのだが。 | |||||||||||||
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